「野生動物に手出しをしてはいけない」ということを定めた鳥獣保護法。この法律をめぐる議論が再び活発になっている。
はしごを下ろし…8匹のウリ坊を救出
6月23日、福岡市西区の住宅街でカメラが捉えたのは、水路に落ちているイノシシの子ども、ウリ坊8匹。
この記事の画像(14枚)近くに親イノシシの姿はなく、8匹のウリ坊は身を寄せ合いながら、水路をトコトコと行ったり来たりしていた。
住民たちはウリ坊を心配していた。
近くの住民:
2~3日前くらいから気付いていたけど、どうやって逃げ出すのかなと思っていた。なんか、助けてやらないかんなとは思いますけど
数日前から水路にいたというウリ坊。水路の壁は2メートル以上あり、コケもへばりついていることから、ウリ坊は自力で上ることはできない。
しかし、一夜明けると水路からウリ坊が消えていた。一体、水路で何が起きたのか。
6月23日、午後6時半すぎ。表面にダンボールが張られたはしごが水路に下ろされた。はしごとともに男性2人が水路に降りていく。
突然の人間の登場に警戒するウリ坊だったが、その後、人間の手によって水路から救い出されたという。
「野生動物に手出ししない」鳥獣保護法の原則
野生生物をめぐる今回の騒動。実はそう簡単な話ではないのだ。
福岡県環境部自然環境課 新博司課長:
鳥獣保護法によりまして、野生の鳥獣は捕獲が禁止されています。ウリ坊とは言っても、近くに親がいるので危ない場合もあります。十分に注意して近づかないことが大事かなと
この鳥獣保護法をめぐっては、過去に大きな議論を呼んだ。
2018年10月、北九州市門司区の砂防ダムに2匹のイノシシが迷い込んだ。2匹は何度も脱出を試みるが、高さ6メートルほどの壁を登ることができず、ダムの底に閉じ込められてしまった。
日に日に衰弱していくイノシシ。群がったカラスに攻撃されても抵抗する気力もなくなったが、このときも福岡県や北九州市は「野生動物には手出ししない」という鳥獣保護法の原則に基づき事態を見守った。
ところが、弱っていくイノシシを見かねた人たちから「なぜ助けないのか」などと、北九州市だけでも750件近い苦情が殺到する事態になった。
これを受けて行政は方針を転換。砂防ダムを管理する福岡県は「施設の安全管理に支障をきたす」との理由で、イノシシの救出する作戦を開始したのだ。職員の仕掛けたわなにかかったイノシシはその後、山に帰って行った。
今回、福岡市西区の水路からウリ坊を救出した住民たち。その1人に話を聞いた。
手助けをした住民:
野生動物に手出しをしてはいけないことはわかっていました。なんとか自力で帰ってもらいたかったが(騒動のあった)翌日も予報は雨だった。雨が降ると水路に水がたまってウリ坊が溺れてしまう。心配なのでみんなでウリ坊を助けて、山に逃がしました
福岡県は、野生動物は見守るのがルールとしながらも、必要な際は行政機関に連絡を入れてほしいとしている。
(テレビ西日本)