沖縄科学技術大学院大学=OISTが、世界で初めて開発に成功した「イカの養殖システム」。
これまで困難とされていたイカの養殖が事業化出来れば、将来的に食料不足の解消や海の環境保全に繋がると注目されている。

水産資源が減少 将来イカを食べられなくなる可能性が…

沖縄では「しろいか=シルイチャー」と呼ばれ、親しまれているアオリイカ。歯ごたえのある食感や豊かな甘みから「イカの王様」とも言われていて、イカスミ汁にも欠かせない存在だ。ところが…

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OIST客員研究員 中島隆太 博士:
イカが食べられなくなる可能性が将来的にあるんじゃないかと

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
一番の理由は、2022年の日本近海の水産業全てそうですけれども、かなり資源量が枯渇している。イカはかなり一般的に皆さん食べられる、なじみの深い水産物だと思うんですけれども、80年代をピークにどんどん減少しておりまして、2022年はピーク時の大体10分の1ぐらいの漁獲高しかないわけですね

世界初 イカ10世代の飼育実現 成功のカギは… 

水産物の中でも、イカの養殖はこれまで困難だとされていて、安定した養殖に成功した例は無かった。
そんな中、目覚ましい成果をあげた研究チームが沖縄に!

沖縄テレビ アナウンサー 小林美沙希:
恩納村の海のすぐそばにある、こちらの研究所。ここでイカの養殖の研究が進められているんです

沖縄科学技術大学院大学=OISTのマリンサイエンスステーションでは、さまざまな海洋生物の研究が行われている。
物理生物学ユニットのチームがこのほど開発したのは、アオリイカの安定的な養殖を可能とするシステムで、世界で初めて10世代の飼育に成功した。

研究チームの中島隆太博士は、これまでイカの養殖が困難だった原因についてこう話す。

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
飼うこと自体が非常に難しいですね。水槽という不自然な環境の中に適応しないとか、共食いをしてしまうとか

さまざまな課題を解決するために工夫したのは”水”。

(Q.海から直接引いているんですか)
OIST ズデニェク・ライブネル 博士:
はい。こちらのタンクはフィルターを通していなくて、向こうのタンクはフィルターを通しています

人工的に作る海水ではなく、元々イカが生息している自然の海水を活用したことが、安定した養殖に成功した理由のひとつ。

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
僕たちの場合は、今回”かけ流し”といって海の水をそのまま引いてきて、それを水槽の中を回して、また海に戻すというような、今までやられてきたシステムとは全く違うシステムで飼育をしました

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
一概には言えませんけれども、多分有効的な結果を生んだ一つのポイントになったんじゃないかなと

成長に合わせてデータ収集 効率的な養殖可能に

養殖をする上で、もう一つの大きな課題が「エサ」だ。

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
生まれたばかりのイカの赤ちゃんっていうのは、生きた餌を食べたいわけですよね。その生きた餌を、安定供給してそれをずっとあげていくと、飼育のコストがどんどん上がっていってしまいます

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
それを例えば、死に餌ですよね、死んだ餌…冷凍の餌などに早い時期で切り替えることで、生き餌に対する依存とか、コストの削減をできるようになった。

さらに、エサを与える時間を一定に管理したり、成長に合わせて段階的に水槽の大きさを変えたりと、さまざまなデータを収集することで、効率的に養殖できる方法を確立していった。

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
餌のやり方と、それに対しての水槽の大きさ、管理しているイカの数のバランス。それからタンク(水槽)の大きさを変えていくときのタイミングですね。そういったもの全体のバランスが向上していくことで、今回の成功に繋がったと思います

イカ養殖の事業化で海洋保全にも期待

今後は養殖の事業化に向けて活動を展開するため、技術の特許も申請中だ。さらに養殖が進むことで、海の環境を守ることにも繋がることが期待される。

OIST客員研究員 中島隆太 博士:
自然の中にいるイカがちゃんと育ってくれるように。養殖のイカを食べてもらうことで、自然界にいるイカを休ませることができるというようなシステムができたら、食べる方もそれから海洋保全の方も両方、一石二鳥にできるんじゃないかと。これが最終的な目標だと思います

海の豊かさを守りながら、美味しいイカをずっと食べていけるようにするため、沖縄で開発された養殖の技術が大きな一歩になりそうだ。

(沖縄テレビ)

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