JR日田彦山線の筑前岩屋駅。福岡・東峰村にある3つある駅のうちのひとつだ。
九州北部豪雨による鉄路の寸断から5年。かつてあった線路は既に撤去され、この筑前岩屋駅に列車がやってくることは、もうない。

この記事の画像(14枚)

被害を受けた日田彦山線 鉄道による復旧求めたが…

近くに住む人:
鉄道も良かったよ、良かったけど、こんな風になったけんね…

大谷真宏アナウンサー(2017年7月):
濁流で、流木が道路にも散乱しているという状況です。杷木IC上空の状況です

福岡・大分両県で死者・行方不明者が40人以上にのぼった、2017年7月の九州北部豪雨。猛烈な雨で、山から流れ出した大量の土砂と流木が家々を襲い、東峰村の山あいを走る日田彦山線も深刻な被害を受けた。

山田裕希記者(2017年7月):
東峰村です。崩れた土砂がJRの駅をのみ込み、さらに住宅地にまで流れ込んでいます

駅舎の倒壊や線路への土砂の流れ込みなど被害は60カ所以上に及び、日田彦山線は、福岡県の添田から東峰村を経て大分県の夜明に至る区間が不通となってしまった。

渋谷博昭村長(当時):
必ずや鉄道での復旧を取り戻すために、覚悟を持ってお願いしたいと思います

当時の渋谷博昭村長は、鉄道による復旧を強く求めた。
しかし、利用者が限られた山間部の赤字路線だったことも大きく影響して、多額の費用負担が大きなネックとなっていた。
復旧のめどが立たない中、東峰村の住民は、村の人口の10倍近い1万9,000人分の署名を集めてJR九州に鉄道による復旧を要望したが…

片岡拓之さん:
なかなかJR九州には聞き入れてもらえないのが、実際のところですね

“断腸の思い”で受け入れた「BRT」

鉄道による存続を求める住民団体「日田彦山線の完全復旧を求める会」の代表だった片岡拓之さん。
福岡県も支援を続けたが事態は動かず。当時の小川洋知事がJRの案を元に示したバス高速輸送システム「BRT」による復旧と、県議会が示した地域の振興策を東峰村は受け入れざるを得なかった。

渋谷博昭村長(当時・2020年5月27日):
私は断腸の思いで小川知事の提案を受け入れることを、苦渋の決断を致しました

片岡拓之さん:
鉄道でしか、活動の終結はもうないと信じてましたんで、ほんと大断腸の思いでしたね

2017年の豪雨では、片岡さんの自宅も浸水被害を受け、失意の中で何とか暮らしを立て直したところで、鉄道存続の危機に直面した。

片岡拓之さん:
やっと暮らしのめどが付いたぐらいの時に、JRが通らないということを報道で知りまして、このままじゃ疲弊する一方だということで、何とか声をあげようじゃないかと。住民一丸となってですね、活動できましたね

片岡さんが鉄道による復旧を強く望んだ理由…それは「交流人口」だ。
日田彦山線は、通学する子どもたちや車を持たないお年寄りの大切な足であると同時に、村の外から人を呼び寄せる地域の魅力にもなっていた。
存続を求める署名が村の人口の10倍近く集まったのは、山里を走る列車を撮りに訪れる写真愛好家など、東峰村の多くのファンがいたからだ。

しかし、その願いがかなうことはなかった。

片岡拓之さん:
会の活動のですね、歩みの歴史としてですね、こういう活動やったんだよってことを後世に残すことも大事じゃないかなと

片岡さんとともに、2017年の豪雨で倒壊していた大行司駅を訪ねた。

片岡拓之さん:
ライオンズクラブさんのご援助で立てて頂いたんですよね。なんとか良い方向でね、使っていきたいと思ってます

住民の声を受けて、駅舎は元の姿に戻っている。下敷きになっていた駅名板もそのまま設置されている。
しかし、もうこの駅に列車が止まることはない。
BRTによる復旧が決まったいま、片岡さんは、この駅舎やBRTを地域のためにどう生かすかを考えている。

片岡拓之さん:
何かの拠点になればいいと思っているんですけどね。疲弊していく自分の生まれ故郷を、そのままにしたくないという思いは強いです

地域と地域を再び結ぶ“ひこぼしライン”

JR九州 古宮洋二社長:
日田彦山線BRT「ひこぼしライン」。2023年、夏開業ということを発表させて頂きます

豪雨から5年がたつのを前に、JR九州は「ひこぼしライン」と名付けたBRTの詳細を発表した。
BRTは、添田町の彦山駅から東峰村の宝珠山駅までの約14kmは、渋滞などの心配がない線路跡の専用道を走行し、そのほかの区間は一般道を走る。
全長約40kmの路線には、かつての鉄道駅より25カ所多い、37のBRT駅が設けられる。学校や病院など生活に密着した場所で乗り降りできるようにして、利便性を高めると共に利用促進を図る。

住民の女性:
なんらかの乗り物は、やっぱりあったほうがいいと思うから、バスでも助かると思いますよ

住民の女性:
もうバスの方でよかったのかなと思います。やっぱり住んでいる人たちのためには、あっちこっちとあの停留所があった方がいいかなと思います

BRTの愛称が「ひこぼしライン」に決まったことを受けて、村の小中学校では彦星と織り姫に願いを込め、大行司駅と宝珠山駅に飾る七夕飾りを作った。子どもから大人まで、多くの村民が新たに生まれるBRTに地域の発展を願っている。

片岡拓之さん:
まだまだ手つかずのところもありますし。あと何年かかるんだろうなあっていう不安もありますけどね。でも、人のお気持ちが温かく感じられた5年でもありましたので、いろんな方に支えて頂きました。ほんとうにあの活動は無駄じゃなかったなと思いますね。災害後、何も見えないところで、あの活動ができたということは大きかったと思います

大切な交通手段となってきた鉄路を奪った豪雨災害から5年…
長く不通が続いた日田彦山線は2023年の夏、BRTとして開業し、人と人、地域と地域を再び結ぶことになる。

(テレビ西日本)

記事 569 テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。