31日、厚生労働省が国内初の新型コロナの予防薬として、アストラゼネカ社の「エバシェルド」を特例承認しました。
新型コロナウイルスの「治療」だけではなく、「予防」にも効果が期待される「エバシェルド」。2年半にも及ぶコロナとの戦いを大きく変えるものになりうるのでしょうか?
専門家と、その可能性を探ります。
国内初の“予防薬” に新たな期待 これまでの治療薬との違いは
この記事の画像(7枚)厚労省が特例承認した、新型コロナ治療薬「エバシェルド」(アストラゼネカ社)。2種類の抗体薬を筋肉に注射する治療薬です。
その効果はこれまでの治療薬とは大きく異なり、「重症化を防ぐ」という治療の効果に加えて、「発症の予防」の効果も期待できるといわれており、国内初の新型コロナ「予防薬」になります。
すでに承認済みの新型コロナ治療薬と比較した際、リスクの減少率はどの程度異なるものなのでしょうか?
まずは、飲み薬の「モルヌピラビル」は、入院・死亡リスクが30~50%減少することが確認されています。
一方、点滴などの投与となる「ソトロビマブ」は、入院・死亡リスクが79~85%減少。
今回の「エバシェルド」は、重症化・死亡リスクと条件は異なるものの、50.5%の減少が確認されています。
重症化予防、発症予防の2つの効果は、どのような方にとって役に立つのか。感染制御学に詳しい、東邦大学の小林寅喆教授はこう話します。
東邦大学・小林寅喆 教授:
重症化予防というのは、すでに感染した患者さんの重症化を予防する、従来の薬剤と同じような効果。そして今回の感染予防、「予防薬」としての効果から考えますと、今までワクチンを打っても抗体がなかなかできなかった人、もしくはワクチンが打てない人、そういう人たちが、感染のリスクに置かれた状況の中で、感染の予防効果が維持できる。
ですから、ワクチンを打てない、だけどもこんなに感染が流行しているという中で、実際にこの「予防薬」で予防することができるようになったと
今まで、重症化リスクがあるにもかかわらず、ワクチン接種を行うことができなかった人たちを救えるのではないかといいます。
「エバシェルド」の効果とは?
「エバシェルド」の効果はどれほどのものなのか。
治療の効果:発症7日以内の投与により、重症化・死亡リスクが50.5%減少
予防の効果:感染前に投与することにより、発症リスクが76.7%減少
いずれの効果も、6カ月間持続されるということです。
猛威を振るうオミクロン株への効果について、BA.2系統への有効性は「維持」されることが確認されています。
一方で、BA.4、BA.5系統への有効性は、減少したり弱まったりする恐れがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討していくということです。
「エバシェルド」と「ワクチン」の違いは?
これまでの「ワクチン」との違いは、どういったところなのか。
従来のワクチンは、“抗原”を注射で投与し、体内で抗体を作るというものでした。抗体ができるまでに、1~2週間の期間が必要です。
しかし、エバシェルドは“抗体”そのものを体内に投与するため、直接抗体が作用するのです。
「エバシェルド」の今後 接種の対象者は?
今後に期待がかかる「エバシェルド」。
現在接種の対象は、12歳以上の「体質によってワクチン接種を受けられない人」「持病などで免疫機能が落ち、ワクチン接種を受けても十分免疫が得られない人」としています。
東邦大学・小林寅喆 教授:
ワクチンを打てない人や、ワクチンを打っても効果が得られない人が対象になっていますので、そういう方たちにとっては、今まで感染リスクに対する手立てがなかったわけです。
この予防薬を投与することで、感染・発症のリスクも抑えられるということで、非常に画期的な予防薬と考えてよろしいかと思います
Q.今後、ワクチンの投与から、この予防薬を投与という形に変わっていくのでしょうか?
東邦大学・小林寅喆 教授:
いえ、これはあくまでも「治療薬」で、ワクチンは「ワクチン」という枠組みですので、ほとんどの方はワクチンで予防していく。そこからこぼれた方たちが、このような予防薬を投与して、防いでいけるようになってくると
Q.副作用はあるのでしょうか?
今のところ通常の薬剤に比べても、例えば「過敏症」が1%未満とか、そのくらいの数ですんでいますので。そういう意味では“今のところは”、それほど副作用が出ている、ということは、起こっていないと考えていいと思います
(めざまし8 8月31日放送)