富山県の東部にそびえる薬師岳(標高2,926メートル)は、険しい山が多い北アルプスにあって、裾野が広い、ゆったりした姿が特徴で、全国から多くの登山者が訪れる。

どっしりした姿で登山者に人気の薬師岳
どっしりした姿で登山者に人気の薬師岳
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山頂にたたずむのは、薬師如来を祭った「薬師堂」だ。
すべて木造で、高さは約2メートル、間口は約3メートル。その薬師堂が再建される事になり、2022年9月、解体工事が行われた。

52年間、豪雪と風雨に耐え…200年以上前からあった薬師堂

解体される薬師堂。2022年9月
解体される薬師堂。2022年9月

現在の薬師堂は、昭和45年(1970年)に建てられ、建て直しは52年ぶりとなる。
薬師岳の山小屋「太郎平小屋」の佐々木賢二さんが、クラウドファンディングで支援を呼び掛けたところ、全国から目標の350万円を上回る資金が寄せられた。

解体作業を進めると、お堂の中から十数体の石像が出てきた。山を訪れた人が、寄進したものだという。
また、信仰の対象としてだけではなく、薬師堂は時に避難小屋になり、体調を崩した登山者がお堂の中で体を休めたこともあった。

豪雪と風雨に耐えた屋根板を外す
豪雪と風雨に耐えた屋根板を外す

薬師堂は、200年以上前から山頂にあったとされるが、冬は豪雪、そして1年を通じて強い風が吹きつけるため、建物の傷みの早さは平地とは比べ物にならない。
これまでにも、薬師堂は数回建て直されているが、落雷にあい、完成から1年もたたずに全壊したこともあったという。

本格的な冬を迎える薬師岳
本格的な冬を迎える薬師岳

冬は麓で安置する薬師如来像 山頂に戻る時は…

「太郎平小屋」のオーナー・五十嶋博文さんが見せてくれたのは、金色に輝く薬師如来像。工事を前に山を降り、安置されていた。例年であれば、毎年6月に山頂まで運び、冬は麓で安置するのだという。
五十嶋さんは、山頂に戻る時は独身男性が運ぶのが習わしで、無事終われば良縁に恵まれると言われていると教えてくれた。

金色に輝く薬師如来像。冬は麓で安置される
金色に輝く薬師如来像。冬は麓で安置される

五十嶋さんは、薬師岳と地域の結びつきについてこう話す。

太郎平小屋・五十嶋博文さん:
昔の人は、近辺で採れた薬草を食べて治したり、薬草で治らなければ、薬師さまをお祈りして治すというのが習慣だった。山頂のお堂に薬師如来が祭られている山は、全国でもそれほど多くない

「太郎平小屋」オーナーの五十嶋博文さん
「太郎平小屋」オーナーの五十嶋博文さん

薬師堂の解体作業は着々と進み、柱とおもな木組みが残るだけとなった。
新しいお堂の建築を委ねられた地元の大工は、「50年間、ここの風に耐えているということは、かなりしっかりしたもの。新しい薬師堂はこれに倣って、しっかりしたものにしたい」と話した。

太郎平小屋・佐々木賢二さん:
山を守ってきていただいた感謝ですね。新しい薬師堂に薬師如来さまも入る。山を見守ってほしいと思います

クラウドファンディングを行った佐々木賢二さん
クラウドファンディングを行った佐々木賢二さん

北アルプスにやってきた秋が冬へと変わる前に解体作業は終わり、2023年夏には新しい薬師堂が完成し、登山者を見守る。

(富山テレビ)

富山テレビ
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