2022年8月で築城400年を迎える福山城の改修工事「令和の大普請」が進んでいる。元の姿に戻そうと行われている大規模な工事には、地元・福山市民の熱い思いが込められている。

シャチホコもリニューアル

JR福山駅の北側にそびえる福山城。8月に築城400年を迎える。

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今はリニューアルの真っ只中。天守は足場に覆われ、耐震改修工事が進められている。

工事現場をエレベーターで上がっていくと…そこは、福山の街を見下ろす福山城の屋根の上。そこで、真新しいシャチホコをチェックしているのは、地元の屋根専門施工会社・藤井製瓦工業の藤井孝浩さん。

藤井製瓦工業・藤井孝浩さん:
今回は再建当時の瓦を取り替える工事をしました。鯱(シャチホコ)も揺れとか振動があったせいか、一部分破損しているところがありましたので、今回の工事で新しく取り換えました

城の天守だけでなく、周囲の櫓(やぐら)なども併せて行われた瓦の補修。1年半に及ぶ作業も大詰めを迎えている。

藤井孝浩さん:
50年以上経っていて、瓦自体の劣化はそう大きくなかったですが、瓦以外の部分ですね。土の部分とか釘が錆びていたりとか劣化がありましたので、今回の工事で耐震性を高めることができたのはよかったと思います

福山城の天守は1945年の空襲で焼失し、現在のものは1966年に鉄骨鉄筋コンクリートで再建されたもの。50年以上を経た城の修復作業では、職人としての気づきも多かったそうだ。

藤井孝浩さん:
当時、職人がこういうところに手をかけてやっていたとか、こういう思いでしたのかなという当時の職人の思いを考えながらの工事でもあったので、瓦も50年以上経っていても、いまだにきれいで強度が保たれているということは、瓦造りから丁寧にされていたのかなと感じました

福山の歴史を受け継ぎ、次の50年、100年先に誇れる仕事をしたい。そんな思いで、瓦の修復を手掛けている。

藤井孝浩さん:
福山城は福山市のシンボルですので、こういった建物の瓦の工事に携われることは福山市民としては誇りに思うところ。いつかは福山城の工事をやりたいと思っていたので、今回の工事はありがたいと思う

築城当時の”ヒミツの守り”を復元

今回の修復工事で注目すべきなのは、天守の北側。「真っ黒」な壁面。ここには鉄板が張られている。

福山市文化振興課・吉森五王太さん:
福山城は、築城当時に北側の防御が薄かったと言われていて、そのために北側に鉄板張りがされていたと言われていて、その復元をしています

こうした壁一面に鉄板が張られた天守は他に例がないとのこと。今は表面が滑らかだが、これから伸肌状の凹凸や、年月を経た質感を再現した塗装が施される。こうした焼失前の姿を取り戻すことも、今回の工事の大切な目的だ。

着々と改修が進む中、天守の周りでがんばる人も。ボランティアガイドとして、城の案内をしている高橋加造さん。ここには、福山城ならではの歴史があると言う。

福山城博物館友の会・高橋加造さん:
元和元年(1615年)に一国一城令と武家諸法度というのが出来て、新しく築城してはならない、城や石垣を直す時は幕府に届け出て許可を得ないといけない。その後の1622年に築城されたということは、違反してるということ。
しかし、幕府の政策で築城が認められた特別な城だった。だから福山市民は、もっと誇りをもって福山城を紹介してもいいと思う

説明に力が入る高橋さん。その言葉には、地元福山の人間として城に対する想いが込められている。

高橋加造さん:
私は戦争中に生まれ、1歳5ヵ月だったので記憶はありませんが、当時女学生だったおばに聞くと、私の家も焼けたけれど、自分の家が焼け落ちたことより福山城が焼け落ちたことが悲しかったと

高橋加造さん:
市民にとってお城はシンボルだったので、焼けてしまったのはとても悲しかったと言っていました。福山市民にとっては宝なんですよね

福山城の改修工事は2022年6月末まで続き、8月28日にはグランドオープンが予定されている。

(テレビ新広島)

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