参議院選挙(7月10日投開票)の公示(6月22日)を3日後に控えた19日、与野党9党の党首がフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時30分)に出演し、物価高対策や大規模な金融緩和継続の是非、安全保障などについて討論した。

出演したのは、自民党の岸田文雄総裁(首相)、公明党の山口那津男代表、立憲民主党の泉健太代表、日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)、共産党の志位和夫委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表、れいわ新選組の山本太郎代表、社民党の福島瑞穂代表、NHK党の立花孝志党首の9人。

安全保障をめぐっては、日本周辺で中国軍やロシア軍が活動を活発化させる中、反撃能力の保有に関し、国民の玉木代表が14日の記者会見で原子力潜水艦の保有について検討すべきだと打ち出したことについて議論が展開された。

番組キャスターが「日本は原潜を持つべきだと思う人は挙手するよう」求めると、松井氏、玉木氏、立花氏3人が手を挙げた。ほかの6党首は原潜保有に反対、慎重の考えを示した。

以下、番組での主なやりとり。


松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
安全保障のテーマに移りたい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
こちらを見てほしい。16日に中国の艦艇2隻が宗谷海峡を通過した。17日にはロシアの艦艇9隻が同じ場所を日本海に向けて通過。別のロシア艦艇7隻も伊豆諸島周辺を南西方向に通過した。中国では3隻目の空母の進水式が行われた。日本周辺でロシア軍、中国軍の活発な動きが見られる中、国民の玉木代表は14日、「日本が原子力潜水艦を保有し、適度な抑止を働かせることを具体的に検討すべきだ」と発言した。
香田洋二氏(元自衛艦隊司令官)によると、原潜は(1)長期間浮上せず潜行が可能 (2)大型で多くの武器が搭載可能 (3)瞬発力が高く行動範囲が広い等、攻撃力が高い。ロシアと中国は原潜を保有しており、北朝鮮も原潜保有を目指している。

松山キャスター:
各党首に聞く。抑止力向上のため日本は原潜を持つべきだという人は挙手してほしい。

梅津キャスター:
維新、国民、N党の3党首が手を挙げた。その他の党首は手を挙げていない。

松山キャスター:    
国民の玉木氏に聞く。原潜を持つべきだという主張はどういう考えからか。

玉木雄一郎氏(国民民主党代表):
防衛大綱の見直しの度に出ては消える議論だ。きちんと検討すればいい。反撃力のためにはどこに何があるのかを正確に知る能力が必要だ。つまりインテリジェンスの力と警戒監視・偵察能力が大事だ。原潜だけではなく、衛星コンステレーションやドローンなどの新しい技術も導入を検討するべきだ。今の(通常型潜水艦)22隻体制は非常に優れている。ただどうしてもディーゼルとリチウムイオン蓄電技術だけだと、せいぜい3日か4日で一度浮上しなければいけない。原潜は3カ月、4カ月潜っていられる。南北朝鮮、中国、AUKUS(オーカス)で今度オーストラリアも導入する。日本周辺の安保環境が変わってきているのであれば最新の状況に合わせた新しい技術の導入は少なくとも検討はすべきだ。

松山キャスター:
自民党の岸田総裁は去年9月の総裁選時にもこの番組での同じ質問に慎重姿勢を示していた。どういう考えか。

岸田文雄氏(自民党総裁、首相):
厳しい安全保障環境で防衛力はしっかり強化しなければならないが、いきなり原潜に行くのはどうか。そもそも原子力基本法の原子力の平和利用をどうクリアするかという問題がある。現在の運用構想でも相手の原潜に対してしっかりとした対応が用意されている。原潜は莫大なコストと開発までの多くの人員が必要となる。国民の命や暮らしを守るために優先してやるべきものについてしっかり考えていく。この優先順位が大事なのではないか。原潜の前にやるべきことはあるのではないか。

松井一郎氏(日本維新の会代表、大阪市長):
原潜のほうが現在のディーゼル潜水艦よりも性能が高い。日本の安全、抑止力強化のためには性能の高いものを持つべきだ。いきなり日本で原潜をつくるというより、日米同盟の中で米国とシェアしていけばいい。シェアさせてもらえれば日本の防衛力は強化できる。財源の問題はあるかもしれないが、ウクライナのように攻め込まれれば国民の命は守れず、虐殺に遭う。性能のよい原潜を日本がつくるかリースするか、様々な方法があると思う。ぜひやるべきだ。

泉健太氏(立憲民主党代表):
世界情勢が緊迫するとどうしても大艦巨砲主義のような古い思想が出てくる。果たして原潜が日本に適した戦略なのか。私はそうは思えない。先ほど岸田首相も言ったように日本の通常型潜水艦は世界最高レベルだ。原潜は蒸気タービンだから音がするデメリットがある。潜水艦はとにかく静かであること、潜航してしかるべき時に対応することが求められる。今の日本の潜水艦の価格は原潜よりも5倍から10倍安い。原潜1隻で5~7隻ほどの通常型潜水艦がつくれる。通常型を同時展開したほうが日本の防衛に資するのではないか。一個豪華なものがあれば強くなるなどという話ではない。         

