米国のバイデン大統領が台湾有事の際に軍事的に関与する考えを示したことに関し、自民党の小野寺五典安全保障調査会長は29日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)で、台湾有事の際、米国が直接戦闘に参加しなくても、台湾への武器供与により米中が衝突する蓋然性が高い、との見方を示した。

小野寺氏は「米国が直接戦わなくても、台湾関係法により米国は台湾に武器を支援する約束になっている。武器を送るということは制海権を持つ中国と衝突事案になる」と述べた。「そのとき日本はどうするのか。考え方をしっかり議論しなければならない」とも強調した。

一方、立憲民主党の小川淳也政調会長は、台湾有事で米中が衝突した場合、米国への後方支援を行うことはあり得るとの認識を示した。

小川氏は「(平和安全法制の)集団的自衛権の部分は手続きの瑕疵(かし)がある」と指摘したが、「後方支援はあり得る。重要影響事態として法的手続きを取った上でだ」と述べた。

以下、番組での主なやりとり。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長、元防衛相):
防衛予算(の財源)に国債は馴染まないとの指摘があるが、例えば、海上保安庁の船は建設国債でつくっている。自衛隊の船は国債ではだめ、(海保の船はいい)ということにはならない。防衛には研究開発費(の増額)が必要だ。日本の将来にも役立つ。我々の身近にある、例えば、インターネット、オートマチック車、コンピューター、ロケット、人工衛星、すべて軍事利用から始まり、民生利用に移った。車のオートストップ(自動停止)機能、高速道路のETCも日本のF-2戦闘機の開発時にできた技術だ。ボーイング787に使われている複合材も日本の戦闘機開発からの技術だ。防衛技術から先端技術が生まれる。日本の高度成長を支えた新幹線も、戦前に飛行機開発をしていた技術者が、戦後に飛行機をつくってはダメだと言われて、その技術で新幹線をつくった。防衛研究開発は将来の日本の産業の種になる。今の防衛関係の研究開発費は韓国の半分以下だ。世界から圧倒的に遅れている。防衛研究開発から次の時代の種が出てくる。どの国もやっていることだ。防衛研究開発は民生需要の基礎になるかもしれないという思いでお力を賜りたい。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
バイデン米大統領は先週、台湾有事で軍事的に関与する意思があると表明した。過去に二回同様の発言をしているが、米政府は台湾政策に変更はない、としている。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
台湾防衛をめぐり米政府はこれまで「あいまい戦略」をとってきた。バイデン大統領が軍事的関与を強くにじませる発言を繰り返し、その度にホワイトハウスが「台湾政策は変わっていない」と火消しをする。今回も同じ構図だ。確信犯的に次の新たな高度な次元のあいまい戦略に変えてきているのではないか。

小野寺氏:
おっしゃる通りだ。三度続けてということは、それなりに戦略的に言っている。中国にも台湾にもメッセージとして伝わっているだろう。バイデン大統領としては、ロシアがウクライナに攻め込んだのは、「軍を派遣しない」という自身の発言が間違ったメッセージとなったとの思いがあり、確信犯的に意思を示しているのではないか。

小川淳也氏(立憲民主党政調会長):
バイデン大統領は11月に中間選挙を抱えており、政治的な発言だろう。「あいまい戦略」は崩れていないと思う。米国が提唱したIPEF(インド太平洋経済枠組み)への台湾の加盟は見送られた。QUAD(日米豪印戦略対話)の共同声明でも「台湾海峡の平和と安定」は言及されていない。バランスをとりながら、一義的には中間選挙対策との色彩が非常に強いのではないかという受け止めだ。

松山キャスター:
要するに中国に強く出る政権なのだということを示すためか。

小川氏:
米国内向けに。

橋下徹氏(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事):
米国はウクライナをしっかり支えるという声をバンバン出して、ウクライナもそれに安心感を得ていた。しかし、米国は「軍事的介入はしない」という判断をした。台湾も軽率な判断をすることはないと思うが、米国が(軍事的関与の)メッセージを出したからといって冷静に判断することが重要だ。

小野寺氏:
米国は直接戦わなくても、台湾関係法で台湾に武器を支援する約束になっている。海に囲まれた台湾に武器を送ることは、中国が制海権を持っていれば、衝突事案になる蓋然性が高い。陸続きのウクライナとは違う。だから紛争を起こしてはいけない。台湾海峡で紛争を起こさないために米国のしっかりとしたコミットメントが必要だ。そのときどうするのかという日本の考え方もしっかり議論しなければいけない。

橋下氏:
米中衝突のときに日本は米国に対する後方支援をするのか。立憲民主党は平和安全法制に「反対」と言ってきた。

小川氏:
集団的自衛権の部分は手続きの瑕疵がある。

橋下氏:
では、後方支援はしないのか。

小川氏:
後方支援はあり得る。重要影響事態としてしっかり法的な手続きを取った上でだ。

橋下氏:
手続き的に違法だとしても平和安全法制に基づいて後方支援はするということか。

小川氏:
「あり得る」と申し上げている。そのときの政府の判断、党内での議論をふまえてだ。

日曜報道THE PRIME
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