いよいよ11月11日に出航する南極観測船しらせ。第64次南極地域観測隊を乗せ、昭和基地に向かう。
64次隊は、隊員76人・同行者19人。
すでに昭和基地で生活している第63次隊の越冬隊員と合わせると、100人を超える大所帯となる。
一方で、極寒の中、生活の全てを支えるためには「たった100人」とも言える。怪我をすれば医療が必要になり、毎日食事をするには調理担当が必須だ。
他にも、通信、車両、発電、そして、研究。様々なプロフェショナルがお互いに協力し合うことで、基地は支えられているのだ。
そんな隊員・同行者の中から、各ジャンルの11人を紹介する。
01.石川美風香さん(32)

■南極歴
初
■担当部門
夏隊 定常 海底地形調査・潮汐
■名前の由来
平成2年2月2日生まれなので2が3つで「み(3)ふ(2)か」なのでは?
■学生時代
専門は地理。大学のゼミではタイの農村部で水質を調べていた。
■職業
海上保安庁の海洋情報部にて海図作成のための測量を担当。主に日本近海で海底の地形や潮の満ち引きを調査
■子どもの頃の夢は?
図書館司書(昔から読書が好きだった)
■南極にこれだけは持っていく!
カメラとドライフルーツ
【こんな人】
「海猿」など、海難救助のイメージが強い海上保安庁だが、石川さんの所属している海洋情報部では、海図を作成するなど日本の船の安全を守っている。
同期がすでに2人南極に行っていることから自分には縁がないかと思っていたが、今回の64次隊で無事選ばれた。しらせの船内でも昭和基地でも様々な観測を担当しており多忙な毎日が予想されるが、「がんばるしかない!」と力強く語っていた。

02.井上彩さん(40)

■南極歴
初めて。楽しみです!
■担当部門
越冬隊 設営 医療
■趣味
1年近くかけてシルクロード(北京〜トルコ)を巡るなど、旅が大好き。今まで37カ国巡ってきた。
■職業
愛媛県の病院で産婦人科医として勤務していた。
■何をしている時が幸せ?
「次はどこに行こうかな?あそこに行きたい!」と旅行のプランを考えるのが好き。
■南極の魅力
なかなか行けない場所に行けること!見たことがないものを見てみたい。
■南極にこれだけは持っていく!
カメラ! 南極の景色の写真をたくさん撮りまくる!
【こんな人】
とにかく好奇心旺盛な井上さん。地元・愛媛で産院を営む親からは、小さな頃から「好きなように生きなさい」と言われて育ってきた。その結果、海に山に食べ歩きにと、常にアクティブに動いてきたため、南極もワクワクが止まらないそう。
調理担当の方が作ってくれる料理が楽しみで、食べすぎないかだけが心配とのこと。

03.小松俊介さん(36)

■南極歴
初
■担当部門
夏隊同行者 教員南極派遣プログラム
■職業
高校の美術教諭2年生の担任を持つ傍ら、石の彫刻家として作家活動も続けている。
■何をしている時が幸せ?
3歳の娘と遊んでいる時。
■南極でやりたいこと
岩盤が露出しているところに行って、重さや質感を確かめてみたい。
■南極にこれだけは持っていく!
ノミとノコギリ。氷を掘ってみたい!
【こんな人】
「教員南極派遣プログラム」に応募し、観測隊の同行者として昭和基地に向かう小松先生。たまたま募集要項を見かけて南極行きを決めたものの、奥さんになかなか言い出せず締め切り直前に、意を決して相談したところ、「いいじゃん!」と一言。応募を決めた。今の気持ちは、「本当に南極があるのか?あるのなら見てみたい」。

04.佐東一忠さん(37)

