ウィンブルドン(全英)選手権<7月10日決勝・イギリス>の車いすテニス男子シングルスで初優勝した、国枝慎吾(38)が21日、都内で行われたイベント「スポGOMI×UNIQLO」にゲストとして参加。

「余韻は結構感じていますね。それだけウィンブルドンにかける思いは強かったですし。全てコンプリートできて気持ちがいい」と、ウィンブルドン初優勝の喜びを語った。

唯一優勝がなかったウィンブルドン

6月の全仏オープンに優勝し、4大大会(全豪、全仏、全英、全米)のシングルスでは通算27勝。

世界で圧倒的な強さを誇る国枝が、これまで手にしていない唯一のタイトルが、ウィンブルドン優勝だった。

ウィンブルドンで初優勝した国枝慎吾(国枝慎吾Twitterより)
ウィンブルドンで初優勝した国枝慎吾(国枝慎吾Twitterより)
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ウィンブルドンのシングルスは、2016年から開催された比較的新しい大会であることに加え、ウィンブルドン特有の「芝のコート」での練習環境が、国内になかったことも要因として挙げられる。

去年、地元東京でのパラリンピック金メダルという「特別なもの」を手に入れた。

今年4月の取材では「残るはウィンブルドンというところは、僕のキャリアの中では重要な意味を持っていると思いますね」と強い口調で語った国枝。

その言葉は、最後の大きなタイトルを渇望する、強烈な思いを感じさせた。

国枝には手ごたえがあった。

1月の全豪オープン決勝で「キャリアでベストなプレーができた」と、まだまだ進化の途中であることを自覚。それ以降も好調をキープし、6月の全仏オープンも優勝。

「取るなら今年しかない」と、自分自身に言い聞かせながら、メンタルも研ぎ澄ませ、自信を持って臨んだウィンブルドンだった。

生涯ゴールデンスラム達成

決勝の相手は、地元イギリスのヒューエット。

常に相手にリードされる苦しい展開も、「芝でのプレーというのは長年課題にはしてきたけど、だいぶ答えも出たところがあって、今までの芝のプレーで、間違いなくキャリアベストなプレーができたと思います」とプレー、メンタルとも最高のパフォーマンスを出せたことで、大逆転優勝を飾った。

ウィンブルドンで初優勝した国枝慎吾(国枝慎吾Twitterより)
ウィンブルドンで初優勝した国枝慎吾(国枝慎吾Twitterより)

これで、2007年の全豪オープン初優勝以来、4大大会全制覇で、パラリンピック金メダルを合わせた「生涯ゴールデンスラム」も男子で初めて達成。

「パラリンピック金メダリスト」であり、「ゴールデンスラマー」にもなった国枝。

記者から「どっちの肩書で呼ばれたい?」の質問には「それはお任せします。でも気持ちがいいですね」と笑顔を見せた。

絶対王者も、まさかの大敗!?

イベント「スポGOMI×UNIQLO」
イベント「スポGOMI×UNIQLO」

この日の「スポGOMI×UNIQLO」は、チーム制で、30分間に拾うゴミの重量などを競う、スポーツ感覚のイベント。

「負けず嫌いの性格が出ちゃうんで今日は頑張りたい」と意気込んだ国枝チームだが、結果は0.21kg。優勝したチームの5.4kgには、はるか及ばない大差の敗戦に「結構拾ったかなと思ったんですけど…」と頭をかいた。

イベント「スポGOMI×UNIQLO」
イベント「スポGOMI×UNIQLO」

テニスの絶対王者も、この日ばかりは、久しぶりの敗北感を味わったようだ。

年間グランドスラムへ意欲

ただ、次への戦いはもう始まっている。

8月末の全米オープンに照準を合わせ、すでに練習も開始している。

イベント「スポGOMI×UNIQLO」
イベント「スポGOMI×UNIQLO」

「なかなかこんなチャンスもないと思うので、どうせだったら、最後の全米オープンまで制して、年間グランドスラムといきたいですね」と1年間で全ての4大大会を制する、年間グランドスラムに意欲を見せた。

(取材・文/スポーツ部パラスポーツ担当:戌亥芳昭)