6月17日、福岡地裁。白いシャツで法廷に現れた碇利恵被告(40)。

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裁判長(取材メモより):
主文、被告人を懲役5年に処する

碇被告はまっすぐ裁判長を見つめて、判決を聞いていた。

焦点になったのは量刑

2020年4月、知人の赤堀恵美子被告(49)と共謀し、当時5歳だった三男の翔士郎ちゃんに十分な食事を与えず、餓死させた保護責任者遺棄致死の罪に問われていた碇被告。

裁判は6月6日から始まった。検察側、弁護側ともに事実認定に争いはなく、焦点になったのは量刑だった。

検察側は、これまでの公判で「赤堀被告に支配されていたことは、碇被告の刑事責任を大きく減らすものではない」と主張。

対する弁護側は、碇被告が「マインドコントロールの状態だった」「重い実刑にすべきではない」と訴えた。

事件の4年前、子ども同士が通う幼稚園で、赤堀被告に碇被告が声をかけたことでママ友としての関係が始まった。

2人は1日で、最高1,000通のLINEをやりとりするほどの親しい仲になり、やがて…

赤堀被告に1,300万円超だまし取られ、生活は困窮…

赤堀被告(取材メモより):
ママ友が悪口を言っている。旦那が浮気している

碇被告は、赤堀被告からうそを吹き込まれ、夫と離婚。周囲から孤立すればするほどに、赤堀被告への依存度を高めていった。

また、赤堀被告は「ボス」という架空の人物の話を持ち出して、トラブルの解決費を求められることもあった。

生活保護費や児童手当、貯蓄など、これまでに1,300万円以上を赤堀被告からだまし取られ、碇被告の生活は困窮していった。

その後、赤堀被告は碇被告家族の食事の量までも管理し、言いつけを守らなかった翔士郎ちゃんに2週間以上食事を与えないこともあったという。

翔士郎ちゃんが亡くなった時の体重は、5歳児の平均の半分ほどの10.2kg。胃の中に食べ物はほとんど残っていなかった。

「経済的に搾取、心理的に支配、生活全般を支配」

6月14日に開かれた公判の論告で、検察側は「支配されていたとしても量刑を減ずる事情ではなく、子どもを守る行動を放棄した」などとして懲役10年を求刑。

一方、弁護側は「碇被告は赤堀被告に心理的支配を受け、行動選択の幅が狭まった」と主張し、執行猶予付きの判決を求めていた。

17日の判決で福岡地裁は、弁護側が主張する赤堀被告による「心理的支配」を認定。そのうえで…

裁判長(取材メモより):
数々のうそによって経済的に搾取され、心理的に支配され、生活全般を支配された被害者としての側面があり、これが犯行に及んだ主な要因となっていた。そうすると、犯行に及んだ被告人の意思決定を非難することができない。自分の楽しみを優先して、子どもを虐待、放置した事件とは責任の度合いが異なる

などとし、碇被告に懲役5年の判決を言い渡した。
そして、裁判の最後には…

裁判長(取材メモより):
罪を償って社会に戻ったあと、子どもたちの成長に寄り添える日がくることを願っています。その日を目標に、これからの日を強く生きてほしいです

裁判長からのこの言葉に、碇被告は「ありがとうございました」と一礼し、法廷をあとにした。

「加害者の碇被告も被害者」

閉廷後、裁判員が記者会見に応じ、今回の判決に至った思いを語った。

裁判員:
大変難しかった。支配に関して否定的だったが、公判が進むにつれて支配のプロセスを聞いていくにあたって、加害者の碇被告も被害者だとわかった

裁判員:
この事件の特殊性から、難しい要素がたくさんあった。量刑も難しかった

関係者によると、赤堀被告の初公判は2022年8月末で調整しているという。

(テレビ西日本)