9月。東京海洋大学のキャンパスで忙しく梱包作業をしている人たち。
用意しているのは、白衣、研究機器、そして釣竿…。
彼らは、第64次南極地域観測隊の隊員として南極へ行く科学者だ。
チームのリーダー京都大学の市川光太郎博士、チームのムードメーカー・広島大学の河合賢太郎助教、そして、北海道大学大学院生の黒田充樹さん。
この3人が力を合わせて南極での調査を行う。
この記事の画像(6枚)南極で暮らす魚の生態を調査・研究
南極・昭和基地周辺の海は、一年中海氷に覆われている。
市川さんたちは、冷たくて、暗い海に住む魚たちがどのような暮らしをしているのか調査・研究をしている。
調査方法は、南極の海氷に穴をあけて、魚を捕獲し、位置情報などがわかるセンサーを取り付けた後、再び海に放流するというもの。
南極の海は、夏場と冬場で極端に海の様相が変化する。
夏場は、氷の下に藻などが生い茂り、光合成が活発に行われてプランクトンやオキアミが大量に発生するが、冬場になると、厚い氷に阻まれるなどして光合成ができにくくなり、夏場の賑わいが極端に減少するとされている。
気候変動による魚への影響を調査
リーダーの市川さんは、ジュゴン研究において世界で指折りの科学者だ。
ジュゴンを傷つけないように、なるべくそのままの状態で大きさを測ったりセンサーを取り付けたりするようにして、調査を行っている。
また、河合さんは、屋久島のクロダイなど様々な魚の生態調査を行い、研究成果などをテレビやラジオに出演して積極的に発信している。
黒田さんは、北海道で、氷結した川の下で暮らす、サケや鱒の生態の調査を進めている。
海氷の下の環境は一年通じて大きく変化しており、こうした環境の変化と魚の行動と生態の関係を明らかにすることで、今後、温暖化や海洋変動が魚たちにどのような影響を及ぶぼすかという点について1つの目安になると期待されている。