いよいよ海外旅行の本格化も現実味を帯び、夏休みに旅先を「海外」へと目を向けている人もいるだろう。

しかし、いまだ日本も含めて世界は「コロナ禍」でもある。海外旅行をする際、どんなことに気をつけた方がいいのだろうか。頭に入れておきたいことを旅行・航空アナリストの鳥海高太朗さんに聞いた。

渡航先の“入国”情報は要チェック

今年のゴールデンウィークには人気リゾート地・ハワイのツアーが再開され、航空会社各社はその期間の実績を「ピーク日ではほぼ満席となった日もあった」と発表した。

株式会社エイチ・アイ・エスが6月16日に発表した「2022年夏休み旅行予約動向」によると、夏休み期間(2022年7月21日から8月31日)の海外旅行予約は前年同日比で約22倍。レジャー目的の渡航が多くを占めながらも、減便などの影響もあり、予約者数はコロナ禍前の2019年の1割程度だという。

HISの予約者数ランキング1位はホノルル、2位はバンコク、3位はソウル、4位はロンドンだった。

旅行・航空アナリストの鳥海高太朗さん
旅行・航空アナリストの鳥海高太朗さん
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しかし、鳥海さんの見解では夏休みに注目されそうな観光地を「ハワイと言いたいところですが、ハワイの物価が高いことや距離的なこともあり、グアムを選ぶ人も増えています」とのこと。

各国の水際対策なども緩和されたことで、海外旅行のハードルも下がった。しかし、アメリカにおいては円安・物価高、ヨーロッパはウクライナ侵攻の影響で迂回するため時間がかかるなど行きにくくなっている現状がある。

そのため、「アジアに人気が集まるのではないか」と鳥海さんは予想する。

「台湾や香港はまだ観光で行けませんが、東南アジアや特に韓国はK-POPのブームやコロナ禍で韓国ドラマに注目が集まったことで、韓国に行きたい人が増えました。6月初め、東京の韓国大使館では観光ビザを取得するために行列が起きたのも同じ理由かと思います」

(画像:イメージ)
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7月現在、韓国へ行く場合は、入国前のPCR検査・抗原検査による陰性証明書の提示と検疫情報事前入力システム(Q-code)の入力、査証(ビザ)の取得、韓国入国後3日以内のPCR検査などが必要になる。ビザに関しては韓国政府が、日本などを対象にビザ申請の手続きを簡素化するほか、7月から希望する人には1年間の有効期間中に何回も入国できる「マルチビザ」の発給を始めると発表した。

タイへ行く場合、7月1日からは入国のための許可申請システム「THAILAND PASS(タイランドパス)」や新型コロナウイルスの治療費等を含む1万ドル以上の治療補償額の医療保険証(英文)の提示が撤廃され、ワクチン接種済みの場合はワクチン接種証明書(自治体発行の「海外渡航用」のもの)、未接種もしくは未完了者の場合は72時間以内のPCR検査または抗原検査による陰性証明書の提示が必要になる。

渡航先によって入国の際に必要とされる書類や手続きが異なるため、必ず確認しておきたい。

渡航先の“現地ルール”を要確認

鳥海さんは2021年6月にハワイ、2022年4月にはアメリカ・ロサンゼルス、ゴールデンウィークにはハワイへと足を運んでいる。

まずは2021年6月のハワイは今よりも入国時の条件も厳しかったことに加えて、日本帰国時の自主待機もあった。「当時のハワイの飲食店は席数の規制もあり、レストランの予約も大変でした。レンタカーもなかなか借りられず、借りるだけでも一苦労でした。当時はまだ屋内のマスク着用義務もありました」と振り返る。

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しかし現在、ハワイ入国の際に必要とされるのは、ワクチン接種証明書(自治体発行の「海外渡航用」のもの)や宣誓書、ESTA(電子渡航認証システム)の申請。渡航前のPCR検査による陰性証明書は6月12日(現地時間)から不要とされたが、渡航前の事前検査は推奨されている。

現地の様子としては、屋内外共に観光で訪れる範囲内ではマスク着用義務もなくなり、コロナ対策は緩和されている。日本では街中で見かけるアルコール消毒も、鳥海さんいわく「ほとんど見なかった」そう。

レストラン等利用の際に必要とされたワクチン接種証明書等も、一部残りながらも基本的に必要ではないという。物価高ということはありながらも、現地はコロナ前と同じような状況で、ショッピングやレストランなどで楽しんだりすることができたそう。

