沖縄観光の人気をけん引する「沖縄美ら海水族館」は、2022年10月1日から入館料の値上げに踏み切った。新型コロナの影響による来館者数の減少だけでなく、値上げの背景には様々な要因がある。

2002年の開館から初めての値上げに踏み切る 

多い時には年間約378万人が訪れた人気の観光施設、沖縄美ら海水族館。2020年以降は、新型コロナウイルスの流行による緊急事態宣言中の休館や観光客の減少で来館者数が激減した。

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観光客も戻り始めた2022年10月1日、水族館では大人料金を、これまでの1880円に300円上乗せした2180円とするなど入館料を値上げした。

沖縄テレビ 松本早織 記者:
開館以来初めての値上げに踏み切った美ら海水族館。その裏側では、何が起きているのでしょうか

値上げの波の中、私たちが見ている水槽の裏側、水族館はどのような状況になっているのか。沖縄美ら島財団の佐藤圭一さんに案内していただいた。

飼料・エサ代は高騰 さらに入手困難にも

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
基本的に安くなっているものは、ほとんどないです。全てが値上がりしてますんで。

沖縄の海の多種多様な生き物たちを飼育するために必要な飼料、エサ代も高騰が続いている。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
冷凍の鮮魚をストックして、毎日必要な分だけ切ったり解凍して使うんですけど、例えばジンベエザメの餌、オキアミです。これもなかなか獲れなかったり、あと漁業者も燃料費がかなり上がってるっていうので、餌代も確実に上がっていきますね。

すべて海外から輸入しているヤリイカなど、イカ類は世界的に価格が上昇していて、そのほかのエサも入手自体が困難な状況になっていると話す。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
環境の変化なのか、あるいは漁業者が減少したことによるのか、いろんな理由があると思うんですけど。なかなか国内で餌を安定的に入手するというのも、難しい状況になっています

年間で2300世帯分の電力消費 光熱費高騰の影響大きく

エサ代以上にコストがかかっているのが、電気代などの光熱費だ。美ら海水族館の水槽の海水は海から引いている。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
ここは、海から取り込んだ海水を各水槽にポンプを使って送水してる場所になります。このポンプは、24時間運転し続けることになります。ポンプは全て電気で動いてますので、かなり大きな電力を使います。

海水をくみ上げるためのモーターや循環させるためのポンプ、水槽の水の冷却や照明も電気で稼働している。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
生物ですから。物ではないので、生きているということで、それを24時間管理しなきゃいけない。ですから、電気も常に動かした状態でなければいけない。

水族館では、年間1000万kwh前後の電力を消費していて、これは一般家庭の約2300世帯分の年間消費量にあたる。

値上げに踏み切った最大要因は施設の修繕費

今回の値上げの背景には、開館20年を迎えた水族館の維持修繕費用の確保が大きな要因となっている。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
海も近く、中でも海水を使ってるってことで、すごく腐食とか部品の劣化が激しいんですね。この水族館も、もう20年経ってますので、修繕のコストっていうのはもう年々上がっていきます

2022年2月、水族館を管理する県は料金引き上げのための条例の改正案を県議会に提出し、2022年10月からの入館料の引き上げが決まった。

それから半年が経過し、観光の回復で来館者数も徐々に戻りつつある。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な原油価格の高騰、円安の影響も大きくなり、今後、電気代など様々なコストがどこまで増大するか、先行きは不透明だ。

「常に新しい発見があるような展示を」

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
全ての費用がコストが高騰してまいりましたので、私達もできるだけ費用、維持管理のコストを下げる努力はしています。

沖縄美ら島財団 事業部 水族館統括 学芸員 佐藤圭一博士:
今回値上げをさせていただきますけれども、最大限の努力をしまして、展示環境を良くすること、皆さんに常に新しい発見があるような展示を心がけていきたいと思ってますので、ぜひ足を運んでいただきたいなと思います

様々な値上げの波が起きている中、訪れる人たちに海の生き物の魅力を伝え、楽しんでもらうため、水族館の努力は続く。

(沖縄テレビ)

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