シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が、病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は小児科の専門医、京都府立医科大学 小児科の医師が、小児に多い血液のがん「急性リンパ性白血病」について解説。適切な治療をしないと死に至る急性リンパ性白血病も、進歩した治療法で生存率が上がり、必ずしも不治の病ではなくなった現状を解説する。

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急性リンパ性白血病とは

急性のリンパ性白血病は特に小児では、「白血病」と言われる血液のがんの中では最も患者が多い疾患です。

本来ですとリンパ球と言われるような、抗体を産生したり、ウイルス感染に対応するような血液の成分が、色んな原因によってがん化してしまう病気です。

急性リンパ性白血病の症状

白血病というのは大体みんな同じようなところがあるのですが、急性リンパ性白血病になってしまうと、白血病の細胞がどんどん増えてしまって、患者は正常な血液を作れなくなってしまいます。

そうして正常な赤血球が少なくなってしまうと、貧血の症状が出てくるので、全身倦怠感や動作時の息切れなどが出てきて、顔色も悪くなってきます。

また、正常な血小板が減ってしまうと、「出血傾向」と言って出血しやすくなってしまいます。皮膚に青あざができてしまったり、鼻出血(びしゅっけつ)が止まりにくくなる、そういった症状が出てきます。

そして、正常な白血球がなくなってくるので、感染症に対応する力が落ちてしまいます。風邪をひいて熱が出た場合でも熱が下がらないとか、通常だったら自然な経過で治るような感染症でも、ひどい状態になってしまって入院して治療しないといけない、という風になります。場合によっては、そういった感染症が命取りになることもあります。

基本的には、適切な治療を受けない場合は、自然治癒することはありません。最終的には亡くなってしまうので、必ず治療が必要になる病気です。

急性リンパ性白血病の原因

急性リンパ性白血病の原因は、実は詳しくはよくわかっていません。

白血病という病気は、基本的には、遺伝子の異常によってがんになっていくという面では、他のがんと同じような原因になります。

ごく限られた、例えば遺伝するようなタイプの白血病というのも、まれにはあります。しかしそういったもの以外については、どうして遺伝子の異常が起こるのかについて、はっきりとした原因はよくわかっていないのが現状です。

発症年齢の傾向

急性リンパ性白血病は、小児期については、幼稚園に上がる前くらいの2~5歳くらいの患者が多いことがわかっていて、そこで一つのピークがあり、あとは成人、高齢になってきます。高齢になってくるにつれて出て来るのは、いわゆる加齢の影響などが発症要因として考えられると思います。

小児期の比較的早い時期に患者さんが多数出てくるというのが、この疾患の一つの特徴と言われています。ただその理由については、色々研究されているところもありますが、はっきりと“これが原因だ”というようなものは、まだお話するのは難しいところです。

急性リンパ性白血病の治療法

やはり血液のがんですので、治療としては化学療法と言って、複数の抗がん剤を使って治療するのがこの病気の治療です。

幸い抗がん剤治療も進歩して、副作用をできるだけ抑えた状態で治療を進めていくことも十分できるようになり、それのみで治癒する患者もずいぶん増えてきました。

しかし、この抗がん剤治療で治しきることができない方もいます。そのような場合は「造血細胞移植」と言いまして、わかりやすい言葉で言うと、骨髄移植をします。それを受けていただく必要のある患者さんも、全体の中では、ある一定の頻度でいます。

また最近は、通常の抗がん剤とは少し異なる作用機序で作用するような、「抗体性医薬品」と言われるようなものも出てきています。合併症や併発症を防いだ状態で、治療を進めていきやすい環境が徐々に徐々に整ってきていて、治療法の進歩も非常にみられる病気だと思います。

抗がん剤の副作用

抗がん剤には内服の薬もありますが、この病気で主に使われるのは注射の薬で、特に最初の方の治療では入院治療をされることが多いです。

急性と言って、投与されてすぐ出てくるような副作用については、いわゆる吐き気とか全身倦怠感というものがあり、強く出てしまうとなかなか食事が取れないような状況になってしまう方もいます。

抗がん剤という薬は、白血病の細胞だけを殺してくれるといいのですが実際はそういうことはなく、白血病の細胞以外の、正常な細胞にも障害を及ぼすということはあります。

実際にはその正常な血液、特に正常な白血球なども同じように殺してしまうので、治療の過程で感染症を起こすこともあります。また、粘膜の細胞を障害すると「粘膜障害」と言って、口の中が痛くなったり、おなかが痛くなったりしておなかを壊したりすることもあって、その辺りが治療の妨げになることもあります。治療する側としては、これらに慎重に対応しなければいけないこともあります。

また晩期の合併症といって、治療をしているその時以降、例えば病気の治療が終わった後も影響するようなものとして、抗がん剤による不妊なども、やはり今後考えていかなければいけない、対応していかなければいけない副作用と言えます。

急性リンパ性白血病の治療期間

治療の期間は、標準的に、小児では大体2年にわたります。そのうち3分の1くらい、10カ月程度は入院治療に充てます。その間、一時的に退院が可能なケースはありますが、8~10カ月程度は比較的強い治療を行い、その後は基本的には通院での治療になります。薬の投与が終了するまでには、小児の典型的な症例では、大体2年ほどかかります。

成人の患者も、最近は同じような治療を受けていることが比較的多くなってきています。けれど成人は長期の入院をなかなか続けられないということもあって、その間たびたび自宅へ帰ったりしながら治療していくケースが多いと思います。

急性リンパ性白血病も色々なタイプがあるので、なかなかひとまとめにして考えるのが少し難しい点もありますが、概ね小児の場合はちゃんと治るという人が、今の時代だと、8割~9割前後くらい。90%弱くらいの患者は、幸い治癒が見込める状況になってきました。

成人は年齢層も色々幅が広いので、一概にこれくらいというのは言いにくいですが、特に若年成人、20~30代くらいの方ですと、60~70%程度の生存率が得られつつある状況だと思います。

急性リンパ性白血病の予防法

先述の通り、この病気はどうしてなるのか、わからないところがある病気です。ですので、こうすれば予防できるというような、生活習慣病の予防法のようなものは、実際にはなかなかないのが現状です。

成人だったら、定期的な健康診断をちゃんと受けていただく。特に血液の検査を受けないとわからないところもあるので、そういった検診をしっかり受けていただくのも大切です。

ただ、病気としてはどちらかというと、急に出てくる兆候はあります。1年前に正常であっても、必ずしもそれが大丈夫ですよという担保にはなりません。

特に、貧血症状や出血傾向、熱が下がらないといった症状が出る場合は、様子を見るのを続けずに病院を受診していただいて、きちっと必要な検査を受けていただく。これが早期発見につながると思います。

記事 1 今村俊彦

1994年3月31日 京都府立医科大学医学部卒業
2002年6月26日 医学博士(京都府立医科大学甲935号)
2004年9月01日 アメリカ合衆国シカゴ大学病院へ留学(血液腫瘍部門Postdoctoral Research Fellow)
2006年9月01日 京都府立医科大学助手,小児科学教室勤務
2008年7月01日 京都府立医科大学学内講師,小児科学教室勤務
2013年4月01日 京都府立医科大学講師,小児科学教室勤務
2022年10月1日 京都府立医科大学准教授、小児科学教室勤務