障害者が寝泊まりしながら生活訓練を受け、社会での自立を目指す「宿泊型自立訓練」。利用者に合った「個別支援計画」を作り、日常生活をサポートする。
その支援施設が、全国でも珍しいホテルの中に誕生した。
コロナで“開店休業”のホテルを支援施設に
テレビ長崎・平仙浩教アナウンサー:
いい景色ですね、長崎の町が一望できます

眺望の良さは、ホテルならでは。広い客室を複数に分けて、一人暮らし用のスペースを作ってある。

長崎市の稲佐山にある長崎スカイホテルは、3階から5階を改装して、ホテルとしての営業も続けながら宿泊型自立訓練のサービスを始めた。

大浴場の利用や食事の提供など、ホテルのメリットを最大限生かし、障害者が自立した生活を社会で送れるよう、原則2年間にわたって家事のサポートや健康管理などをする。

以前から、スカイホテルでは福祉の分野に力を入れていて、館内には宿泊客のいない昼間の時間帯を活用したデイサービス事業所もある。

長崎スカイホテル・塚島博司代表取締役:
自立準備の施設が少ないと聞き、私たちのホテルを活用して事業のお手伝いができないかと

長崎スカイホテル・塚島博司代表取締役:
これには、コロナも大きく影響している。このホテルには50室あるが、この2年間ほとんどが開店休業で利用がない。ホテルは部屋が生きているので、部屋の利用がないと、ホテルは死んでしまう
自立目指し訓練…迷いなく語った男性の目標
ここで宿泊型自立訓練を利用している50代の男性は、日中はホテルで使うタオルをたたむ仕事などをしている。

ホテルには、障害者の就労を支援する事業所があり、企業などへの就職が難しい人たちを対象に、雇用契約を結ばなくても働ける仕事を提供している。
男性は長崎県外の出身で、高校を卒業したあと新聞配達や警備員、タクシードライバーなど職を転々としてきた。うまくコミュニケーションがとれず、同僚ともめたこともあったという。

男性利用者:
すぐやりたくなかったら、態度がブスッとする。ダメやなって。ここは部屋もいいし、食事もおいしいし、仕事に慣れるまでここにいようと
部屋を見せてもらうと、夜でも外から光が入る大きな窓にカーテンはない。男性は、なくても気にならないと話す。

テレビ長崎・平仙浩教アナウンサー:
段ボールの中にあるのは洗濯した服ですか、あちらは? 洗い物?
男性利用者:
いや、あれは洗い物ではなくて、洗濯したけど乾いたからポイと
身の回りの整理整頓は、自立するために必ず身につけなければならない。お金の管理にも大きく関わってくるからだ。

男性利用者:
(家計簿の)このどこかが合わんようになって、「おかしい、おかしい」って言って。「ああ、これ出てきたわい」って
窓のサッシの隙間から、お金が出てきたという。

男性利用者:
やっていけるのかなと思う時がある。仕事が見つかるか。一生懸命、頑張っていかないといけない

今、男性には目標がある。
男性利用者:
一人暮らしできたらいいかなと。親もそれを願ってます。大型か、大型2種を取って。取れたらいいですけど、取れなかったら代行(運転)か、タクシーに乗ろうかと

迷いなく語った具体的な目標。男性は日常生活をきちんと送れるよう、自分でできることをこれからひとつひとつ増やしていくつもりだ。
施設側「個々の強みを生かした支援を」
長崎スカイホテルにある宿泊型自立訓練の定員は20人で、4月現在で30代から50代の男性3人が利用している。 問い合わせは30件を超えている。
施設の管理者は、「生きづらさがありながらも、利用者の方には個々の強みもあるので、それを生かした支援をしたい」と話す。
今後は、利用者が就職したあとも関わっていけるようなサービスも提供していく考えだ。
(テレビ長崎)