この3文字、「GAP(ギャップ)」と読むが、何の略称かわかるだろうか。
「G」ood「A」gricultural「P」racticesの略称で、野菜や肉など食材の生産工程を細かく管理する取組みのことだ。
この島根県版のGAP「美味しまね認証」が、このほど全国初の称号を獲得した。食の安全を追求する「GAP先進県」の取組を取材した。
この記事の画像(17枚)島根・大田市三瓶町。東京からUターンし、2年前に農業を始めた景山祐一さん。無農薬でニンニクを栽培している。
就農にあたり、「美味しまね認証」を取得した。
ニンニク農家 景山祐一さん:
「美味しまね認証」を取っていると、消費者が安心する。(認証を)取っていないと、いくら農薬使ってないと言っても説得力に欠けるので
「美味しまね認証」は、島根県版のGAP認証制度。
GAPとは、安心・安全な食材の生産を目指し、生産工程を細かく管理する制度で、各都道府県が独自の基準を設け、農家や団体を認証している。
このGAPを、より厳しい国際的な水準に引き上げようという動きが始まっている。
「国際水準クリアしなければ取引しない」という企業も
農林水産省・佐藤夏人課長:
国際水準に引き上げていきたい。世界的な国際水準のレベルにあげていかないと、これからの取引につながらない
国際水準は、
(1)食品の安全、(2)生産する環境、(3)労働の安全、(4)労働者の人権保護、(5)農場の経営管理と、5つの分野の条件をクリアすることが求められる。
2021年の東京オリンピックでは、選手村などで使われた野菜の約9割が国際水準GAPを取得したものだった。
国際水準をクリアしなければ取引しないという企業も増えてくる。そんな中…
島根県・丸山知事:
美味しまね認証が国際的に通用する都道府県のGAP全国第1号として、農林水産省に認められた
島根県が取り組む「美味しまね認証」の中でも、最も厳しい基準を設けている「美味しまねゴールド」が、全国で初めて国際水準のGAPに認定された。
島根県・丸山知事:
美味しまねゴールドは国際水準のGAPだと自称では言ってきたが、自称ではなくて政府に認められたものと言えるのはうれしい
全国に先駆け、13年前に始まった島根県版GAP「美味しまね認証」。その取り組みがようやく実を結んだ。
チェック項目は約130項目…衛生管理から労災事故対策まで
厳しい基準をクリアした食材はどのように作られているのだろうか?
ニンニクを生産する景山さんの農場では…
ニンニク農家 景山祐一さん:
ここのトレーにニンニクが入っているが、トレーを床に置くことは絶対NG。虫が混入したり、カビ発生の危険性が高くなるということがあるので
チェックしている項目は約130ある。衛生面の管理から、労災事故を防ぐ対策まで多岐にわたる。異物混入のリスクなども1つ1つ洗い出し対策する。
ニンニク農家 景山祐一さん:
例えば病原微生物の汚染のおそれがあるので、必ず手袋を着用するとかです。細かい当たり前のことをきちんとこなすことが、消費者からの評価につながると思って取り組んでいる
安心・安全という付加価値は、販路拡大にもつながっている。
世界中の逸品を取り扱う東京の伊勢丹新宿店。ここで開かれた「しまねフェア」でも、ほかの「美味しまね認証」を取った商品と合わせて、景山さんのニンニクが販売された。
価格は1個約200円と外国産の2倍ほどするが…
購入客:
ニンニクの上の部分がついているのが変わっている。とても新鮮で手に取りました
取得する農家の少なさや認証マーク普及が課題
一方で課題もある。島根県内で国際水準のGAPを取得している農家は、2割弱にとどまっている。
厳しい管理体制に足踏みする農家が多いのも理由の1つだ。
また、地元の買い物客からは…
(Q.GAPって知ってますか?)
買い物客:
知らない。服のGAPしか知らない
買い物客:
(美味しまね認証は)だいぶ前からある気がする。買っていると思うけど、この認証マークを見て買うのはあまりない
「GAP」という制度そのものが、消費者に十分に広まっているとはいえない。国は3年後をめどに、国際水準GAPへの引き上げを目指している。
GAP先進県・島根県の取り組みが、普及に向けた大きなカギになるとみられる。
(TSKさんいん中央テレビ)