難病の早期発見・早期治療で赤ちゃんの命を助ける「新生児マススクリーニング検査」。7月から、広島県で新たに追加された3つの検査項目について取材した。

感染症にかかると生存率は40%程度

広島県では、県内で出生したすべての新生児を対象に公費負担で「新生児マススクリーニング検査」という、先天性代謝異常等を調べるための血液検査を行っている。

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新生児の足の裏から少量の血液を摂取して検査し、生まれつき持っている病気を早期発見し、早期治療を行うことで発症を予防したり、重い症状が出ないよう、注意して日常生活を送ることができるようになる。

広島県は7月からこの「新生児マススクリーニング」検査に、更に3つの難病を見つけるための検査を追加した。

新たに追加されたのは、免疫力の低下により感染症にかかりやすくなってしまう「重症複合免疫不全」と「B細胞欠損症」。そして、生まれた後に徐々に筋力が落ちていってしまう「脊髄性筋萎縮症」の3項目。

この3つの検査の重要性について、難病の治療に当たる小児科医は…。

広島大学小児科・岡田賢教授:
感染症にかかる前に、スクリーニングで事前に見つかったお子さんは9割ぐらい助かる。早期に見つける意味は大きい

「重症複合免疫不全」「B細胞欠損症」「脊髄性筋萎縮症」の3つの検査を追加
「重症複合免疫不全」「B細胞欠損症」「脊髄性筋萎縮症」の3つの検査を追加

感染症にかかってしまうと、生存率は40%程度。1歳未満で亡くなるケースも少なくない。事前の検査が大切だ。

予防接種を安全に受けるためにも検査を

広島県内31の医療機関で新生児の血液を採取し、その血液を広島市医師会の臨床検査センターで調べる。

広島市医師会臨床検査センター・藤井ひとみさん:
7月から始まった検査のために機械を導入した。これまでも提出してもらっている血液のついたろ紙を使用して検査するので、新しく採血をする必要はない。赤ちゃんに別で痛い思いをさせる必要はない。

この検査は、アメリカではすべての州で行われていて、日本でも愛知県や大阪府など15を超える自治体ですでに始まっている。2021年は国内で約14万5000人の新生児が検査を受けた。

難病の早期治療はもちろんだが、乳児が生後2カ月以降行う数多くの予防接種を安全に受けるためにも、病気の早期発見が必要となっている。

特に、2020年から定期接種となった生後2カ月での「ロタワクチン」は、重症複合免疫不全症の子どもが摂取してしまうと非常に危険な状態に陥ってしまうという。

広島大学小児科・岡田賢教授:
ロタワクチンが悪いというわけではなくて、ロタワクチンを打つ前にリスクがある方を見つけることができない状況がよくない。きっちりと検査してあげて、安全に予防接種が進めていける世の中になっていけばと思う

検査には同意書への保護者のサインが必要で、2022年度は無料で受けることができる。大切な赤ちゃんの命を守るため、検討してみてはいかがだろうか。

(テレビ新広島)

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