数字上では、止まらない感染拡大。第7波突入とも言われていますが、政府としては「行動制限の必要は、今のところない」とする一方で、職場や学校では、制限をより強化しているという逆転現象が起きています。

第7波で感染者増加「全国旅行支援」は延期に

まず、第7波に入った東京の感染者数を見ていきます。

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12日、東京都の感染者数は、3月16日以来となる1万人超えとなり、重症者は12人。
次に全国の感染者数を見ていきます。

12の県で過去最多を更新し、12日の感染者数は7万6012人、重症者は83人でした。
そんな中、今後の感染者について、新たな試算が発表されました。

感染拡大のスピードを示す増加比が11日時点と同じ場合、1日あたりの感染者数が
7月20日ごろには、2万人弱、そして、27日ごろには4万人超という結果に。
さらに、増加比が今の速さで上昇した場合、19日ごろ3万人 、25日には10万人超というデータも。
東京都医師会の猪口副会長は、「(入院患者を)本当に医療が必要な人に絞らないと、もしこの数字になったら、乗り切れない」と話しています。

そんな中、政府は、7月前半の開始を目指していた、「全国旅行支援」の開始を延期する方針を固め13日にも最終決定し、公表する見通しです。

しかし政府は、旅行支援に関しては延期の方針を示す一方で、基本的な方針としては「行動制限しない」としています。

感染者1万人超「行動制限なし」も職場のルールは厳格

10日、岸田首相が「新たな行動制限は考えていない」としたのを皮切りに、11日には政府分科会の尾身会長が「今の段階では必要ない」12日、さらに山際経済再生大臣も「今の段階では考えていない」とここ数日、相次いで行動制限しない方針が示されています。
これまでと異なり、この夏は厳しい「行動制限」が無いなか、SNS上ではこんな声が出てきています。

SNS上の声:
勤務先のコロナ対策、厳しすぎる…

SNS上の声:
会社の自宅待機者がかなり多い…仕事にならない

SNS上の声:
会社から友人との外食を禁止された

政府は現時点では飲食店の制限などはしないとしているにも関わらず、職場や学校などでは、今も厳しい制限が敷かれているというのです。
では、コロナ禍3年目、会社や学校などのルールはどうなっているのでしょうか。

濃厚接触者の定義とは?

実は今年3月から政府が定義する濃厚接触者の条件は変わっているんです。
その条件は大きく分けて2つ。1つ目は同居世帯、同居している中の1人がコロナに感染したら、全員が濃厚接触者に該当します。2つ目は、マスクなどの感染対策をせずに、約1m以内で会話や食事を15分以上接触している場合、濃厚接触者となります。
加えて、会社、中学、高校、大学などの場合は、感染した本人が接触者に連絡し、無症状であれば、行動制限は不要とする一方で、「リスクのある行動は、7日間控える」必要はあるとしています。
ただ、この新たな定義が周知されていないのか、より厳しい制限をしている会社が意外と多いようです。
こうした中、12日の全国知事会ではこの濃厚接触者の条件をもっと緩和すべきたとして、
こんな提言も出されました。

宮城県の村井知事は「ワクチン3回接種した人は濃厚接触者にならない、などの見直しがあってもいいのではないか」と話しています。

東邦大学・感染制御学 小林寅喆教授:
3回目を打ったからといって、感染しないわけではないので、そういった意味で感染者ということに関しては、濃厚接触者も一定期間の行動制限は必要だと思います。
また、打つことによって、重症化を防げるという効果はでていますので、そういった意味でこれから濃厚接触者の隔離期間などをどうやって考えていくかが今後のポイントだと思います。

政府の方針や、知事会の動きとしては、制限を緩和する方向で進んでいるようですが、一般企業の職場ではどうなのか、というと政府の思いとは異なるようです。

厳しすぎる?職場の独自ルール 生活に大きな影響も

厳しい会社独自のルールがある証券会社勤務の30代男性は、「隣の席の人が陽性になったら、対策を講じていても“濃厚接触者扱い”で、出社停止になる」。
また、不動産業で勤務する40代の男性は、「ある部署で陽性者が出たら、部署の人は全員PCR検査を受けなければならない⇒陰性でないと出社出来ない」と明かしました。
めざまし8は、都内の30人に職場での新型コロナに関する独自ルールについて取材を実施。
「行動制限があった頃と比べて、職場のルールに変化はあったのか」を聞きました。

