長崎市に2022年3月、ユニークなホテル&カフェがオープンした。忙しい時間を忘れて、のんびりと過ごしてほしい…。この春大学を卒業したばかりの女性が祖母と手がける、癒やしの空間となっている。
レトロなミシン、手作りハンガーラック…懐かしさ漂う癒やしの空間
「足踏み式」のミシンに、木でつくられた踏み台は、どこか懐かしさを感じさせる。

長崎市油屋町にオープンしたのは、カフェ併設のホテル「ksnowki(クスノキ)」だ。元は築40年余りの住宅だったが、1日3組限定のホテルに生まれ変わった。

4階の部屋を見せてもらった。白を貴重とした部屋には木や籐で作られた家具など、オーナー・松尾綾さん(24)のこだわりが詰まっていた。

ksnowki代表・松尾綾さん:
自分の心情とか、日常的な忙しさとか、そういうものから切り離して、シンプルな素の自分に戻れるようなということを大切にしている

ハンガーラックは、松尾さんの手作りだ。
ksnowki代表・松尾綾さん:
長崎のビーチで取ってきた流木を麻ひもで吊るして、ハンガー掛けにした

そしてベランダに出ると、目の前には、丘の上に家が建つ長崎らしい景色が広がっている。
5つ星ホテルで接客学び帰国…大切な“おばあちゃん家”をリノベーション
松尾さんがホテルに興味を持ったきっかけは、大学生の頃に働いたゲストハウスだ。
ksnowki代表・松尾綾さん:
皆が集まって、旅やその土地のいいところをシェアできる場所を作っている人たちがいるんだと思ったことが、最初の始まり

2年間大学を休み、オーストラリアで過ごした。ワーキングホリデーを利用し、5つ星ホテルで一流の接客や「おもてなし」を学んだ。

そして帰国直前、最大の転機が訪れた。長崎で暮らす祖父・末夫さんが亡くなったのだ。
ksnowki代表・松尾綾さん:
先祖代々が住んできた場所なので、この場所が残るように、これからも大切に守っていけるようにって思いました

「おばあちゃん家」として親しんだ住宅をリノベーションすることになり、2021年10月に地元・福岡を離れて長崎へ。
今では、若きオーナーとして忙しい日々を送っている。

祖母・茂子さん:
いいことだから喜んでいる

Q.どんなことがうれしい?
祖母・茂子さん:
やっぱり一緒にいることでしょうね
店名に込められた想い 思い出の銭湯のように人が集まり癒やされる空間を
ホテルの名前「ksnowki」には、特別な思いが込められている。
カフェの一角を見てみると、そこには、滑車が付いた身長計が…

ksnowki代表・松尾綾さん:
私の高祖父が営んでいた温泉が、「楠木湯」という名前で

身長計は、この場所で営まれてきた銭湯で使われていたもの。家庭に風呂場がなかった時代、銭湯は1日の疲れを癒やす場であり、地域の憩いの場でもあった。
ksnowki代表・松尾綾さん:
「暮らそう、ノンキに」という、忙しい日常の中で忘れているような、ちょっとのんびりした気持ちだとか、そういうことを思い出せるような場所にしたいなと思って「ksnowki」って名付けました

代々引き継ぎ、大切にされてきた鏡などの家具は、インテリアとしてカフェや客室を彩っている。

祖母・茂子さん:
「そんな古いのをどうするね?」と言ったりしたけど
ksnowki代表・松尾綾さん:
なじんでいたので、ちょっと「意外といけるじゃん」ぐらいな気持ちでしたね。「小さい頃の思い出を思い出させてくれました」というお客さんもいて、良かったなと思いますね

当時、銭湯に通っていた常連客も、茂子さんに会いに、時折カフェを訪れる。
女性客:
(銭湯は)社交の場ですよね、昔の。裸の付き合い。ホント大昔になりましたね
祖母・茂子さん:
皆さんから愛されるお店になったらと、いつも思っている

ksnowki代表・松尾綾さん:
心のよりどころというか、人が集まるような場所になれば良いなとも思うし、大好きな長崎でその一部になれたらなって思ってます

かつての銭湯のように、ゆったりとした時間の中で人を癒やす憩いの場所にしたい…。世代を超えて、思いはつながっている。
(テレビ長崎)