きっかけは「中吊り広告」
「電車で中吊り広告を見てから1ヵ月半、まさかこのような場に・・・」 。都知事杯オープンデータ・ハッカソンの表彰式で最優秀賞となる都知事杯を獲得し、喜びを語ったのは20代半ばから40代半ばの男女6人のチームのリーダー磯本圭介さん。
都知事杯オープンデータ・ハッカソンとは、エンジニアやプランナーがそれぞれ技術やアイデアを持ち寄り、短期間でアプリを開発して成果を競う開発イベントだ。 東京都としては、行政がもつ様々なオープンデータを活用した新たなサービスの創出で、行政課題を解決してもらいたい、という狙いがある。
この記事の画像(6枚)東京に”土地勘”ゼロでも探せる「私の町」
「東京土地勘ゼロのあなたに AIが運命の町をみつけます」 。最優秀賞を勝ち取った6人は年齢も会社も全く異なる。イベントや人づてで知り合い、自分たちの“本業”が終わるとズームで会議を重ねて作ったアプリは『上京物語』。 文字通り、東京に引っ越してきた人が“自分に合う町”を探すためのアプリだ。
クリックだけで“自分の町”ベスト10が
「入力がめんどくさくなるのは避けたいな、と思って、画像とか写真とか「私は水泳好き」「保育園だけゆずれない」とかそういうところを楽しく入力出来る仕組み、そこに苦心しました」こう話すのはリーダーの磯本さん。
アプリ内の質問に沿って、家族構成、年代、子供の人数、就学上京、世帯年収、などクリック、さらに職場の最寄り駅、通勤時間、管理費込みの支払い可能家賃、なども選んでいく。子育て環境や休日の過ごし方、子供がもっとも幸せそうな瞬間は?などの質問は、イメージしやすい写真付きだ。
16の質問に答えると、東京都のおよそ51000のオープンデータカタログをもとに診断が行われて、自分のニーズに合った町「ベスト10」がそれぞれの「マッチ度」とともに出てくる。
元ヤフー社長の副知事も・・・
「自分も関西から東京に出てきた時どこに住んだらいいかわからなくて。住みやすい街ランキング本を買ってきてだけど「住みやすい街ランキングは私に合った街のランキングとは違うよな」と。本当にそう思ったんですよね」
元ヤフー社長で現在は東京都の副知事として審査にあったった宮坂学氏は「これまでありそうでなかったサービス」と評価。 さらに「自治体がオープンデータを出せば出すほど(住みたい人との)マッチングが進む」と期待感も示した。
東京都が、「上京物語」含め表彰した10組のアプリはまだ試作段階。来年3月末までのリリースを目指し支援を行うという。
具体的には、技術者に定期的に相談出来るようにするなどの「システム自体の相談」のほか、実証実験相手を探す、利用規約のひな形を提供する、など賞金ではなくきめ細やかな対応で支援を進めていくという。
行政の大量にあるものの活用が進まないオープンデータと民間のアイデア、官民共同のアプリで都民生活の質をどこまで向上させられるのか 。また、初回となった去年は、期間内に3つのアプリをリリースしたが「収益化した」とまでは言えないそうだ。いかに収益に結びつけるかも重要だろう。
(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)