西九州新幹線の開業まで2カ月を切った。新幹線による経済効果への期待がある一方、これまでの日常生活に大きな支障が生じるマイナス効果があるのも事実。
特急列車がなくなり、隣県への通学が難しくなるという苦悩を抱えている大学生を取材した。

西九州新幹線開業まで2カ月…通学が片道2時間から3時間に

佐賀・鹿島市在住の中村弘一郎さん(18)。

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川浪沙貴記者:
朝、結構早いですね?

中村弘一郎さん:
早いですね

川浪沙貴記者:
毎朝、この時間?

中村弘一郎さん:
(特急かもめ)1号に乗らないと1限に間に合わないので

この春、大学生になった弘一郎さんは、肥前鹿島駅から特急列車に乗り、長崎県の大学に通っている。1限目から講義がある毎週金曜日は、始発の特急列車に乗らないと間に合わない。

中村弘一郎さん:
きょうみたいにちょっと早く(講義が)始まると、早く来ないといけないのでバタバタ

JR浦上駅からのバスと徒歩も含めて、片道2時間ほどかけて学校に向かう。この日は、1限目の講義が通常より早く始まるため、足早に教室へ向かった。

弘一郎さんが通うのは、長崎・長与町にある長崎県立大学・シーボルト校。大学では、情報技術を学んでいる。入学して3カ月あまり…弘一郎さんは、いま大きな問題に直面している。

中村弘一郎さん:
通学の足がなくなっちゃうと、通えなくなっちゃうので。わたしが生まれてきて18年ずっと「白いかもめ」と「黒いかもめ」は駅で見てきたので、来なくなるというのが信じられない

新幹線開業後、肥前鹿島駅から長崎方面へ23本あった特急列車は廃止される。

中村弘一郎さん:
うちの通っているところが鹿島。新幹線ができたら、特急が止まらなくなっちゃうから

友人:
え?

特急列車がなくなると、今までより1時間早い時間の普通列車に乗り、バスを含め3回乗り換えをし、片道3時間かけて通学しなければ1限目に間に合わない。

中村弘一郎さん:
3学期からは毎日1限から始まることになるので、1限目の授業を途中から参加するか、参加できないみたいな感じになって単位を最悪落としてしまう

「素直に喜べない」 新幹線開業の影響は家庭にまで

しかし、これは弘一郎さんだけの問題ではなかった。

父・中村安弘さん:
(新幹線は)歓迎したいのに素直に喜べない。自分の家庭の方にまで影響している

そう話すのは、父・安弘さん。家族会議を繰り返し、新たな通学手段を考えている。新幹線開業後、長崎方面に向かうための最寄り駅は、新幹線の嬉野温泉駅になるというが…

父・中村安弘さん:
午前7時3分に武雄温泉駅を出発して、嬉野温泉駅をなんと通過する。かもめ3号に午前7時49分に乗車すると、長崎着が午前8時14分なので…

長崎駅からも乗り換えが必要なので、嬉野温泉駅始発の新幹線では1限目に間に合わない。
そこで考えているのが、父・安弘さんが長崎・大村市まで自家用車で送り、新幹線もしくは快速に乗って通学する方法。
しかし、自宅から大村市までは約30km。山を越える必要があり、その後、武雄市の職場に向かう父・安弘さんも始業時間ギリギリになってしまう。

中村弘一郎さん:
大村まで車で行くのは、わたしも大反対

父・中村安弘さん:
かもめ1号が止まってくれれば全然何も問題なかったが、そこが今回通過するということで非常に困っている

1人暮らしも考えたが、家賃や食費、光熱費で月に8万円はかかり、現在の特急や新幹線の定期代と比べても出費がかさんでしまう。

「このままだと遅刻する」JR九州へ問い合わせるも明確な回答得られず…

答えが見つからない中、弘一郎さんはこんなことも…

中村弘一郎さん:
6月にJR九州側にメールで問い合わせた。新幹線のかもめ1号が嬉野温泉駅に止まらないから、止まらないと(大学に)通えなくなってしまうから、止めてほしいと要望した

しかし、JR九州からは、明確な回答は得られなかったという。

中村弘一郎さん:
わたしができることと言ったら、声を上げることくらいしかできない

父・中村安弘さん:
今後、息子のように長崎に通学する人、通勤する人が新しく出てくるかもしれないので、その皆さんが利用しやすいようにしてほしい

新幹線の開業にともない、長崎県が通勤・通学圏内になるという人がいる一方、これまで肥前鹿島駅から長崎に通っていた人は、通勤・通学の足を奪われてしまうことに。

中村弘一郎さん:
自分の学びたい学問を優先して大学を選ぶだろうから、(鹿島市から)長崎を選ぶという選択肢を絶やしてほしくない

(サガテレビ)