FNNと産経新聞社の合同調査による最新の世論調査では、岸田内閣を「支持しない」という回答が、2021年10月の内閣発足後初めて「支持する」を上回った。安倍元首相の国葬、旧統一教会問題、円安による経済状況の悪化などが影響し厳しい結果に。BSフジLIVE「プライムニュース」では与野党からゲストを招き、岸田政権の課題を議論した。

岸田政権の支持率急落 背景は「聞く力」への失望感か

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新美有加キャスター:
最新のFNNの調査では、岸田内閣を支持すると答えた方は前回から12.0ポイント下がり42.3%、支持しないと答えた方は9.7ポイント上がり50.0%。他社の最新の調査でも、いずれも不支持・支持しないと答えた方が上回っている。この要因は。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
2カ月前には6割ほどの支持率があった。真摯に受け止めなければいけない。旧統一協会の問題、安倍元総理の国葬の問題などで、政府与党の対応を支持できないということだと思っている。

反町理キャスター:
国葬や旧統一教会の問題は失政にあたるか。または対応の甘さか。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
失政では全くないと思う。説明をしっかりしていかなければ。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
旧統一協会問題への対応、国葬についての姿勢は非常に大きかった。のみならず、内閣発足以来私たちも提案してきたが、岸田総理は「検討します」で終わる。きちんと国民の声を聞いて物事を進める人ではない、と国民の皆さんが気づき始めているのでは。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
岸田さんの支持率が割と高かった背景には、強権的ではなく対話をするソフトなイメージがあった。しかし、聞く力があるとは見られなくなり、従来の保守政治に反発していた人たちからの期待がなくなった。

反町理キャスター:
一方、内閣支持率は落ちても自民党の支持率は大きく落ちていない。立憲民主党の支持率はほぼ横ばい。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
結局、野党はライバルとみなされていない。だがここのところ、自民党と支持政党なしがトレードオフの関係になっている。潜在的な部分を考えれば、自民党は安心できない。

「国葬に反対」が6割超の世論 2カ月半で変わったこと

新美有加キャスター:
9月27日に行われる安倍元総理の国葬問題についての世論調査。賛成だと答えた方は、前回と比べて9.3ポイント減の31.5%。反対と答えた方は、11.2ポイント増の62.3%。なお、岸田総理の説明に納得できると答えた方は18.9%、できないと答えた方は72.6%。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
これも謙虚に受け止めなければいけない。国葬と旧統一協会との関係についてはリンクさせて回答されているのでは。亡くなった直後に同じような調査があれば、全くこのような数字ではないと思う。旧統一協会の問題について説明し明らかにしていかなければ。

若宮健嗣 自民党幹事長代理
若宮健嗣 自民党幹事長代理

松井孝治 慶應義塾大学教授:
あのとき、国民の皆さんが増上寺や自民党本部に花を供えた。悼む思いが国民の幅広い層にあった。だが、なぜそこから2カ月半も置いてしまったか。その割には手続きが丁寧ではない。

反町理キャスター:
立憲の辻元清美議員と蓮舫議員はツイッターで国葬を批判し、招待状の写真を載せて不参加を表明。これは、党としては?

大串博志 立憲民主党選対委員長:
私たちは今回の国葬に当初から反対。理由は、法的根拠や基準がはっきりしないこと、戦後2例目の国葬を行う理由がはっきりしないこと、安倍元総理と旧統一協会の問題。岸田総理に説明を求めたが、議院運営委員会ではほぼゼロ回答だった。国葬においては弔意を表明しない自由もある。それぞれのお考え。

反町理キャスター:
視聴者の方から。「立憲の議員は弔意を強制するなと言うが、国葬に出席する連合会長などを批判することは国葬欠席を強制しており矛盾では」。蓮舫氏が芳野連合会長を批判しているが。

大串博志 立憲民主党選対委員長
大串博志 立憲民主党選対委員長

大串博志 立憲民主党選対委員長:
弔意の表明の強制も、弔意を表明するなと言うこともよくない。

反町理キャスター:
一方、野田元首相が「元首相の葬儀に出ないというのは、私の人生観からは外れる。長い間ご苦労様でしたとお別れをしたい」と。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
同じ経験を持つ者として国葬で弔意を表明したいと。この内心の自由は尊重されるべき。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
私の周辺では、野党支持者にも保守系の方にも、野田さんの判断を評価する声は多い。議論の場では敵同士でも、国全体のこととなれば敬意をもって送るというフェアプレー精神が与野党の中にある国なら、政権交代も健全にできるのだが。

