自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家が注目したのは、こんなお話。
「おもちゃを買ってほしいと泣きわめいたり、気に入らないことがあると騒ぎ回る…人目が気になってついつい要求通りにしてしまうけれど、まるで“王様”のようにふるまう子どもたちに困っている…」
自分の要求が通らないと泣いたり、外出する度やりたい放題な子どもたち。周りの目を気にして「早く泣きやんでくれるなら…」とついつい要求されるままにおもちゃを買ったりと、気がつけばパパママの方が子どもに従っている?
ネット上ではそんな子どもを指す「王様こども」という言葉もあるようだけれど、そんなやりたい放題して周囲を困らせる子どもたちとは、どう付き合っていけばいいの?育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
「言葉と行動の矛盾」を減らして!
――「王様こども」という言葉はよく聞く?こういう子どもは多いの?
“王様子ども”という呼称は、私自身ははじめて聞きましたが、それがどういう状況を指しているのか、瞬間的にわかりました! 私の相談室でも多く見受けられるからです。
私の場合はいつも「お家の中で、子どもが王子様、王女様になっている状態」という表現を使っていますが、“王様子ども”とは、言い得て妙ですね。
――要求を通すためにやりたい放題…こんな状態になってしまう理由は?
理由は、過去にその手段が有用だと学習してしまったからです。つまり、泣いたらママが折れてくれた、暴れたら言うことを聞いてくれた、大声を出したら思い通りになった……。このような経験をしたことが主な理由です。
強い力で押して、結果的に思いが叶うと「よし、これは成功だ!」とインプットされ、次回もっとも手っ取り早い手段として使われることになります。人間は自分が起こした行動に対し、良い報酬が得られると、そこに行動の強化が起こるため、同じことを繰り返すようになるのです。
とくに気質的に強く粘るタイプの子は、親がダメと言ってもしつこくあきらめない傾向があるため、親が根負けしてしまうことがよくあります。そういう場合も「これだけ押せば折れてくれるんだ」という学びになりやすく、それが日々積み重ねられると「子どもが王子様、王女様になっている状態」を作ってしまいます。
――“王様子ども”はどんな風に叱る・教えるのがいいの?
その子にとっては、パパやママの言葉はもはや“ルール”として映っていないことが多いです。
どう理解しているかと言えば「パパ・ママはテレビを消しなさいと言っているけれど、それは絶対ではない。なぜなら、ボク(ワタシ)がヤダヤダと大騒ぎすれば消さなくて済むからだ」というような感じです。つまり、子どもの泣き叫び度合いがその後の方向性を決めるルールと化してしまっているわけです。
これを解除するためには「泣いても思い通りにはならなかった」という再学習が必要になります。その際、親の言葉は大事ですが、最重要ではありません。なぜなら、子どもは自分の身に起こったことから一番学ぶからです。
どういうことかと言うと、たとえば「テレビを消しなさい」と言っても、結果的に泣いて交渉している間、ずっと画面がついたままだったら、それはその子にとって“成功体験”となります。17時に消しなさいと言われたのに、泣き続けたことで、17時半になっていたら、結果的に30分よけいに見ることができたということになるからです。親が言っていることと、親が実際にやらせてしまっていることでは、後者が優先されるので、言っている言葉とやっている行動の矛盾を作らないことが非常に大事になります。
テレビで言えば、親がリモコンを管理することも1つの案ですし、「今テレビを消せたら、食後もYouTubeを1つ見られる」「けれど、消せなければ、食後はYouTubeが見られない」というルールを示し、実際に消せたら見れて、消せなかったら見れないという経験を繰り返すというのもまた1つの作戦でしょう。だんだんと「言うことを聞いた方が得だ」と学んでくると、力で行使する頻度が減ってきます。
きっとだれでも「自分の思い通りに世の中が回ったらいいな」と思っていますが、でもどこかで制御することも必要です。小さい時に自由度が高すぎる環境にいると、あとでルールを設けることが大変になり、そうなってしまうと、子どもを傷つける言葉で罵倒したりと悩むことが増えてしまいます。
子どもに泣かれると弱いという方も、面倒くさいからつい折れてしまうという方も、先々もっと大変になってしまうので「もしかして、王様子ども状態かも……」と感じたら、その段階でテコ入れをすることを強くおすすめします。
もしかしてウチの子は「王様こども」?と思ったら、まずはおうちで設けているルールを見直してみるのがいいかも。
「おもちゃは買わない」と決めてからお店に行っても、大きな声で泣いておもちゃを買って!とお願いしたら、買ってもらえた…パパママからすると「周りの人に迷惑になってしまうから、今日だけは特別に…」と“特例”のつもりでしたことが、子どもたちの中では「ルールを守らなくても大丈夫だった!得した!」「泣いたらルールを守らなくてもいいのかも!」という“成功体験”としてインプットされてしまうのだ。
「王様子ども」に振り回されつつも「でも、子どもの要求をのんだ方が楽だし…」と思ってしまうパパママは、まずは毅然とした態度でルールをしっかり守らせること。一度決めたルールを「今日だけは特別…」と撤回せず、「言っている言葉とやっている行動の矛盾」をなくすよう頑張ってみてほしい。
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(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)