幼い頃によく食べた、あの味…。
当時を思い出させてくれる、心に刻まれた味…。
あなたには、そんな「懐かしの味」があるだろうか?

閉店した飲食店の味や思い出…インターネットで後世につなぐ

長崎市民:
道ノ尾の駅のところに、昔 中華料理屋があった。そこのチャーハンがおいしかった。豚肉を粗く切ったチャーハン。その味が忘れられないです

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佐世保市民:
あそこもなくなった、「ふくとく」。近くの停留所の前の、割と昔の食堂。おじいちゃん、おばあちゃんがしていた。あそこよかったのにね

長崎市民:
ここの通りだったかな。トルコライスがおいしかった。(また)食べたいなと思うけど、もうないから仕方ないよね
(Q.もう一回その味が食べられるとしたら?)
うれしい!すぐ行きます!

店主の高齢化や新型コロナなどの影響で、閉店する飲食店が全国的に増えている。長崎県内でも、飲食店や喫茶店の数は2005年の9,200店舗あまりから、ここ15年で2,000店舗減っている。ここ2年は店主の高齢化に加えて、新型コロナの影響も大きいと見られている。

そんな閉店してしまった飲食店の味や思い出を、インターネットを使って後世に残そうと動き始めた男性がいる。3年前に転職し、佐世保に移住した愛媛県出身の西信好真さん。

佐世保の信用組合の地域振興の部署で働く中で、佐世保の食文化に魅力を感じると共に、なくなっていく店が多いことを知ったという。そこで西信さんは、閉店した店の味を「記憶」と「記録」で残すプロジェクト、その名も「のれんバンク」を始めた。

パソコンやスマートフォンで、閉店した店についての写真やコメントを投稿でき、元店主やファンたちで思い出を共有できる。今はウェブ上でアンケートをとり、情報を集めている。

西信好真さん:
「四カ町の楽器屋さんの2階にピアノを習いに行かされていて、レッスンが嫌だったけど、帰りに必ず大阪屋のラーメンを食べさせてくれて、それが楽しみで通っていたようなものです」とかですね。なんかそれぞれの個人的な思い出をここに綴ってくれていて、それがまた読んでいて感情に届く、響く内容になっている

レシピ販売も「誰かが待っている味をどこかで」

西信さんの元には、アンケート開始から1日で100件を超える回答が集まるようになった。西信さんはいま、情報を元に、閉店した店のレシピを保存しようとしている。

西信好真さん:
(レシピを)ちゃんと情報として残しておかないと、後々あの味を再現したいという料理人が出てきたときに、手がかりが全くなくなってしまうので

西信さんは元店主が望めば、保存したレシピをアプリを通じて別の飲食店や料理人などに販売。レシピを使ったメニューの売り上げの一部を、元店主に“著作権料”のような形で渡す仕組みを作ろうとしている。

この日、西信さんは佐世保市内の「天津包子舘」を訪れた。元々は中華レストランだったが、新型コロナの影響で2年前に閉店。今は名物ジャンボ餃子の持ち帰り専門店となっている。この日はオーナーの八木さんにお願いして、アンケートで復活を望む声が多かった「梅チャーハン」を作ってもらった。

西信好真さん:
いただきます。おいしいですね、梅の酸味がすごいさわやかで、食べやすい。中華の、割と重ためのメニューと相性がすごくいい。外(他県)から来た人間として、食べたことない店がアンケートにいっぱい並んで、みんな好きだったと書いていて、すごく食べてみたくはなるので、こういうのが整ってきたら観光コンテンツにもなると思う。地元の人がそんなに愛している味って、どんな味なのって気になる

「天津包子舘」オーナー 八木順平さん:
そんなにうちの梅チャーハンが人気だとも知らなかったですし、どういう形になるかわからないですけど、なにかビジネスチャンスがあって、売り出すことができれば。どこかで誰かが待っている味なので、店がなくなって看板が変わっても、どこかで食べていただければ全然いいと思う

西信好真さん:
どうしても人口が減っているので、色んな店が畳んでしまうのはしょうがない流れかなって気はする。時代の流れはあるが、しっかりと記録に残しておくことで、またいつか復活したりとか違う展開の仕方の可能性が残る。街の宝というか、文化を次の世代に残せていけたらと思っている

店がなくなってしまうと元店主と連絡をとることも難しいが、西信さんは元店主を探すため、手がかりがありそうな人を一人一人あたって、これから情報を集めていく。
「食」というまちの文化を後世につなげようと、西信さんは今後も活動を続ける。

(テレビ長崎)

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