浜松市の中山間地域では人口減少が進んでいる。また路線バスが廃止され、買い物が不便な「買い物弱者」も増えている。こうした地域の人たちのために2つの取り組みが始まった。キーワードは、楽しい買い物。

価格は店舗と同じ 軽トラックの移動スーパー

4月5日に披露されたのは、新鮮な肉や刺身、それに野菜やお菓子、日用品が載せられた軽トラック。これは浜松市に本社を置くスーパー「マックスバリュ東海」が始めた移動スーパーだ。

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食料品店が少なく交通の便が悪い中山間地の、いわゆる「買い物弱者」のために各地を巡回する。店舗で販売されている商品をそのままの価格で買うことができるという。

浜松市の山あいの天竜区春野町。自然豊かなこの地区では、10年前と比べ人口は3割減少している。

高齢化も進み平均年齢は61歳、人口の半分以上が65歳以上だ。バスの路線も縮小が進み、小さな商店しかないため買い物に不便な地区が増えている。

刺身や肉など、手に入りにくい生鮮食品が人気

春野町でも4月から移動スーパーの巡回が始まり、この日も新鮮な食材を求めて大勢の人が買い物に訪れていた。

販売員:
お店から持ってきたマグロ。きょうは本マグロもありますからね

一番人気は、なかなか買うことができない刺身や肉などの生鮮食品。買い物だけでなく、販売員や近所の人との会話も楽しそう。

買い物客:
便利でいいですよね。(スーパーは)病院を兼ねて行くものだから、50kmあるので1時間以上かかりますね。だから、これは便利ですよね

別の買い物客: 
部落の人たちとも出会えていいと思います。作ろうかなと思っても、材料がないとできないから。千切りキャベツもなかなか思うように切れないので大変なんです。助かります

物を見て選ぶ”買い物の楽しさ”を味わって

マックスバリュ東海・江浜佑一マネージャー:
お店に来る楽しみと同じような、お買い物の際に見て選ぶ喜びとか、楽しみといったものを提供できたらいいなと

マックスバリュ東海・江浜佑一マネージャー
マックスバリュ東海・江浜佑一マネージャー

移動スーパーの実現は、地域の住民たちが強く願っていたものだった。売り場は大盛況で買い物はもちろん、地域の人同士のふれあいの場にもなっている。

春野地区自治会連合会・進藤博行前会長:
物を選ぶ楽しさというのは当然、誰でも思っているから。いろんなものを選ぶことができて嬉しいという気持ちが、今日みんなの表情に表れたと思うんだよね。それはすごく楽しいことじゃないですか。これ買おうかとか、みんなと一緒になって買い物をするのは楽しいものだなと思う。あの場所に集まるのが楽しみという人が多くなってくるんじゃないかと思います

地元のガス会社が駄菓子店をオープン

落合健悟記者:
こちらは天竜区にある浦川地区の駅前通りですが、営業しているお店も少なく、寂しい雰囲気となっています

同じ天竜区佐久間町も人口減少に歯止めがかからない。浜松市が政令市に移行した2007年と比べ、約半分の2847人となっている。

人口減少が顕著な浜松市天竜区佐久間町
人口減少が顕著な浜松市天竜区佐久間町

そんな佐久間町でも、地元のガス会社が地域に賑わいを取り戻そうと少し変わった取り組みを始めた。2022年3月に事務所の一角にオープンさせたのは、なんと駄菓子店。

大人にとって懐かしい駄菓子も並ぶ
大人にとって懐かしい駄菓子も並ぶ

買い物客:
お願いします

店員: 
はい! ちょうど200円だね、ありがとうございます

店の設置を決断したのは、1月に会社の合併で社長に就任し、初めて佐久間町の様子を見た浅野さん。

豊栄産業・浅野孝記社長:
町を見たときに何もないんだ。いろんなものがあった形跡があるんだけど、なくなっていて。子供もお年寄りも、何か喜んでいただけるお店を開けたらどうだろうと。良い意味での無駄遣いというか、それを提供したかった

懐かしい駄菓子やアイスクリームも買える

大人にとっては懐かしい駄菓子のほか、特に地域の人から人気があるのが、遠くで買い物をすると家に着くまでに溶けてしまうアイスクリーム。

買い物客:
特にアイスは食べたくてもね、(遠くで買い物すると)買ってから溶けちゃうという頭があるのでね。子供心に帰ったような気分になって、いろいろ買えて楽しいです

店にはお小遣いを持った近くに住む中学生も訪れ、お気に入りのお菓子やアイスを楽しんでいた。

中学生:
すごく嬉しい。近場で買えることが今までなかったので、本当に嬉しいです

別の中学生:
どんどん店がつぶれていって、何か新しく開設というか、できることを予想してなかったから。楽しいし、ワクワクドキドキみたいな

中山間地域が活気を取り戻すきっかけに

浅野孝記社長:
ガスの事業自体が地元の方に支えられているので、その方たちのために我々ができることが何かないのかというのは、考えて当然。これをきっかけにして、地域の活性化に取り組んで、ここに人が戻ってこられるようなものを目指していきたいと思います

豊栄産業では今後、駄菓子店だけでなくキャンプ場を使ったイベントなども開催したいとして、さらなる地域の活性化が期待される。

浜松市の中山間地で始まった2つの取り組み。笑顔があふれる買い物が、地域の活力を取り戻すきっかけとなるかもしれない。

(テレビ静岡)

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