山口那津男氏(公明党代表):
岸田首相が言ったように現実的ではない。原子力船「むつ」の開発は失敗した。原子力を推進力とする船を開発・維持するには膨大な金がかかる。制度的にも平和利用という大前提があり、国民の理解を得て行うことは難しい。多くの武器の搭載が可能だが、どういう武器を載せてどう使うかは全然決まっていない。障害がたくさんあり、現実的ではない。

志位和夫氏(共産党委員長):
反対だ。ロシアの蛮行に乗じて大軍拡の大合唱が起こっているが、軍拡で平和が守れるか。日本が軍拡で構えたら相手も軍拡を加速させる。軍事対軍時の悪循環に陥ってしまう。軍事費(防衛費)を2倍にするという議論もある。自民党は公約で対GDP比2%ということも言っている。そうなると軍事費を5兆円増やすわけだ。財源をどうするのか。消費税でまかなうとしたら2%以上の増税になる。医療費にかぶせようとしたら、医療費の窓口負担を倍にしなければならない。現実はいま3割負担だから6割負担にしなければならない。これどうするのか。暮らしを押しつぶすことになる。この軍拡の議論、どういう規模でやるのか、財源をどうするのか、岸田首相はぜひ国民にはっきり示して欲しい。それを示すことなしに白紙委任であとは勝手にやるよというわけにはいかない。私たちは(防衛費対GDP比2%に)反対だが、もしそれをやるというのなら、きちんと審判を仰ぐべきだ。

松山キャスター:
岸田氏は「防衛費の相当な増額」を表明したが、防衛費増額の必要性の根拠は何か、財源をどうするのかという意見がある。どう考えているのか。

岸田氏:
NATOの防衛力、対GDP比2%という方針も念頭に置きながら5年かけて防衛力を抜本的に強化する。ただ、数字ありきではないということは再三申し上げている。この厳しい安全保障環境の中で、現実的に国民の命を、暮らしを守るために何が必要なのか、この積み上げを行っていき、その上で予算と財源、この三つをセットで考えていくと申し上げている。年末までに国家安全保障戦略等をしっかりと見直して行く。その議論の中で、この三点セットで示して行く。これが政府の考え方だ。

福島瑞穂氏(社民党党首):
原潜を持つことには反対だ。今でも防衛予算は5.4兆円、補正予算を入れると6.1兆円だ。5.4兆円の文教予算よりも多い。どんどんどんどん軍拡して行くことは問題だ。敵基地攻撃能力保有、防衛予算10兆円、沖縄・南西諸島における自衛隊配備とミサイル計画、原潜など、これまでの政府の主張を全部覆していっている。日本は海外に武器を売らない国だった。日本の軍需産業をどんどん育成すべきだとなれば、まさに軍事大国。武器を売って金儲け、世界で戦争が起きることを望むような国になってしまうのではないか。もし防衛費を11兆円にすれば、世界3位の軍事大国だ。今でも20位の中に入っているが米軍の駐留もあり、ダントツの軍事大国だ。軍拡競争していくことに反対だ。平和の構築こそすべきだ。

松山キャスター:
NHK党の立花氏は原潜保有に賛成という立場か。

立花孝志氏(NHK党党首):
はい。日本の敵は明らかに中国ということをはっきりとしなければいけない時期にきている。日本は領土は狭いが、領海は世界でもトップ10に入るぐらい。海の安全を守ることはすごく大事だ。毎日のように尖閣や小笠原で中国による領海侵犯が行われている。原潜は非常に高性能だ。最初はアメリカから購入するなり、レンタルをする。そして内需拡大、経済を回していくためにも原潜を日本国民がつくれるようにしていく。経済を回していくためにも必要だ。何よりも中国の考えは日本人とは違う。志位氏の言うように、こちらが手をあげなければ、相手は殴ってこないということではない。確実に世界を侵略しようとしている中国に対してはしっかりとした防衛力を持たないと憲法9条では国民の命は守れない。しっかりとした防衛力を持って国民の生命、財産、領土、領海を守っていかなければならない。

松山キャスター:
れいわ新選組の山本代表は原潜の保有に反対という立場。

山本太郎氏(れいわ新選組代表):
論外だ。通常の動力型潜水艦と比べれば、さらに攻撃的なものになるので原潜保有はまずい。国連憲章に旧敵国条項がある。日本のような旧敵国が不穏な動きをした時には安保理の許可なしに日本を攻撃することができる。つまり敵基地先制攻撃能力保有や原潜導入のような動きになれば、日本は攻撃されるリスクを負うということだ。言葉で勇ましいことをいくら言っても、現実的な国防を語ることにはならない。まずはスタート地点をしっかりと見極めなければいけない。日本が置かれた立場をしっかりと見つめた上で世界にどのような足かせをはめられているかからスタートしなければならない。

松山キャスター:
岸田総裁に聞く。年内に国家安全保障戦略をまとめるが、原潜に関してまでは書き込まないと考えていいか。

岸田氏:
これから年末にかけて議論する。今この段階で何か予断をもって言うことは控える。先ほど原潜については私の思いを申し上げた。年末に向けてしっかりとした議論を行っていきたい。

日曜報道THE PRIME
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