東京・千代田区の日本武道館で行われている安倍元首相の国葬で、岸田首相が弔辞を読み上げ、「安倍さん、あなたこそ勇気の人でありました」と称えた。

27日の国葬で岸田首相は、葬儀委員長として弔辞を読み上げた。
岸田首相は、事件について「いったい誰が、こんな日が来ることを、寸毫(すんごう)なりとも予知することができたでしょうか」とした上で、「あなたは、まだまだ、長く、生きていてもらわなければならない人でした」と述べた。
安倍氏の政治活動を振り返る中で、岸田首相は、まず拉致問題を取り上げ、「あなたは、まだ議会に席を得るはるか前から、強い憤りをもち、並々ならぬ正義感をもって、関心を深めておられた姿を、私は知っています。被害者の方々を、ついに連れ戻すことができなかったことは、さぞかし無念であったでしょう」と述べ、「あなたの遺志を継ぎ、一日千秋の思いで待つご家族のもとに、拉致被害者が帰ってくることができるよう、全力を尽くす所存です」と決意を述べた。
そして、安倍氏が、戦後生まれで初めて首相になったことを、「私たち世代の旗手として、当時あなたが、戦後、置き去りにされた国家の根幹的な課題に、次々とチャレンジされるのを、期待と興奮をもって眺めた」と振り返り、安倍氏が打ち出した「戦後レジームからの脱却」を評価した。
また、首相に返り咲いて以降の功績について、日米豪印の「クアッド」の枠組みや、「平和安全法制」などを挙げ、「日本と地域、さらには世界の安全を支える頼もしい屋根をかけ、自由、民主主義、人権と法の支配を重んじる開かれた国際秩序の維持増進に、世界の誰より力を尽くしたのは、安倍晋三、その人でした」と称えた。
さらに、「あなたは、わが国、憲政史上、最も長く政権にありましたが、歴史は、その長さよりも、達成した事績によって、あなたを記憶することでしょう」と述べた。
その上で、新渡戸稲造の「勇とは義(ただ)しき事をなすことなり」との言葉を、安倍氏が防衛大学校の卒業式で使ったことを紹介し、「安倍さん、あなたこそ勇気の人でありました」と語った。
そして、「あなたが敷いた土台のうえに、持続的で、すべての人が輝く包摂的な日本を、地域を、世界をつくっていくことを誓う」と述べ、「お疲れさまでした。そして、本当にありがとうございました。どうか安らかにおやすみください」と結んだ。