9月5日午後、静岡・牧之原市の認定こども園の送迎バスの車内で、3歳の園児・河本千奈ちゃんが倒れているのが見つかり、病院で死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は熱中症の中でも程度の重い熱射病と判明した。

送迎バスに5時間置き去り…なぜ防げなかった?

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園によると、千奈ちゃんを含む6人の園児を乗せたバスが到着したのは、午前8時50分ごろ。普段送迎している運転手が休みだったため、急きょ70代の園長が運転していたということだ。派遣職員の70代の女性も同乗していた。
園児を降ろしたバスは、少し離れた駐車場に停車した。そして約5時間後の午後2時10分頃、帰りの準備のためにバスを出そうとしたところ、車内に千奈ちゃんが倒れているのが発見された。千奈ちゃんは約5時間、車内に置き去りにされていたということだ。

取材に対し、園長は「バスから全員が降りたか確認していなかった」と話している。

このこども園は近所からの評判も良く、孫が千奈ちゃんと同じクラスだったという人は、「親や子どもの話を熱心に聞いてくれ、人手が足らないと感じたことはない。こういう事故が起こる類の園ではない」と話した。

幼稚園のホームページにあるスケジュールを見ても、朝の会、クラス活動、給食など、園児の不在に気付くタイミングは何度もあったように思われる。

悲惨な事故は、なぜ起こってしまったのか。

同様の事故は過去にも…求められる仕組みづくり

2021年7月、福岡・中間市で保育園に通う5歳の男の子が、通園のバスに9時間にわたって取り残され、熱中症で死亡するという事故が起きた。これを受けて、国は2021年8月に保育園・幼稚園に通知を出している。

・送迎バスを運行する場合、運転手の他に子供対応の職員の同乗がのぞましい。また、子供の乗車時および降車時に、座席や人数の確認を実施すること
・子供の欠席したときなどは、保護者への速やかな確認および職員間で情報共有を徹底すること

送迎バスの置き去りどう防ぐ?大阪の保育園では…

これらの通知が守られていれば、起こらなかったはずの今回の事故。他の保育園・幼稚園では、どういった対応をしているのか。関西の保育園を取材した。

大阪・門真市の「おおわだ保育園」。この日は17人の園児が、バス2便に分かれて通園してきた。

おおわだ保育園では、国の通知が出る前から、バスには運転手のほかに添乗員を配置している。園児全員がバスを降りると、まずは添乗員、次に園で待っていた職員、最後に運転手と、園児の降り忘れがないかを3重で確認している。

おおわだ保育園 首藤由佳さん:
お子様をお預かりしているので、気を付けてしっかりと確認させていただいております

さらに、こんな確認も… 

おおわだ保育園 宮本寿恵美さん:
乗る際には必ず名簿がございますので、名簿で乗ってきた子にはチェックをして、「この子が乗りました」「この子は乗ってない」という形で確認はしております

バスに乗った園児の欄には○をつけ、乗らない園児には斜線を引いて記録に残し、この名簿をもとに、保育園に来ているかどうか再度確認している。

おおわだ保育園 宮本寿恵美さん:
他人ごとではないと思っておりますので。基本的な人数確認であったり、点呼であったりを、焦ることなく、子供たち一人一人を見ながらやっていくことかと思います

また、京都市保育園連盟では、園バスのマニュアルを作成している。

・1台につき、運転手以外に保育者1名以上が添乗
・1人ずつ下車させる
・添乗員と運転手のダブルチェックで、子供たち全員の降車を確かめる

また繰り返されてしまった、幼い子供が死亡する痛ましい事故…
ヒューマンエラーは起こり得るということを念頭に置いて、あらためて事故を繰り返さないための仕組みづくりが求められている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月6日放送)

関西テレビ
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