ルールで線引きもせずに「旧統一教会を排除」は正しい順序か

新美有加キャスター:
岸田総理は8月31日の会見で、旧統一教会との関係断絶を党の基本方針として徹底すると決意表明。世論調査では、対応を評価すると答えた方が46.7%、評価しないと答えた方が47.0%と、拮抗する結果に。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
関係断絶という党の基本方針は既に徹底しており、議員が旧統一教会や関連団体との関わりを持つことは今後ない。だが、個人のボランティアに信仰を尋ねることはなく、また関連団体とわからない名前で入ってくる場合がある。宗教団体だけでなく、反社会的な団体はダミーを作るもの。暴力団のフロント企業もそう。だから、立場を明らかにしなければいけないことをルール化できれば。

反町理キャスター:
自民党が旧統一協会と関係を断てるかという世論調査では、「断てると思う」11.3%に対し「断てないと思う」が83.3%。自民党はどう対応すべきか。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
選挙は大変でお金も人手もいる。結局、どの政党もどこかの団体のボランティアを使っている。善意のボランティアばかりならよいが、見返りに広告塔になることを求めるといったことがある。仮に旧統一協会との関係を断てたとしても、同じ構造の問題は簡単になくならないと有権者は判断していると思う。ならば選挙運動のやり方、何との関係を断つのか、断ち方をどうするかという構造的な議論を。

反町理キャスター:
どの政党も旧統一教会との関係を排除すると言うが、宗教法人の承認取り消しも解散命令もない状態での排除はどうなのかという指摘がある。その団体が悪と決まってもいないのに信者かと聞かれ、答えればボランティアの、あるいは就職のチャンスを失う。これはおかしくないか。今回の問題はその問題を内包しているにもかかわらず、目をつぶって事態が推移しているのでは。

松井孝治 慶應義塾大学教授
松井孝治 慶應義塾大学教授

松井孝治 慶應義塾大学教授:
本来はおかしい。何が本当にアウトなのか、きちんと議論して立法措置を考えていただきたい。議員はルールを作るのが仕事。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
いつのまにか旧統一協会の方が入っていたことがけしからんという話ではない。自民党さんの場合は組織的に旧統一協会から応援してもらっていたのでは、ということ。

反町理キャスター:
その前提となるのが、旧統一協会が反社の集団かどうかという線引きでは。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
社会的に大きな問題のある団体に対して、票の割り振りをお願いすることが問題。

反町理キャスター:
「社会的に大きな問題って何?」にまず白黒つけたらどうですか、という意見に対する答えになっていない。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
最低限、並行して議論するべき。旧統一協会の問題は与野党ともに棚上げできない。しかし同時に、何が日本の政治をゆがめているのか、選挙運動のあり方も含め見直した方がいい。

10月の臨時国会では党首討論を行い、政治への関心を高めよ

新美有加キャスター:
政府の物価高への対応について、評価すると答えた方は前回から2.2ポイント減の16.2%、評価しないと答えた方は3.2ポイント増の77.4%。主な物価高対策は、住民税非課税世帯への1世帯当たり5万円給付、ガソリンの補助金制度を2022年末まで延長することなど。

大串博志 立憲民主党選対委員長:
岸田総理の物価高対策は対症療法的すぎる。根本の賃金を上げることに対してもっと手を打つべき。もう一点、円安の問題。今は基本的に金融政策のあり方を全く変えないが、それだけでいいのかと危惧している。

新美有加キャスター:
一方、立憲民主党の物価高対策。給付金の対象範囲の拡大や増額、ガソリン税を引き下げるトリガー条項の発動、輸入小麦の価格に上乗せしているマークアップ(政府が管理する際の経費)を引き下げることを打ち出している。

若宮健嗣 自民党幹事長代理:
どれもやって問題ないと思うが、予算がかかる。まだ内容を明らかにする段階ではないが、次の国会に向け30兆円ほどの規模の景気対策をまとめている。本当に困っている方々や企業のための手立てが必要。同時に、円安のチャンスを逆に生かすことも考えていかなければいけない。

新美有加キャスター:
次の臨時国会は10月上旬から。松井さん、注目点は。

松井孝治 慶應義塾大学教授:
本当は一度、党首討論をやってほしい。泉健太代表は長い付き合いで、人間的にいい男なのだが、ぱっとしない。安倍さんと枝野さんはお互いキャラが立っていた。今はキャラが見えず、関心が集まらない。一対一で、お互い目指す政治について議論してほしい。意外とシンクロするところがあるかも。多くの人が一瞬期待したが忘れかけている岸田さんの魅力も出てくるかもしれない。

(BSフジLIVE「プライムニュース」9月19日放送)