2022年に3年ぶりに、大阪の泉大津でもだんじりが走り出した。「濱八町(はまはっちょう)」と呼ばれる8つの町のだんじりの一番の見せ場は…“かちあい”。子孫繁栄を祈るといわれ、だんじり同士がぶつかり合うのは、全国でも珍しい。
綱を引く女性2人の姿があった。「女性は18歳で祭を卒業」という決まりがある中、2人はことし20歳。彼女たちはなぜ走るのか?

この記事の画像(25枚)

2022年で20歳のだんじり女子 「一緒に卒業したい」2年越しの想い

9月23日、泉大津の駅前に、全19町のだんじりが並んだ。2週間後に迫る、3年ぶりの祭本番を前に気持ちが高まる。男性たちの掛け声が街に響く中、綱を引く女性たちの姿があった。

その女性たちのうちの2人、丸谷萌恵さん、大浜未悠さん。小学校の同級生で、ことし20歳だ。オシャレなカフェでランチ。ドラマの話に花を咲かせる姿はイマドキの学生だが、なぜ「ケンカ祭」ともいわれる祭に参加するのか?

丸谷萌恵さん:
引くのが当たり前っていうか、引くよね、みたいな

大浜未悠さん:
0歳からだんじりの横にはいた、みたいな感じです

この日も、たまたま服が同じだった仲良しコンビ。だんじりの魅力を聞くと、二人で同時に「かちあい」と発言した。

丸谷萌恵さん:
うまく“かちあい”いった時の一体感みたいな、みんなで「わー」みたいな声を出す瞬間は、結構楽しみです

(Q.どういう感じか再現してもらっていい?)
丸谷萌恵さん:
「うぇーい」みたいな…(笑)

祭が大好きな2人だが、実は本来なら2022年は引くことができない。

江戸時代中期から始まったとされる泉大津のだんじり。当初は男性だけのお祭りだったが、やがて女性も参加できるようになった。
しかし、成人女性が引けないのは今も変わっておらず、2人の町でも18歳までという決まりだ。

2人はことし20歳になり、本来は参加できない年齢だ。
しかし、新型コロナの影響で「最後のだんじり」を引けなかった女性たちに、再び「卒業」の機会が与えらた。
幼なじみなのに、今まで一度も一緒にだんじりを引いたことがない2人。「最後に一緒に引きたい」と参加を決めた。

大浜未悠さん:
「引かれへんのか、今年も無理なんか…」みたいな。萌恵と引けない、引きたかったな、みたいな思いはありました

丸谷萌恵さん:
心残りやったから、一緒に引けるんやったら引きたいなあって

祭の歴史が変わる…女性の「卒団年齢」引き上げへ

この日、祭本番に向けて走り込みが行われた。本番同様、綱をつかんで走る。勢いあまって、こける女性も…

未悠さんも、懸命に息を荒くしながら綱を持って走っている。

大浜未悠さん:
本番前に綱の感覚味わっときたいなと思って、来ました。(走るときに)両手が空いてないっていうのが違いますね

走り込みを終えた後、女性たちだけ残った。ある大きな決断が行われようとしていた。それは、女性の“卒団年齢の引き上げ”た。

若頭会幹事長 中村啓さん:
女の子に関しては、高校生終わったら終わりなんで。引きたい子もおるんやったら、年齢もっと上げちゃえよっていう。20歳まで、22歳まで…30ぐらいまで?“男の子ばっかり引ける”っていうのも、ちょっと。変わってきてもいいかなと思うし

いつまで引くかは、それぞれの判断にゆだねられることになった。いま、祭の歴史が変わろうとしている。

「これで卒業…」幼なじみとラストラン 泉大津名物“かちあい”も

祭前日、未悠さんの家で、女性ならではの準備が始まっていた。祭りのためのヘアスタイル作り、髪結いだ。

小学校の同級生 遠藤明里さん:
本引きやし、気合入れようと思って

小学校の同級生に髪を編んでもらう。

大浜未悠さん:
だんだん明日、祭かっていう実感がわいてきます。締まるよな、気持ちが。誇らしくない?

編んでもらう方も、楽ではない。

大浜未悠さん:
目まっかっかや。血のぼってきた…

完成までには、4時間かかった。

大浜未悠さん:
これで終わりと思って引くんで。最初から最後まで、2人でちゃんと引き終わりたいと思います

祭初日、朝の4時50分に、真っ暗な小屋の前で町のみんなが集まっていた。そして、庫屋が開き、だんじりが出てきた。

2人が綱をつかむ。未悠さんは緊張からか、自分の胸を叩いている。

とうとう2人一緒の、最初で最後のだんじりが勢いよく走り出した。待ちに待った日。笑顔があふれる。

そして、祭初日のはじめての“かちあい”。未悠さんが引いているだんじりが、力強く別のだんじりにぶつかり、周囲から大きな歓声があがる。

そして、何度も“かちあい”が続いた。だんじりに乗っている中の人たちが飛び出そうになった“かちあい”も…泉大津ならではの「見せ場」だ。

本当は参加できなかったはずの「二十歳のだんじり」。綱を引いて走り抜けた4日間。2人の顔には疲れが出ていたが、安堵の笑顔が広がっていた

車庫にだんじりを戻す様子を、ずっと見つめている2人。彼女たちの「最後の祭」が終わった。

祭の後、後輩から2人に花束の贈呈が…

大浜未悠さん:
4日間めっちゃ楽しかったです。二十歳も引かせてくれてありがとうございました

丸谷萌恵さん:
二十歳で、引くって選んでよかったです。ありがとうございました

2人は2022年で卒団することを決めた。一緒に引退するはずだった後輩たちだったが、今2人のように「二十歳まで」引くことを目指している。また2023年…

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月14日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。