自由気ままな子どもたちに、いつも親はハラハラドキドキ、時にもやもや。
「笑った!困った!」…でもウチの子はどうしてこんなことするんだろう。その行動の裏には、知られざる“子どものココロ”が隠されているはず。
今回、元気なココロちゃんとマナブくんきょうだいの育児に追われる小木(こぎ)さん一家が注目したのは、こんなお話。
「赤ちゃんがおもちゃやおやつを『どうぞ』してくれたけれど、受け取ったら泣かれてしまった…」
ニコニコ笑顔で「どうぞ」と色々なものを差し出してくれる子どもたち。「ありがとう!」と受け取ったは良いけれど、なぜか直後に大泣き!ましてや、渡されたお菓子などをうっかりパクリと食べてしまったら、もう取り返しがつかない…
一体どうして?と調べてみると、実は「受け取ったら、すぐに返してほしい」という気持ちがあるという話も。
子どもから「どうぞ」されたら、「ありがとう!」と受け取るだけではなく、すぐに返してあげないとダメなの?普通に受け取ってもOKになるのは、何歳くらいから?
子どもたちの「どうぞ」に隠された気持ちについて、育児に役立つ“子育て心理学”を発信している公認心理師・佐藤めぐみさんにお話を聞いた。
「どうぞ」の意味を理解するのは時間がかかる
――子どもの「どうぞ」は「すぐ返してほしい」…これって本当?
そうですね、あげるつもりはなく、「ちょうだい→どうぞ→ありがとう遊び」のように捉え、そのやりとりを楽しんでいる思いの方が強いでしょう。
基本的に、親は赤ちゃんが「どうぞ」と何かを渡してくれたら、「なんて優しい子!」と感じ、自然と顔が笑顔になりますし、ほめたくなります。赤ちゃんは親の笑顔は大好きなので、“どうぞごっこ”は赤ちゃんにとって楽しい遊びの1つなのだと思われます。
赤ちゃんからしたら、自分が「どうぞ」したら、ママが「ありがとう」、そしてすぐにママが「どうぞ」と返してくれるものだと思っている、それなのに「どうぞ」が来ないぞ、ということで泣いてしまっているのではないでしょうか。
――どうして「どうぞ=あげる」にならないの?
小さいうちは、まだまだ言葉の意味を理解して使っているとは限らず、言葉は後づけであることも非常に多いものです。
犬も見かけるたびに、パパやママが“ワンワン”と言うから、だんだんと「あれがワンワンなんだ」と理解していくのですよね。ましてや、「どうぞ」という言葉は、ワンワンと違って、目で捉えることができる形があるわけではありません。子どもは基本的に“視覚で捉えられるもの”の名称を覚える方が得意で、抽象的な言葉は苦手です。
ですので、「ワンワン」を覚える以上に、「どうぞ」というのは本当の意味を理解するには時間がかかるのです。
――では、「あげる」の意味の「どうぞ」ができるようになるのは何歳くらいから?
「どうぞ」=「あげる」という動作自体は、1歳前後でもできる子がいます。
「どうぞ」という言葉はまだ出ませんが、「どうぞどうぞ」と言わんばかりに、次から次へと物を持ってきては、親に渡していくのです。上記のように泣いてしまう子もいれば、どうぞばっかりの子もいるということですね。当然ながら、遊びの一環です。
「どうぞ」=「あげる」を言葉として理解しつつ、なおも実行できる年齢となると、これは個人差があると感じています。また、あげることはできないけど(大好きなお菓子)、貸すことはできる(おもちゃ)というように、行動の重みでも変わってきます。
性格的に自分の物にものすごくこだわりがあるお子さんであれば、3、4歳でも譲れませんし、大きなこだわりがない子でも、自分にとって大事な物であればあるほど「あげる」ことはできません。その物がその子にとってどれくらい大事か、あとは性格的にどれくらい頑なか、このあたりがあげられるかどうかの判断につながるのでしょう。
一方、家庭の中で「どうぞ」「ありがとう」という穏やかな空気があると、物を譲ることへの学びが早いようにも感じています。ですので、もし「うちの子“どうぞ”ができない」と困っていたら、パパママ間で譲り合う姿を見せていくことは大事なポイントだと思います。
子どもたちが「どうぞ」と何かを渡すとき、それは「あげてもいい」という気持ちで渡しているのではなく、「相手に渡す→相手が受け取って喜ぶ」という行動を楽しむ“ごっこ遊び”としての意味が強いそう。
子どもたちから「どうぞ!」と何かを渡されたときは、すぐに「もらってもいいのかな?」と思わずに、まずは「ありがとう、それじゃあママからもどうぞ」と“返却”して、遊びに加わってみるのが良さそうだ。
そんな子どもたちの「どうぞ」が本当に「あげる」の意味を持つようになる年齢は個人差があるそうだが、おうちの中で譲り合いのやりとりが頻繁にあると、子どもたちが「“どうぞ”は“あげる”の意味なんだな」とピンときやすいかも。
おもちゃやお菓子など、子どもたちの好きなものを「どうぞ」し合う“ごっこ遊び”を楽しみつつ、生活の中でパパママが見本になってあげるのが良いだろう。
あなたの投稿が漫画になる!エピソード募集中
「聞きコミ PRIME online」では皆様からの「育児あるある」エピソード投稿をお待ちしています。「育児あるある」に隠された子どもたちの気持ちを探ってみませんか?
・「もういらない」と言ったから代わりに食べたおやつ。「やっぱり食べる!」と言われて大慌て…同じものを用意しても「さっきのがいい!」と泣かれて大苦戦!
・無くしたと思っていたスマホを冷蔵庫の中から発見!なんでここに入れちゃうの!?
などなど、あなたの投稿が漫画になるかもしれません。
※入力された内容は記事で紹介させて頂くことがございます。
※改めて取材をさせて頂く場合もございます。
(解説:佐藤めぐみ/公認心理師)
英・レスター大学大学院修士号取得・オランダ心理学会認定心理士。欧米で学んだ心理学を日本の育児で取り入れやすい形にしたポジ育メソッドを考案。アメブロの「ちょっと子育て心理学」(http://ameblo.jp/la-camomille/)にて発信中。
(漫画:さいとうひさし)