各地の住宅街を流れる河川で、目撃が相次ぐ「エイ」。今、そのエイに、人が刺されたり、養殖した貝を食べられる被害が出ています。なぜ川に現れたのでしょうか。現地を取材しました。

「エイ」が住宅街や駅近くの川に…刺されると命の危険も

東京・世田谷区の住宅街・田園調布を流れる多摩川。そして、横浜駅のすぐ近くを流れる川でも…

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エイを目撃した人:
進行方向に向かって直角に波が立つような、ちょっと不思議な波で

エイを目撃した人:
今回初めてエイを見たので、ここまで、川まで上がってくるんだと、本当にびっくりした

さらに、港町・神戸市にある兵庫運河で撮影された映像でも…。
橋の下を覗いてみると、2匹のエイが優雅に泳いでいます。本来海に生息するエイが、全国の住宅街を流れる川などに出没しているというのです。

エイが危険視されている理由、それは、尾にある「尾棘(びきょく)」といわれる毒のあるトゲで、人を刺すことがあるためです。
30年近くエイやサメの研究をしている、長崎大学の山口教授に話を聞くと…

長崎大学 水産・環境科学総合研究科 山口敦子 教授:
触るとすぐ刺されてしまう。特にアカエイは返しがついているので、刺さると抜けないんですよね

山口教授によると、田園調布や横浜市に現れたエイは「アカエイ」の仲間である可能性を指摘。アカエイは尾に長く太い毒針を持っていて、刺されると危険だと指摘します。
神奈川県藤沢市で、実際にエイとみられる生物に刺されたという人は…

エイとみられる生物に刺された人:
8月21日に、鵠沼(くげぬま)海岸の河口のところですね。足の甲です。激痛ですね。じんじんしびれと、しびれが膝の上まで上がってきたので、恐怖心がとても…

3週間経った今も、足に違和感があるといいます。オーストラリアなど海外ではアカエイに刺されて死亡した例も報告されています。

殻ごとボリボリ…養殖した貝も「食害」に

懸念されるのは、「刺されること」だけではありません。
エイが現れた神戸市の兵庫運河に、地元の漁業関係者とともに行ってみると、座布団ほどの大きさのエイが泳いでいました。

兵庫漁業協同組合・組合長 糸谷末二郎さん:
去年(2021年)から食害が出だして。現れたエイは普通の魚を食べないで、カキとかアサリとか、それが好物だから狙ってこの場所へ来る

目がギロリ…貝を食べるナルトビエイ 撮影:林 義雄(セシルリサーチ)
目がギロリ…貝を食べるナルトビエイ 撮影:林 義雄(セシルリサーチ)

兵庫運河に現れたエイは、「ナルトビエイ」と呼ばれるエイ。主に甲殻類や魚を食べるアカエイとは違い、ナルトビエイはアサリやカキなどの二枚貝が大好物。貝を殻ごとガブリ。ボリボリと音を立てながら捕食するのです。

このあたりでは数年前、天然のアサリが見つかり、水質改善のため、アサリやトリガイの養殖実験を開始しました。しかしナルトビエイによる「食害」の被害が出ているといいます。
では、なぜ本来海に生息するエイが川などに現れているのでしょうか。

長崎大学 水産・環境科学総合研究科 山口敦子 教授:
餌場になるような場所がなかなかなくて、人から見やすい場所っていうか、そういうところによく来るようになったっていうのは一つだと思いますね。
(兵庫運河の場合は)沖合も貝がなくなってしまったので、アサリをちょっとまいている場所とか、ちょうどいい餌場になってしまって、そこに現れる可能性があるということです

また、山口教授は、「冬場の海水温が高く、寒さで死亡するエイが減った可能性がある」としたうえで、「駆除」ではなく、「共存」していく方法を探っていきたいと話しています。

(めざまし8 9月13日放送)