立山連峰の主稜線から少し離れた位置にそびえるのは、日本三百名山の一つ「鍬崎山」だ。
標高差約1,400メートルを一気に登るハードな日帰り登山に、これまでの取材で70を超える山々に登っている富山テレビ・矢野美沙アナウンサーが挑戦した。

北アルプス立山連峰の前方にそびえる鍬崎山(標高2,089.8メートル)は、戦国武将、佐々成政が数百万両の軍用金を埋蔵したという「黄金伝説」が残る山だ。

黄金伝説が残る鍬崎山
黄金伝説が残る鍬崎山
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矢野アナウンサーは、あわすのスキー場の奥にある林道沿いの登山口から登った。

矢野美沙アナウンサー:
あわすのスキー場のゲレンデを横目に、まずは大品山の頂上へ。そこから鍬崎山を目指します

鍬崎山を目指し出発する矢野アナウンサー
鍬崎山を目指し出発する矢野アナウンサー

山頂が近づくにつれ色づく紅葉

今回のルートは、標高差約1,400メートル。鍬崎山の北尾根を、ほぼ直線的に登っていく。

標高差約1,400メートルを一気に登る
標高差約1,400メートルを一気に登る

森の中を一直線に伸びる導水管を横切り、スギが立ち並ぶ登山道を進む。
1時間歩くと、北陸電力の「真川調整池ダム」が見えてきた。

国内では珍しい構造の「真川調整池ダム」
国内では珍しい構造の「真川調整池ダム」

このダムの構造は、愛好家にはたまらない「バットレスダム」。国内では6基しかない珍しいものだといい、ひっそりと山の中にたたずんでいる。

矢野美沙アナウンサー:
ため池を過ぎてから、少し急な登りになってきました。ブナの森です

ブナの純林を進む矢野アナウンサー
ブナの純林を進む矢野アナウンサー

今回のルートでは、鍬崎山の手前にある大品山までの登山道沿いは、1種類の樹木だけしか群生していないブナの純林が広がる。

矢野美沙アナウンサー:
このあたりの木々は、ちょうど色づき始めといったところでしょうか。もう少し季節が進むと、ブナの紅葉見事でしょうね

矢野美沙アナウンサー:
分かれ道ですね。向かって右手に行くと大品山。でもきょうは鍬崎山なので…、左手の登山道を進みます

標高1,700メートルほどにあるのは、ルートで唯一の鎖場だ。露岩に足場が打ち付けられている。

鎖場を慎重に登る矢野アナウンサー
鎖場を慎重に登る矢野アナウンサー

矢野美沙アナウンサー:
ようやく鍬崎山の山頂部分が見えてきました。あのピークがきょうのゴールです。標高2,000メートル近くになると、山肌が鮮やか。これだけ色づきが進んでいるんですね

紅葉が進む鍬崎山
紅葉が進む鍬崎山

標高1,800メートル付近は、ダケカンバの森。登山道が細い尾根伝いに続く。

山頂からは雄大な立山・雄山を一望

登山口から歩き続けて約5時間半、山頂に到着した。

鍬崎山の山頂に到着
鍬崎山の山頂に到着

矢野美沙アナウンサー:
着きました~。ここが鍬崎山の山頂です。山々が近い

山頂からは、立山・雄山をはじめ、薬師岳、鬼岳、そしてコロナ禍でなければ多くの観光客を乗せた高原バスの通り道・アルペンルートが走る弥陀ヶ原が一望できる。

矢野美沙アナウンサー:
弥陀ヶ原と同じ目線の高さ。立山を独り占めできるような感覚ですね。そして紅葉前線が、アルペンルートをずっと下っていっているのがわかります

弥陀ヶ原を一望
弥陀ヶ原を一望

冬の眠りにつく北アルプスの峰々。360度の大パノラマを堪能できる鍬崎山の頂だ。

【取材後記】
爽やかな風が吹くブナの森を抜け、ぐんぐん標高を上げていくと、平野部とは全く違う季節の景色が広がります。秋の太陽に輝く黄色いダケカンバや、赤いナナカマドの実は、まるで宝石のようです。もしかしたら、この光景こそが佐々成政の“財宝”だったのではないかと思いを巡らせてしまうほど。
日帰りで登るにはハードな山ですが、山頂からの眺めは見事で、北アルプスの特設展望台ともいわれます。撮影日も好天に恵まれ、北アルプスの凛々しい峰々から、優美な弥陀ヶ原の溶岩台地、荒々しい立山カルデラ…さらに富山平野、富山湾まで360度の展望が広がりました。

富山テレビ 矢野美沙アナウンサー
富山テレビ 矢野美沙アナウンサー

仕事を通して好きになった富山の山。私自身、何度その美しさに心癒やされ、助けられてきたかわかりません。
コロナ禍でつい気持ちがふさぎがちな昨今、身近な自然の魅力に目を向けてもらうことで、誰かの心に一瞬でも光が差しますように。
そして、人が立ち止まっていても季節は必ず巡るのだというメッセージを込めて…。
これからも山歩きの魅力を届けていきたいと思います。

(富山テレビ 矢野美沙アナウンサー)

矢野美沙
矢野美沙

富山テレビ アナウンサー