音楽教室のレッスンでの演奏で、曲の使用料を払う必要があるかどうか争われた裁判。
最高裁は10月24日、生徒の演奏については曲の使用料を払う義務がないとした一方、講師の演奏のみ支払い義務があると判断した。音楽教室にはどう影響するのか。

町の「音楽教室」は困惑…

24日午後3時、3歳から80歳の生徒が通う大阪・豊中市のピアノ教室。これからやってくる子供たちを待ちながら、講師の先生が気がかりだったのは、「最高裁判所」の判決だ。

ピアノ講師 勢志佳子さん:
納得はしていません。こういう業界にJASRACが著作権料を取りにくるというのは、全く了解はしていないです

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ことの発端は5年前。ヤマハ音楽振興会など約240の音楽教室の運営会社などは、楽曲の著作権などを管理するJASRACが、音楽教室からも曲の使用料を徴収するとの方針を出したのに対し、「支払う義務はない」と訴え、裁判を起こした。

一審は講師の演奏、生徒による演奏ともに曲の使用料を「支払う義務がある」として音楽教室側の訴えを退けた。
しかし二審では、生徒による演奏は曲の使用料の徴収の対象にあたらず、「支払う必要はない」と判断。

最高裁は10月24日、争点だった「生徒の演奏」について、「課題曲の演奏は、演奏技術の向上を目的とした手段に過ぎず、任意かつ、自主的に演奏するもので、強制されているわけではない」。また「レッスン料は演奏技術を教えてもらうためのもので、課題曲を演奏するために支払うものではない」として、徴収の対象にはならないとした。
一方、講師によるレッスンでの演奏については、曲の使用料の支払い義務を認めた。

判決について、音楽教室では…

勢志音楽教室 勢志佳子さん:
小学校低学年ぐらいまでは、「ショパンって誰?」みたいな子が多いわけですから、(使用料がかかる)アニメの曲が人気。サンプル弾いた方が子供は分かりやすいけど、それ弾いたら著作権料を取りに来るというなら、弾かないです

楽しく学ぶ、音楽のレッスン。最高裁の判決は、今後の音楽教室にどう影響するのか。

音楽教室は今後どうなる

講師の演奏のみ、支払い義務があると判断した最高裁。判決のポイントは次の2点。

1.生徒は任意で演奏している
2.受講料はレッスンを受ける対価で、演奏への対価ではない

レッスンでの生徒の演奏は、音楽教室による演奏であると評価することはできないと判断した。

この判決に対して、著作権法に詳しい神戸大学法学部の前田健教授は、「生徒の演奏を教室の演奏だとするのは、そもそも無理があった。最高裁も全て無料とまでいえなくても、高額な徴収は望ましくないと考えたのではないか」と指摘する。

この判決を受けて、音楽教室の利用料はどうなっていくのか。
JASRACは、著作権で保護された楽曲を使っている音楽教室に対し、年間受講料収入の2.5%を楽曲の使用料として徴収するとしていた。これは先生・生徒、両方の著作権料が認められた場合の想定なので、今回の判決を受けて再検討されると考えられる。

音楽教室の授業料は値上げになる可能性があるが、学校など教育機関での利用は営利目的ではないため、基本的に著作権料を支払う必要はないということだ。

音楽教室に著作権料の支払いを求めることで、利用者の負担が増え、音楽を学ぶ裾野を狭めるというリスクはあるが、アーティストへの分配が増えることで、音楽業界が発展するという考え方もある。

音楽教室での演奏に、著作権料の支払いが必要かどうか。5年に及ぶ激しい法廷論争に決着がついたが、この結論が「音楽文化の発展」につながるのかどうか。その審判は、将来下されることになる。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月24日放送)