奈良県警の銃弾紛失を巡って違法な取り調べを受けたとして、男性巡査長が県に損害賠償を求める裁判を起こした。関西テレビは取り調べの音声データを入手した。

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実弾5発が紛失? 10日に渡る長時間の取り調べ

取り調べの録音には、次のようなやり取りが残されていた。

取調官:
お前が一番、お前しかおらんねん、もう。状況、前、行動、心理。やっぱりおかしいねん

男性巡査長Aさん:
どこがですか

取調官:
もう全部

拳銃の実弾がなくなった…そんな事実はなかったにもかかわらず、10日間にわたって行われたという長時間の取り調べ。訴状によると、奈良西警察署の男性巡査長Aさん(20代)は、2022年1月、宿直勤務中に実弾の数を点検した。

その後、上司も点検し問題は見つからなかったが、Aさんが帰宅した後に実弾5発の紛失が発覚。2日後に突然、Aさんへの取り調べが始まった。

取調官は、最初からAさんが犯人だと決めつけたという。

取調官:
全部出そろっても、やっぱり要はお前から外れんのや、ほんまアウトやねん。はっきり言うたらな、もうお前やねん

男性巡査長Aさん:
こいつちゃうか、こいつちゃうかって。第一が僕やとしても、第二、三ってのがおったと思うんですよ

取調官:
そらおるよ。おるけど、まあ一番分かるやん、やったやつ

「ADHD、サイコパス」などの発言も

さらに取調官は、AさんにADHD=注意欠如・多動症の特徴があるなどと決めつけたり、サイコパス、目がやばいなど人格を否定するような発言を繰り返したりしたということだ。

取調官:
そりゃ人間みんな嘘つくねんで。嘘つくねんけど、お前は性格というか、そういう人間というか、なんていうかな。本来やったらグレーというか、病気に近い回答の仕方する

連日、朝から深夜まで続く取り調べの中で、Aさんは徐々に「自分が犯人ではないか」と思うようになったという。

男性巡査長Aさん:
言いたい。「やりました」って先に言いたい、そこから進めてもらいたいところなんですけど。ホンマに思い出せないんです、何も。いつ取ったか。持ってたんか

取調官:
やりましたでええわ。やりましたでいこう、ほんなら

男性巡査長Aさん:
取った記憶がないんですもん。そこから進まないじゃないですか

取調官:
ええやん、しゃあない

男性巡査長Aさん:
しゃあないですか?全く覚えてませんけど

取調官:
ええよ

県警は「違法な取り調べではなかった」と主張

連日の取り調べにAさんはうつ病を発症し休職。その後、実際は別の担当者が実弾の配分を間違えていて、そもそも紛失していなかったことが判明した。

取り調べは任意だったが、自宅の前に朝から警察が待機していたことや、上司からの命令で従うしかない状況だったことから、実態は強制的なものだったとAさんは話す。

Aさんは違法な取り調べを受け、精神的な苦痛を受けたとして、奈良県に約710万円の損害賠償を求める裁判を起こした。

奈良県警は「結果的に迷惑をかけた」としてAさんに謝罪したが、違法な取り調べではなかったと主張している。

奈良県警 山口和良 警務部長:
そもそも紛失でも盗難でもない事案で、関係職員を取り調べたことは反省すべきだった。捜査については、現時点で不適正なものがあったと考えてはおりません

奈良県はAさんの訴えを棄却するよう求める方針だ。裁判は10月4日から始まる。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月3日放送)

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