7月、参議院議員選挙が行われた。今回は、障害者と選挙について取材した。

投票券があっても投票に行けない

岡山市にある自宅のベッドに横たわり、候補者の訴えを見る女性。
約20年前に交通事故で大腿骨などを折る重傷を負い、現在は、ほぼ寝たきり。

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ほぼ寝たきりの女性:
(体の状態は)日々悪くなっている。深刻な状態。
(Q.これはなんですか?)
(選挙の)投票券です

(Q.過去の選挙も含めて?)
ほぼ寝たきりの女性:

そうです。こんなもの一方的に送り付けてこられても、投票に行けない状態

病気や障害で投票所に行けない人のために、自宅にいながら郵便で投票できる制度がある。
しかし、対象となるのは、重い障害を持つ身体障害者手帳1級2級を持つ人たちだけで、4級のこの女性には適用されない。
女性は、2020年の岡山県知事選挙で等級を理由に投票できなかったのは、法の下の平等に反しているとして、現在 損害賠償を求めて国と裁判で争っている。

ほぼ寝たきりの女性:
わたしの1票は小さな1票かもしれないけど、数がいっぱい集まることによって、初めて国民の意見として思いが伝わる。それを奪う権利は行政にはありません

投票時における情報のバリアフリー化へ

一方で、障害者が投票しやすい環境作りが進んでいないわけではない。

岡山市中区の期日前投票所。
岡山市では、投票時における情報のバリアフリー化を図ろうと、例えば視覚に障害がある人のために、このように立候補者名を点字で表記したものを用意したり、投票時に点字器を貸し出し、自分で点字を打って一票を投じられるようにするなど、障害がある方のためにさまざまな対応を取っている。

この日、家族に付き添われ期日前投票所を訪れたのは、視覚に障害がある川田忠茂さん。県視覚障害者センターの所長を務めている。
毎回、点字器を使って1票を投じている川田さん。自分で投票することにこだわりたいという。

岡山県視覚障害者センター・川田忠茂所長:
「(投票という)義務が果たせた」イコール「社会参加しているな」と思います。障害がある方もない方も、みんな平等だと思う

また、大型商業施設に設けられた期日前投票所は、店内の段差がなく、車いすでも利用しやすいため、利便性が高まっているという。

車いすで投票に訪れた人の家族:
(大型商業施設だと)段差がないですね。フロアも平らだし、広さもあるので楽ですね。普通の小学校に(投票に)行くよりは、段差が少ない気がします

大音量で響き渡る街頭演説も「無音の演説」

一方、立候補者の訴えは、障害者に届いているのだろうか。

岸田首相:
世界は大きな時代の曲がり角にある

選挙戦終盤の7月7日。JR岡山駅西口で、岸田文雄首相が街頭演説を行った。
首相の訴えを間近で見たいと訪れた、聴覚に障害がある女性たちには、大音量で響き渡る街頭演説も、「無音の演説」「無音の拍手」だ。

訪れた聴覚障害者:
(街頭演説に)手話通訳を付けて下さい

(Q.演説の内容は分かりましたか?)
訪れた聴覚障害者:

わからない。情報が全くなくてわからない。手話通訳があれば内容がわかる。

訪れた聴覚障害者:
私たち市民にとって、選挙の権利とは、どういう意味なのかと思った

政見放送では、手話通訳に対して公費負担があるものの、街頭演説では候補者側の負担となる。
岡山県内では、今回の参院選で手話通訳士が街頭で通訳したのは3件しかなかった。

一方、視覚障害者は…

(Q.今、手に持たれているのは何ですか?)
岡山県視覚障害者センター・川田忠茂所長:

参議院選挙の音声版の選挙公報ですね。こちらが点字版の選挙広報です

各世帯に配付される選挙公報には、視覚障害者のための点字版と音声CDがある。
しかし、事故や病気などで後天的に失明した人には点字を読めない人が多く、音声CDも認知度不足から十分に行き渡っていないのが現状。

岡山県視覚障害者センター・川田忠茂所長:
(音声版選挙公報の)数分で自分の言いたいことが全部言えているとは思わない。(訴えの)エッセンスだけなので、判断する材料も正直少ないと思う。ホームページなどに行けば、もっと詳しい主張が述べられていると思うが、ホームページを見られる人ばかりではないと思うので。投票しやすくすればするほど、投票率は上がっていくと思う。ということは国民の本当の声が届く

国民1人ひとりの声を届ける貴重な機会となる選挙。
誰にでも平等に与えられる1票が、しっかりと行使されることが求められている。

(岡山放送)