連日報じられている物価高騰。南極大陸で観測活動を行う越冬隊員の暮らしも直撃しているという。
物価高で予算2割オーバー「量を減らすしか…」
東京・立川市にある国立極地研究所。
倉庫では、南極の昭和基地に1年2カ月暮らす越冬隊員たちの食糧の梱包作業が行われていた。

そこには、第64次南極地域観測隊の調理担当の長谷川雄一さん、中川潤さんもいた。

中川さんは鹿児島で料理店を経営。「南極に行ってみたい」という気持ちが強く、今回初めて“南極の料理人”として参加する。
「コンテナが70ぐらいあるんですけど、全て“食糧の物資”のためのコンテナです。すごい量です」
1人あたりに必要な食糧と飲み物は約1トンにものぼるという。南極への出発は11月。
しかし、物資の調達に大忙しの2人が直面したのが、“物価高騰”。業者からの見積書は、例年に比べて最低1割ほど高く値上げされたものばかり。当初計画していた1年間の献立だと、予算の2割弱をオーバーすることになってしまったのだ。

もう一人の調理担当の長谷川さんは、「今年はどこの業者さんも今年はしんどいですよって。これまでも肉が値上がりしたとか魚が値上がりしたとかはありましたけど、値上がりしたものを買い控えて、献立を変えて対応することができました」
しかし、今年は全ての製品が値上がりしているので量を減らすしか方法がないという。
「今の不安は食材が足りるかです。本当に。どうしても食べないと生きていけないじゃないですか。そこが一番怖いです」

日本企業22社が食品を寄贈
南極地域観測隊は、温暖化による地球への影響などを南極大陸で調査研究している。地球で最も寒く、最も風が強く、最も乾燥している南極大陸。越冬隊員約30人が1年2カ月もの間、滞在し、時にはブリザードに見舞われながら、日々の観測業務などを行なっている。
彼らの食糧が不足してしまう…。
そんな窮状を察して、食料品を寄贈する企業が現れた。
味の素が、今年初めて越冬隊のために調味料や業務用の粉末スープなどを提供することを決めたのだ。

味の素の担当者と行われたオンライン会議で、「健康で美味しいご飯を食べていただきたい」との発言があり、長谷川さんと中川さんは感謝とともにほっと胸を撫で下ろした。

食品を寄贈する企業は、22社に上り、越冬隊の活動を支えている。
国立極地研究所は、64次観測隊に寄贈された商品については、10月頃にホームページなどで紹介するなどして感謝の気持ちを表すことにしている。