SDGsへの取り組みを紹介している「アクション!SDGs」。17の目標のうち、12番目の「つくる責任つかう責任」への取り組み。
氷見市で140年続く老舗木材屋さんが実践するSDGs。森林資源を大切にしながら、生活の中へ、いかに木材を溶け込ませるか。製材会社の知恵が詰め込まれていた。

インクの原材料は「スギの樹皮」

ボトルに入ったインク。実は、ここにさまざまなSDGsへの取り組みが詰まっている。
インクの原材料は、これまでは廃棄されていた「スギの樹皮」。
このインクを作っている富山・氷見市の岸田木材を訪ねた。

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明治16年に創業した岸田木材。
主に、建築用や土木資材用の木材を加工している製材会社、老舗の木材屋。氷見の里山で伐採した「ひみ里山杉」を中心に、北陸や長野の国産材を加工。加工した木材は、駅や美術館など公共施設にも多く使われている。「ひみ里山杉」は、氷見市の事業者が地元産の杉をブランド化したもの。

岸田木材・岸田真志さん:
山で伐採されたものが、ここに運ばれて、産地や樹種、長さなどで分けて仮置きをしている。あれが木の皮をむく機械。皮をむいたものを加工する。奥に皮置き場があるんですけど、それがインクに使われている材料です

山で伐採したほとんどの木には、菌や虫の侵入を防いだり、水分を保ったりするために樹皮が付いている。
この樹皮が付いたままだと湿りやすく虫が付きやすいため、木材にするためには、必ず皮をはぐ作業が必要。
岸田木材では、週に20トンの樹皮が出るそう。

谷優子アナウンサー:
これまではどうされていたんですか?

岸田木材・岸田真志さん:
当社としては、樹皮は産業廃棄物。すべてを捨てるわけではなくて、鶏ふんや牛ふんをまぜて発酵させて、農業に使われている。うちから出るのは、お金を払って出しているので、それを使いこなせないかとインクを作ってみた。昔からある草木染の応用

京都の文具メーカーと共同で作ったのが、ひみ里山杉からできたインク。
樹皮から色素を抽出した天然染料で、木のぬくもりが感じられる優しい色合いと、杉のほのかな香りが特徴。

岸田木材・岸田真志さん:
生活に「木」をどうやって溶け込ませるかを考えていて。木は身近なようで身近ではない。あまり産地なども気にされない。衣食住で唯一気にされないのが「住」の部分。「木」と身近な接点があればいいよねという思いです

端材をアウトレット価格で販売

木の日常使いは、里山の保全にもつながる。その考えのもと、2021年、新たな取り組みも始めた。

谷優子アナウンサー:
氷見市の商店街に移動してきました。木がいっぱい。ここは?

岸田木材・岸田真志さん:
岸田木材のアンテナショップの「ヒミブリコラボ」です。もともとパチンコ屋さんだった場所を借りて、木材のアンテナショップに

店頭には、木材を加工する工程で発生した「端材(はざい)」をまきとして販売。
さらにお店の中も…

谷優子アナウンサー:
これはどういう?

岸田木材・岸田真志さん:
製材の過程ででた端材。商品としては売りにくい木材を、アウトレット価格で販売

谷優子アナウンサー:
おうちで何かを作る、一般の方向けに?

岸田木材・岸田真志さん:
DIY。おうち需要に対して。これまではもっと細かくして、製紙用のチップとして出していた。長さや見た目の問題で、まちまちな表情ですけど、使えるんですよ。これまでの商品は数があってようやく商品だったのを、個人であれば少ないロットで使いこなせるし、アイデアしだいでどれだけでも化けるので、こうやって提案をしている

お店には、木製の文房具やアクセサリーも並んでいる。
人気が、木のボール。握ったり、お風呂に入れたりと使い方は自由。
木材を、日常の暮らしに溶け込んだ身近なものに生まれ変わらせること。それが、岸田木材の考えるSDGs。
岸田木材では今後、ヒミブリコラボをDIYの拠点としていき、販売するだけではなく、木を生活に取り入れる方法なども伝えていきたいという。

ひみ里山杉を使ったインクは、岸田木材のWEBやアンテナショップ「ヒミブリコラボ」などで購入できる。ひみ里山杉のペンとのセットもあり、氷見市のふるさと納税返礼品にもなっている。

(富山テレビ)

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