「トランプフォース・ワン」が帰ってきた

トランプ前大統領の選挙遊説用の自家用機「トランプフォース・ワン」が復帰し、2024年の大統領選へ向けて先ず足固めができたようだ。

トランプ前大統領は10月22日、テキサス州南部のロブスタウン市で中間選挙応援のための集会に出席したが、会場の広場を埋め尽くした観衆は大統領が到着する前から興奮を沸き立たせられるような出来事があった。

ロブスタウンで演説するトランプ氏(22日)
ロブスタウンで演説するトランプ氏(22日)
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「皆さん上を見てください!新しいトランプフォース・ワンが処女飛行で到着します」

こうアナウンスがあると一機の大型ジェット機が会場上空を横切って行った。

ロブスタウンで行われた集会(22日)
ロブスタウンで行われた集会(22日)

それは黒い機体上部に金色でTRUMPと書かれた紛れもないトランプ氏の自家用機だった。トランプ氏の大統領選への再挑戦を前に大規模な近代化と修復が行われ、6年ぶりに選挙遊説に戻ってきたのだった。

機体はボーイング757-200型旅客機で、1991年に建造されデンマークの航空会社などを経た後2011年にトランプ氏がマイクロソフト社の共同創立者ポール・アレン氏から購入し、2016年の大統領選では全米323カ所を遊説で回った足として活用した。

「私も再びやることになるだろう」

自家用機なので遊説の日程などの調整もし易いだけでなく、飛行場でこの派手な塗装の飛行機を背景に遊説を行う「飛行機脇の集会(plane-side rally)」も人気を集めトランプ氏の当選に貢献した「縁起の良い」存在なのだ。

大統領選挙の候補者はチャーター機を利用するのが常で、自家用機は例がなかったことから大統領専用機を「エアフォース・ワン(空軍第1号機)」と呼ぶのをもじって「トランプフォース・ワン(トランプ軍第1号機)」と記者団に呼ばれていた。

米大統領専用機「エアフォースワン」
米大統領専用機「エアフォースワン」

それが大統領に当選後は本物の「エアフォース・ワン」が取って代わることになり「トランプフォース・ワン」は「お蔵入り」になっていたのが、その後トランプ氏が心ならずも下野すると再びその出番が来てルイジアナ州の工場で修復工事が行われていた。

「彼女が帰ってくる!ホワイトハウスに居たこの4年間、みんなが大好きな飛行機、我々の2016年の大勝利に貢献したこのボーイング757は使われなかった。それが今完全に近代化され修復されている。2022年の秋か、それ以前にも戻ってくる.....」

修復工事が行われた「トランプフォース・ワン」(The Trump OrgainizationのTwitterより)
修復工事が行われた「トランプフォース・ワン」(The Trump OrgainizationのTwitterより)

トランプ氏は今年7月にこうツイートして「トランプフォース・ワン」との再会に期待を滲ませていたが、それがテキサス州の集会で実現したわけだ。

この集会でトランプ氏はテキサス州から立候補している候補者たちを褒めちぎって投票を促したが、一言自身についてもこう発言した。

「多分、私も再びやることになるだろう」

同氏の登場を心待ちにしている保守派のニュースサイトは「トランプは2024年の出馬に言及した」とニュース速報扱いで伝えたが、11月8日の中間選挙が終わればトランプ氏が正式に出馬の意志を表明するのは時間の問題だとも言われている。

「トランプフォース・ワン」はまた全米の空を飛び回ることになりそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。