■南極歴
初(しかも人生初の海外!)
■担当部門
越冬隊 設営 機械(発電機エンジン)
■職業
大手機械メーカー「ヤンマー」で船などの発電機のエンジンを担当。同じくヤンマーで働いていた父親の「ヤンマーなら南極も行けるで」の言葉に、それなら働きたい!と入社。それから14年かけて、やっと社内選考を通り念願の南極行きが実現した。
■お休みのときは何している?
ゲーム(今はモンスターハンター)。南極にもニンテンドースイッチとPS4を持っていく!
■南極でやりたいこと
でっかいカマクラを作りたい。南極の氷でいいウイスキーを飲みたい。
■今の気持ちは?
昭和基地に2台ある発電機がどちらも古いので、越冬期間ずっと動いてくれるか不安でいっぱい。しっかり準備をしてきたので、精一杯南極を楽しみたい!
【こんな人】
基地や実験装置の電力を賄う発電機は、まさに昭和基地の心臓部!佐東さんが追う責任は重大だが、南極を夢見た14年間の知識と経験が生かされる舞台でもある。南極行きを進めてくれたお父さんが掛けてくれた言葉は「がんばってこいよ!」

05.戸田仁さん(59)

■南極歴
越冬2回(48次隊、56次隊)
■担当部門
越冬隊 設営 通信
■職業
総務省 総合通信局で電波管理を担当
■趣味
温泉巡り、低山登山、日本酒(日本中のお酒を飲みたい!)
■南極でやりたいこと
水彩画を描きたい。通信室に大きな窓があるので、そこからの風景を描く。ドラム演奏(昭和基地にはドラムセットがある!)
■南極の仕事で気をつけていること
通信は「つながって当たり前」なので、もしも途切れた場合を常に考えることが大切。業務連絡など、普段はなるべく負担をかけないように短く済ませるが、たまには冗談や面白いエピソードを伝えて、温かいやりとりになるように心がけている。
【こんな人】
昭和基地では「絶対に24時間切ってはいけない生命線」である通信。過去2回の経験をもとに、とにかく真面目に誠実に向き合っていることが伝わってくる。隊員が誕生日の際には、他のスタッフを呼んで通信先の隊員に声でお祝いするなど工夫を欠かさない。隊員の安全のみならず、心の健康をもサポートする大切な仕事だ。

06.中川潤さん(39)

■南極歴
初
■担当部門
越冬隊 設営 調理
■職業
青年海外協力隊でバングラデシュや公邸料理人でブラジルなどを歴任。現在は、「小料理屋 菜」店主(鹿児島県鹿屋市)
■何をしている時が幸せ?
酔っ払って寝るときに、子どもにピタっと付いて寝る。
■人生の目標
100カ国訪問すること(現在は39カ国。中川さん曰く「大人のスタンプラリー」)
■南極にこれだけは持っていく!
包丁とカメラ。昭和基地では水が潤沢にあるわけではないので、管理に手間がかかる和包丁よりも洋包丁を多く用意している。
【こんな人】
「いつか南極に行きたい」とずっと語っていた夢がついに叶うことに!持ち前の好奇心を元に、あきらめずに向かっていったからこその結果。お話好きでもあるので、毎日の食事では味だけでなく中川さんのトークも楽しめるかも!?

07.西川泰弘さん(39)

■南極歴
初
■担当部門
夏隊 研究 萌芽研究観測
■職業
高知工科大学の惑星科学者東京大学の地震研究所やパリ大学の地球物理研究所などで研究を重ねた、惑星地震学の専門家
■南極行きが決まって家族に言われたこと
母親に「代わりに行きたい!」と。(一人でカナダにオーロラを見にいくほどアクティブなお母さんだそう)
■南極でやりたいこと
逆立ち(東大・体操部出身なのでどこでも逆立ちします)
■今後の夢
宇宙飛行士になりたい。火星に行きたい。
【こんな人】
「ペネトレータ」というロケットのような形をした機器を、ドローンやヘリコプターから投下して地面に突き刺して、地震などを観測する研究が西川さんの担当。「惑星地震学」という地球の内部を研究する専門家だが、今回の取り組みは、火星の研究にも役立つという。南極から火星へ!西川さんの思いは宇宙につながっている。

08.西巻英明さん(50)

