FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部ネタプレ」。今回は、経済部・内閣府担当の井出光記者が「GDP公表の裏側」を伝える。

ほぼ毎回速報…なぜ重要?GDP

井出記者:
8月15日、2022年4月-6月期のGDP=国内総生産が公表されました。
物価変動の影響を除いた実質でプラス0.5%で、この勢いが1年間続いた場合の年率換算ではプラス2.2%と、3期連続の伸び。「個人消費」が大きく伸びた形でした。
良い数字だったのですが、当たり前といえば当たり前の結果で、3月にまん延防止等重点措置が解除されたことを受けて、我慢していた外食や旅行、百貨店での買い物などにみんながお金を使ったからです。

榎並キャスター:
いわゆる”リベンジ消費”ですね。

井出記者:
このニュースでよく目にするGDP。一言で言うと「一定期間に日本が”儲けた”お金」です。日本は今回、年間542兆円を突破して、新型コロナが流行する前の水準を上回りました。これは、アメリカ、中国に次いで世界第3位です。

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この542兆円の内訳を見てみると、半分は「個人消費」、つまり私たち個人が使うお金です。ほかは、企業や政府が使うお金や、輸出金額などを足したものになります。

井出記者:
GDPは3ヶ月ごとに年間4回発表されていて、どれだけ増えたか・減ったかを、実はほぼ毎回速報で伝えています。なぜ速報を打つほどGDPは重要なのか。それは、国の経済が成長しているのか、衰退しているのかが一目で分かる、もっとも基礎的な指標だからです。

GDPの数字を守る”鉄壁のディフェンス”

このGDP、だれが計算しているのかというと・・・内閣府の統計スペシャリストたち、約30人です。各省庁が集めた最新の数字を、約2週間かけてまとめて計算してはじき出します。こうして出たGDPの数値は”トップシークレット扱い”になります

榎並キャスター:
悪用する人がいるから、でしょうか?

井出記者:
そうです。GDPは株価に影響する可能性があるので、悪用される恐れがあります。GDPが事前の予測より良かったり、悪かったりすると、日本の株を買う人が増えたり、減ったりする。つまり株価が大きく動く可能性があり、事前に漏れると不正が行われるかもしれません。

そこで、GDPの事前漏洩を防ぐ”鉄壁のディフェンス”が敷かれているのです。

まず1つ目の壁、「GDPの数字が確定するのは公表当日」
担当者によると、あえて最終的な数字のとりまとめを公表の数時間前にやっているそうです。直前までGDPの数値そのものが存在しない、つまり、漏洩しようがない状態になっているという訳です。

2つ目の壁、「記者を足止め」です。実際に記者に配られる取材案内があります。

「会場は8:30に閉鎖」「8:50までは一切の通信が出来ません」と書いてあります。さらに、「職員が廊下及びエレベーターホールを監視します」とまで書いてあります。

なぜこんなに厳しいのでしょうか。
GDPの発表時刻は午前8時50分です。GDPの発表は非常に複雑で、多くの数値が登場します。内閣府は誤った報道が出ないように、公表の20分前から希望するメディアを集めて説明を行います。この説明会で情報漏洩がしないように、記者は20分間、部屋の中で”監禁状態”になるのです。

さらに、この説明会には「走らない、叫ばない、人を押さない」というルールがあります。

榎並キャスター:
避難訓練みたいですね。

井出記者:
これは公表時間になると部屋をダッシュで出て、メールや電話で数字を本社に連絡する記者が多かったからです。このように超厳格に守られているGDPですが、過去には公表前に漏れて問題になったことがありました。

過去には大臣がうっかり漏洩

今から10年以上前ですが、民主党政権時代の2009年、当時の直嶋経産相が、ぽろっと公表時間前に業界団体にGDPの数字を話してしまったのです。

直嶋経産相は「8時50分発表と知らなかった」と謝罪し、当時の鳩山首相は「うかつで遺憾」と批判しました。

「物価高」と「コロナ」…7月以降のGDPに陰り

GDPがいかに大事に扱われているか伝えましたが、今後のGDPがどうなるかが一番重要ですよね。今回は「3期連続のプラス、コロナ前の水準を上回る」と言われても、実感がない人が多いと思います。

今後のポイントは2つ、「物価高」と「新型コロナ」です。

今、物価がどんどん上がっていますが、それだけお金を使って物を買うことになるので、GDPは上がりそうに見えます。例えば、1個100円のタマネギが売れるのと、値上がりして200円になったタマネギが売れるのとでは200円の方が大きなお金が動きます。では、その分GDPが増えるかというと…違うんです!

「実質GDP」の場合、物価の変動を除くというルールで計算されるので、タマネギが200円に値上がりしてもGDPは増えません。それどころか「高くなったものを買うのをやめよう」という動きが強くなると、消費が減ってしまいます。その分GDPが減るので、賃上げが伴わないと物価高はGDPを押し下げます

7月の働く人の景気の実感の調査(景気ウォッチャー)では、スーパーで「商品の単価は上がっているのに客1人あたりの買い上げ点数は減っている」という悲鳴が聞かれました。

あとは、やはり新型コロナ。7月からはいわゆる“第7波”、感染の再拡大で、以前ほどでないにしても外食や旅行にまた陰りが出ています。

物価高と新型コロナの影響が、7月以降のGDPには色濃く出そうです。

榎並キャスター:
GDPが上がっても、景気が上向いているという実感が伴うような状況ではないと。物価高、コロナと問題は山積しています。今後の経済対策の舵取りが重要ですね。

橋下徹氏:
GDPというのは結果です。経済というのは、そこに至る国民の経済活動のエンジンの熱。エンジンが動いていなくてもGDPの数字というのは確保できるんです、財政政策で。ボーンと税金をばらまけばその分GDPは上がる。ただ、それでは景気のエンジンはまわらないから、日本経済のエンジンを暖め、まわしていく政策が重要ですよね。

(「イット!」8月15日放送より)