レコードの人気が、じわじわと高まっている。けん引しているのは、レコードの魅力を再発見した若者たち。レコードを楽しむ新たなスポットなど、長野県内の事情をお伝えする。

佐野 穂乃佳さん
佐野 穂乃佳さん
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♪「地下鉄のザジ」(原田知世)

レコードから流れるのは、80年代のポップス。

聞いているのは、伊那市の会社員・佐野穂乃佳さん(23)。デジタル音源が主流で音楽配信サービスが広がる中、なぜ、レコードなのか?

佐野 穂乃佳さん:
レコードを買って、落として、針を使ってと手間はかかるんですけど、でも、その手間が楽しみの一つではあるかなと思います

ここ数年、佐野さんのようにレコードを楽しむ人が増え、人気が高まっている。

「雑音が入るアナログな部分がいい」家族団らんにも一役

業界団体が調べたアナログレコードの生産額をみてみると、1980年に1812億円のピークを迎え、その後は減少に転じ、2010年には1億7000万円にまで落ち込んだ。

しかしその後、徐々に回復し、2021年は39億円。昔とは比べようがないほど少ないものの、30億円を超えたのは実に22年ぶり。人気を支えているのは、佐野さんのような若者だ。

佐野 穂乃佳さん:
普通のストリーミングの音楽だと、確かに音の質はいいのも魅力的なんですけど、ザッザッっていうような音、雑音が入ったりするのも、アナログな部分もいいなと思いました

2年ほど前から、カフェなどでレコードをかけている様子を目にするようになったという佐野さん。音質や、レコードをかけるという行為に引かれ、2021年、思い切ってプレイヤーを購入した。

佐野 穂乃佳さん:
ボーナスで奮発して買いました

最初に買ったレコードは…

佐野 穂乃佳さん:
キャラクターのスヌーピーとピーナッツの仲間たちのジャケットに引かれて買いました

いわゆる「ジャケ買い」をしたと、佐野さんがそのレコードをかけてくれた。

♪「LINUS AND LUCY」(VINCE GUARALDI TRIO)

年季の入ったレコードもある。中には、こんなものも…

♪「ドリフの早口ことば」(ザ・ドリフターズ)

――体、動いちゃいますね
佐野 穂乃佳さん:

そう、動いちゃう(笑)。これがきっかけで結構、家族では話が沸きましたね

父親が持っていた1枚で、家の押し入れから見つかったそうだ。

佐野 穂乃佳さん:
両親が渡してくれたレコードを聞いて「あ、こんな曲あった」って、昔の曲をシェアできるのは、すごく家族のだんらんとしていい時間たと思います

最近は、レコードを出す若いアーティストも増加。こうした流れも、若者がレコードに振り向く切っ掛けになっている。

背景に巣ごもり需要・レトロブーム 「ブームで終わるのはもったいない」

専門店も増加中だ。岡谷市にオープンした「CELLAR RECORDS」は、かつて製糸業が盛んだった頃の「繭蔵」を改装した店だ。

営業初日、早速、客が品定めをしていた。

岡谷市からの客:
おしゃれだし、品ぞろえもいい感じ

佐久市からの客:
いろんなジャンルの種類があるので、見応えがある

自身もレコード好きという店長の浜さん(33)。店内で流れる曲やジャケットを通じて、音楽との出会いを楽しんでほしいと話す。

CELLAR RECORDS・浜公氣 店長(33):
音楽の「アハ体験」みたいな。「知らないけど、なんだこれ?」みたいな、そういう体験が提供できるような場所にした

人気の高まりは、オーディオ専門店にも広がっている。上田市の「audio core」を訪れた。

♪「YOU’D BE SO NICE TO COME HOME TO」(Cole Porter)

室内に響き渡る、温かみがある音。それでいて、力強く耳に届く。。

audio core・友野大介 社長:
こちらが、音がよくて非常に定評があるもので、人気のモデルです

ここ数年、レコード関連機器の販売が伸びている。

audio core・友野大介 社長:
ここ10年で比べても3倍ないし4倍ぐらいにはなっていると思いますし、それが顕著なのがこの5年ぐらいですね。意外に20代のお客さまも相談にみえられて、こちらからも「これがいいよ」とご提案したものを、割と素直にご購入いただいている方がいますね

友野社長は、プレーヤーの性能向上の他、コロナ禍の巣ごもり需要、さらに若者の「レトロブーム」などが人気の背景にあるのではと話す。

audio core・友野大介 社長:
一過性のブームで終わってもらうにはすごくもったいない。これからも長く歴史を伝えるものだと思っていますので、そういった広がり方を期待しています

若い愛好家が増加、魅力が再評価

一方、冒頭で紹介した佐野さん。車で向かった先は…

佐野 穂乃佳さん:
たまにレコードをお借りしているので、そこに向かっています

到着したのは、ダンスレッスンやイベントを開催している辰野町のレンタルスペース「&garage」。建物の中では、約4000枚のレコードを所蔵している。

オーナーは鈴木雄洋さん(30)。こちらを経営するほか、地域おこし協力隊員として町の「空き家バンク」を運営している。飾ってあるレコードは、その「空き家」にあった。本来、捨てられるはずだったものだ。

&garage・鈴木雄洋さん
&garage・鈴木雄洋さん

&garage・鈴木雄洋さん:
ほとんどが地域から出てきたお宝たちです

♪「FANTASY(Puffy's Club Mix)」(Mariah Carey)

この日は機材の整備中だったが、利用者であれば自由にレコードを聞くことができ、交流の輪も広がっている。

佐野穂乃佳さん
佐野穂乃佳さん

佐野さんは会社勤めの傍らダンスの講師もしていて、この施設を利用した際、レコードもよく借りていくそうだ。

&garage・鈴木雄洋さん:
ジャケット見てビビッときたやつを…

佐野 穂乃佳さん:
毎回そうですよね、ジャケットで引かれて借りてますよね

&garage・鈴木雄洋さん:
レコード独特のノイズが好きな人がいれば、レコードでしか残っていない音源とか、ただ単純に音を聞くのが好きっていうのもOKですし。手ぶらで来てもらって体験してくれたら、もっと幅が広がる人もいるんじゃないかなと思います

県内でもジワリと高まるレコード人気。若い愛好者が増え、魅力が再評価されている。

(長野放送)

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