■南極歴
越冬1回(46次隊)
■担当部門
越冬隊 定常 気象
■職業
気象庁で気象レーダーのメンテナンスなどを担当。沖縄の離島や北海道など、遠隔地での整備が得意
■出身地
新潟県上越市。中高生の頃から「広い世界を見てみたい」という思いが強く、青春18きっぷで地方行くなど、旅が好きだった。
■趣味
ウォーキング。ルートを決めずに街並みを眺めながら散策。気づいたら3時間を超えていることも!
■南極にこれだけは持っていく!
ヘッドランプの予備。前回(46次)の時に使っていたのがあまり良いものではなかったので、今回は万全の体制で臨みたい。
【こんな人】
中高生のときに思っていた「広い世界を見てみたい」という想いを、大人になってもずっと持ち続けている。落ち着いた人柄でありながら、体を使って大自然や計測器と向き合うことが大好きだということが伝わってきた。

09.古見直人さん(55)

■南極歴
越冬5回(37次、54次、57次、60次、62次)
■担当部門
越冬隊 設営 機械(雪上車)
■職業
新潟・長岡の大原鉄工所にて車両や環境プラントの整備を担当
■何をしている時が幸せ?
布団の中で寝ている時
■南極でやりたいこと
何もせずダラダラすごしたい。そのためには日々の仕事をきっちりやる!
■出航前の今の気持ちは?
「またあそこに行ってしまうのか…」昭和基地は、夏は忙しいし冬は寒くて大変。出発前の今が一番気が重いけど、行ってしまえばあとは一生懸命働くだけ!
【こんな人】
「ゆっくり休みたい」と口にする古見さん。しかし周囲に聞くと、担当の車両(雪上車など)に対してはもちろん、電気設備など昭和基地の維持に関わるたくさんのことを手伝いながら、誰よりも真面目にコツコツ働き続けるという。つまり古見さんにとっては、自分が休める=昭和基地が平和だ、ということ。今回で越冬6回目! 昭和基地を影で支える、まさに縁の下の力持ちだ。

10.瓢子俊太郎さん(27)

■南極歴
2019年に海洋地球研究船「みらい」の南極海・
■担当部門
越冬隊 研究 気水圏変動・地圏モニタリング
■職業
北海道大学 大学院生(博士課程2年)専門は極域海洋物理。南極の氷を融かす暖かい海水について調べている。
■なぜ南極に行きたい?
高校1年生のときに東京海洋大学の説明会で南極観測船「海鷹丸」の話を聞いたことがきっかけ。人と違った人生を過ごしていることに憧れがあった。一度は諦めて気象予報士や教員免許を取得したものの、想いが忘れられず再挑戦することに。
■何をしている時が幸せ?
旅。アジアをバックパックで回ったとこも(韓国・中国・台湾・フィリピン・ベトナムなど)
■出航前の今の気持ちは?
「夢が目標になる感覚」高校生から憧れていた場所にはじめて上陸できることとなり、ワクワクしている。
【こんな人】
「人が好き」という瓢子さん。2019年の観測では1カ月半の船上生活だったが、その際に同室だった4人との出会いは宝物だという。夢の南極で過ごす1年3カ月でもきっと新しい出会いがあるはず。

11.村上雅則さん(42)

■南極歴
夏隊1回(63次隊)
■担当部門
夏隊 研究 地圏変動
■職業
日本海洋事業に所属し、JAMSTECの観測船「みらい」に乗船しながら、南極のみならず、北極や熱帯の海など、世界中で「観測技術員」として観測のサポートをするエキスパート。過去の最多乗船日数は年間270日!
■南極の魅力は?
人間が作り出せない壮大な景色に感動!自分たち人間の声以外、全く音のない世界。
■南極にこれだけは持っていく!
コーヒー豆&ミル付きコーヒーメーカー
■出航前の今の気持ちは?
「なんとかやってやろう!」研究にハプニングはつきもの。不安はあるけど、心折れずに頑張っていこう!
【こんな人】
野球やサッカーの応援が趣味の村上さん。ただのファンを超え、まさに「サポーター」として全力で応援していたこともあるそう。観測技術員としての姿勢もまさにサポーター。厳しい条件下であってもどうしたら満足な研究成果が出せるのか、真摯に取り組む姿勢が伝わってきた。

いざ南極へ!いってらっしゃい!