結果は、半数以上は変わらないと答える一方で、厳しくなったとの回答も一定程度います。
なぜ、以前より厳しくなったのか、水産業の方は、「政府が制限しないので、感染者は増えてしまうので、逆に厳しくなった」と話します。
厳しいのは行動制限だけではない職場もあるようです。

今はやりすぎ?過剰なコロナ対策に賛否

企業に産業医を派遣する「ドクタートラスト」によると、毎日検温し報告や接客業でフェイスシールド&マスクをして接客、営業職などは、週に2回の抗原検査を義務付けている企業もあるということです。
しかし、フェイスガードについては、医療従事者を除いては「パフォーマンスにしかならない」と指摘する保健師もいるということです。
このように、過剰ともいえる新型コロナ対策が継続されていることもあるといいます。
さらに、7月に入って全国各地の学校でクラスターが発生し、学級閉鎖が相次いだことなどから、保育所などでもこんな過剰な制限があるといいます。

保育所では、保護者が1人でも陽性になってしまった場合、子どもは陰性でも保育所自体が休園に。
このルールについて保護者は、「休園の頻度は上がるし、そのたびに仕事を休まざる得ない、仕事や収入に影響が出て迷惑」との意見も。

ただ、どの企業や保育園も感染対策が厳しいままなのかというと、そうではありません。

ドクタートラストに所属する保健師によると、過去にクラスターが起きて困った経験があった企業は、また同じ事が起こらないようにと過剰な制限になりがちな一方、これまで陽性者がほとんど出ていない企業は逆に、「もういいだろう」と、かなり緩んでしまっている傾向が強く、厳しすぎる企業と緩すぎる企業の二極化が進んでいるというのです。

どうして企業によってこのような大きな差が生じるのでしょうか。

「安全配慮義務」が格差の原因?

各企業には「安全配慮義務」が課せられていて、新型コロナウイルスも対象になっているため、各企業が感染を防ぐため必要に応じて防止策を講じなければならならないのです。
防止策を講じるには当然専門的な知識が必要となります。しかし日本の企業は、99%以上が中小企業で、その多くは産業医が常駐していません。産業医がいない企業は専門的な判断が難しいため、企業ごとで極端に制限の度合いが異なる事態が生じているというのです。

職場のルールこのままでいい?

企業によってばらつきがある“独自ルール”について、政府新型コロナ対策・分科会メンバーの小林慶一郎さんは「濃厚接触者の行動制限など、過剰な独自ルールは経済的影響が大きいので、見直しを迅速にすべき」と話します。一方で、「ただ、今後状況を注視する必要はある」ということです。
また、小林寅喆教授は、「オミクロン株は感染スピードが早すぎて、行動制限の効果が出にくいため、あまり意味が無い」とも指摘しています。

東邦大学・感染制御学 小林寅喆教授:
今までの行動制限はあまり現実的でなく、感染をする機会があって、実際に症状が出てくるまでに、数日から3日ぐらいで出てくる状況にあります。そうすると「一律に7日間の行動制限」などという対策は現実的ではないので、感染のおそれがある場合、マスクをして自分の様子を確認しながら行動して、3日から4日から経って、症状が出てなければ、感染はしていないんだという判断をして、社会活動をしていくというほうが現実的ではないかと思います。

企業に一任、となるとなかなか出来ないのが現実。
そんな中、東京都医師会はこんな提言を出しています。

医師会「5類相当”という扱い検討」

東京都医師会・尾﨑治夫会長は、「今の現状に即した分類を作ってもいいのではないか」と議論を進めることを提言しています。
つまり、いきなりインフルエンザなどと同じ5類にするのは難しくても“5類相当”という扱いを検討してみてもいい時期が来ているのでは?という事のようです。

徐々に拡大しているBA.5の感染力や重症化リスクなどについては、まだわかっていないことも多い中、“行動制限”をするかどうか、という問題はwithコロナの大きな課題となっています。

(めざまし8「わかるまで解説」7月13日放送)