「“郷に入っては郷に従え”ではないですが、マスクの着用についても渡航先の“現地のルール”を確認した上で、そのルールに従うことが大切です」と鳥海さんは話す。

最大の懸念は「コロナ陽性になったら…」

そんな海外旅行者にとって最大の懸念は「新型コロナウイルスの陽性になったらどうしよう」ということだ。

日本に帰国・入国する際、滞在していた国・地域に関わらず全員が72時間以内に行ったPCR検査の陰性証明書を取得することで、飛行機に搭乗でき、帰国が可能になる。

ちなみに、厚生労働省の発表では、アメリカや韓国、タイ、シンガポール、イギリス、イタリア、フランスなど98カ国・地域から帰国する場合、有効なワクチン接種証明書の有無にかかわらず、日本到着時の検査と自宅などの待機はない。しかし、滞在していた国・地域によっては、到着時の検査や待機が求められるため、しっかりと情報は確認しておきたい。

久しぶりの海外に、現地で観光を楽しみながらも、帰国から72時間を計算してPCR検査を受けなければならない。最近の海外旅行は、旅行日数が少ないことも多いようで、現地に到着してすぐにPCR検査、なんてこともあるようだ。

鳥海さんは「基本的に現地でのPCR検査は自費です。予約制ですが、ハワイのPCR検査は日本語対応が多かったりします。数時間後に結果がメールで通知されました。ヨーロッパなどは、日本語の対応がないところも多く、スムーズに検査できない可能性も頭に入れておいた方がいいです」と注意を促す。

現地のPCR検査を自ら手配するのも大変なため、旅行会社から申し込むと日本政府指定のフォーマットの陰性証明書が取得できるPCR検査の予約などケアもしてくれるため、安心だという。

(画像:イメージ)
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心配なところはそれだけではない。やはり、帰国時の検査結果が「陽性」になったら、数日間は帰国することができなくなる。この不安がやはり大きいだろう。

「帰国時に陽性になった場合、特に会社員の方は会社を休まなければなりません。夏休みに家族でハワイに行って、『コロナで陽性になり、ハワイから帰国できません』と会社へ報告することを想像して、ためらう人もいます。まだまだ海外旅行に行きたくても二の足を踏む人がいるのが現状です」と鳥海さん。

万が一、陽性になったときのために、海外旅行へ行く場合は「海外旅行保険」に入ることが重要だと鳥海さんは言う。感染した際の入院費や滞在費は、海外旅行保険でカバーすることもできるため、補償内容の確認もしておきたい。

鳥海さんによると、ゴールデンウィークに滞在したハワイの場合は、帰国時のPCR検査で陽性になると、軽症の場合はホテルの客室で隔離になることが多く、延泊することになる。ワクチン接種状況に関係なく、5日間は自主隔離が必要となる。

ホテルによっては清掃などの客室サービスがあるところもあれば、ないところも。また、隔離中の食事などはルームサービスやUber Eatsで用意することも踏まえておかなければならない。

海外旅行に「スマホ」が欠かせなくなった

秋に向けては、「海外においては感染が拡大されない限り、入国条件などが緩和されていくと思う」と鳥海さんは予測するが、やはり最大のネックである日本帰国時の72時間以内のPCR検査が撤廃されない限り、海外旅行へのハードルは高いままかもしれないという。

さらに、コロナ禍において海外旅行でスマホが必須となったことで、「シニアの海外旅行の壁も高くなってしまった」と鳥海さんは言う。

入国時の手続きを簡略化する「ファストトラック」もその一つ。成田国際空港、羽田空港、中部国際空港、関西国際空港、福岡空港から入国する人が対象になるもの。これはコロナ禍に運用がはじまった。海外から日本に入国する前に、スマホアプリ「MySOS」をインストールし、必要書類を事前登録することで検疫手続きの一部を済ませることができる。

旅行・航空アナリストの鳥海高太朗さん
旅行・航空アナリストの鳥海高太朗さん

「紙もありますが、ワクチン接種証明アプリもそうですし、現地でのPCR検査の結果の受け取りも紙の場合はPCR検査の場所に再び行く必要があるため、メールでの受け取りが楽だったりします。

『MySOS』のようにアプリをダウンロードして情報を入力するなど、今の海外旅行にスマホは欠かせません。4月に父親とアメリカへ行ったときも感じたのですが、スマホを使いこなせないとシニアの海外旅行は大変だと思いました」

最後に、海外旅行者が旅行前や旅行中も意識したいことは、「常に最新の情報を調べること」だと鳥海さん。

また、今の時点で入国時などにワクチン接種証明書が必要とされなくても、いつ何時提示を求められるか分からないため、ワクチン接種証明書(海外渡航用)は取得しておいた方がいいと鳥海さんは言う。

「渡航先の入国時のルールも日々変わります。感染等が拡大すれば、場合によって現地滞在中にルールが変わることもあります。例えばですが、現地の日本大使館や日本の現地の大使館の情報を常にチェックしたりして、“最新”の情報を得ることに敏感になってください」と強調した。

鳥海高太朗
航空・旅行アナリスト。帝京大学理工学部航空宇宙工学科非常勤講師、共栄大学国際学部非常勤講師。近著に『コロナ後のエアライン』(宝島社)などがある。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。