新型コロナウイルス、特に、現在のオミクロン株「BA.5」による急激な感染拡大で、全国的に医療提供体制のひっ迫が指摘されている。 発熱外来はパンク状態のため、症状が出た場合でも「受診前にまず電話で相談を!」と呼びかけられている。 

自分の症状を、どう見極めるのか。電話相談で伝えるべきポイントを、東京都における新型コロナウイルス対策の「キーマン」で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長に聞いた。

病院に電話 伝えるべき事は 

「見ていると、若い人でも、結構、苦痛は強い。例えば、のどの痛みが強いとか」 。大曲氏によると、若い人や子供でも「のどの痛みが強く食事が取れない」などと訴える人が多いという。

「これだけ流行すると、やはり、そういう強い症状の人は、実数としては増えますよね」。 第6波でも、のどの痛みを訴える患者はいたものの、第7波では、さらに増えたという。そして、のどの痛みだから「大丈夫だろう」と高をくくっていたところ、実際に検査を受けた結果、「空気の通り道が狭くなっていた」ケースもあるとのこと。

このため、医療機関に電話相談する場合は、特に「のどの痛み」「息苦しさ」を伝えるべきだという。 

大曲氏は、東京都のコロナ対策専門家会議のメンバーだ。
大曲氏は、東京都のコロナ対策専門家会議のメンバーだ。
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自宅で安静 目安は「これまでの経験」 

「自分が経験したことのある”程度”の風邪症状だったら、自宅で安静にすればいいと思います」。 一方で、受診するかしないかの目安は「自分の経験」だという。 これまで、風邪をひいた時と同様の症状なら、自宅で安静にしていれば良いとのこと。 

第1波と第7波の違いとは 

「純粋に肺炎がひどくて、『酸素が要る』という人は減りました」。 第1波では、病状が悪化し、酸素投与が必要な人は、全体のおよそ20%を占めた。ところが、今年に入ってからの第6波、第7波では、全体の1%に満たないとのこと。 確かに、第1波のころには、血中酸素飽和度を測る機器の売り切れが目立ったが、現在は、簡単に手に入る。

しかし、大曲氏は、「高齢者の方がかかると、やはり弱り具合は尋常じゃないんです。持病があると、それも悪化して、結局、入院が必要となります」 と述べ、油断は禁物だとクギを刺す。やはり、高齢者や基礎疾患のある人の感染リスクは、忘れてはいけないのだろう。 

第1波と比べて、第7波では、酸素投与が必要な人は激減しているという。
第1波と比べて、第7波では、酸素投与が必要な人は激減しているという。

“風邪”症状でも病院に来るワケ 

「休業の届けをしなければいけないので、手続きをして欲しいという人はいる訳ですね」 。医療提供体制のひっ迫が叫ばれる中、”風邪”程度の症状であっても、病院を訪れるは多いという。

なぜならば、会社を休むためには「罹患証明書」を入手する必要があるからだ。大曲氏は「書類をもらうために、職場に届けを出すために、『病院に行かなきゃ』という人が減れば、病院・診療所では、多少、外来患者を診る余裕ができると思います」 と訴える。

コロナ感染者数「世界一」となった日本だが、一方で、死亡する人の数は、依然、低い水準だ。医療機関の負担を減らし、必要な人に、確実に、医療を提供できるようにするためには、まずは、自分の症状を、冷静に、かつポイントを外さずに見極めることが重要だろう。

(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)

社会部
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今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。

小川美那
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「お役に立てれば幸いです」 見てくださる皆さんが“ワクワク&ドキドキ”しながら納得できる情報をお伝えしたい! そのなかから、より楽しく生き残っていくための“実用的なタネ”をシェアできたら嬉しいなあ、と思いつつ日々取材にあたっています。
フジテレビ報道局社会部記者兼解説委員。記者歴20年。
拉致被害者横田めぐみさんの娘・キムヘギョンさんを北朝鮮でテレビ単独取材、小池都知事誕生から現在まで都政取材継続中、AIJ巨額年金消失事件取材、TPP=環太平洋経済連携協定を国内外で取材、国政・都政などの選挙取材、のほか、永田町・霞が関で与野党問わず政治・経済分野を幅広く取材。
政治経済番組のプログラムディレクターとして番組制作も。
内閣府、財務省、金融庁、総務省、経産省、資源エネルギー庁、農水省、首相官邸、国会、財界(経団連・経済同友会・日商・東商)担当を経て現在は都庁担当。