自民党の佐藤正久外交部長は8日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、「中距離ミサイルを北海道に配備すべきだ」との自身の考えについて、「極超音速(兵器)のような相手が打ち落としにくいもの、あるいは終末段階(降下突入時)で回転するようなものであれば、(配備は)少ない数でよい」と述べた。

一方で、「単純軌道のものであれば、相当数打ち落とされるから、ある程度数を持たないといけない」とも話した。

佐藤氏は、訪米中の3日、米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のイベントに出席。「射程2,500kmの移動式地上発射型中距離ミサイルを北海道に配備すべきだ」との考えを表明した。

番組で佐藤氏は、中国が日本を射程に入れる地上発射型短・中距離弾道ミサイルを約1,900発保有しているのに対し、日米の保有数はゼロだと指摘。
中国、ロシア、北朝鮮が軍事的に連携する「複合事態」を考えれば、敵の射程圏外から攻撃できるスタンドオフミサイルを空中、海上、水中(潜水艦)に加え、陸上からも発射できるようにすることが必要で「北海道はひとつの有力な選択肢だ」と主張した。

「(中距離ミサイルを)北海道に置けば、スタンドオフとして尖閣諸島を守ることもできる。中国もロシアも一定程度カバーする。西日本に移動させれば、相手領域の奥まで届く」と説明した。

番組で同席した立憲民主党の渡辺周衆院議員(元防衛副大臣)は、ロシアによるウクライナ侵略を受けて「脅威は高まっている」として、自民党が提言した「反撃能力の保有」に一定の理解を示した。
そのうえで、党として「潜水艦能力の向上」を提言する方向で検討している、と語った。「今の21隻態勢を増強することで地理的なハンディを詰めることができる」と述べた。

番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(弁護士、元大阪府知事、元大阪市長)は、「(今の国際状況を見たときに)反撃能力に制限をかけたら国民を守れない」と指摘。装備面や能力面に制約を課すのではなく、運用面で憲法9条の制約をかける考え方で反撃能力を検討すべきだ、と強調した。

以下、番組での主なやりとり。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
自民党が保有を提言した「反撃能力」は対象をミサイル基地に限定せず「指揮統制機能も含む」としている。佐藤正久外交部会長は3日、「中距離ミサイルを北海道に配備する」案を提唱した。「対中国、ロシア、北朝鮮の抑止のための配備」、「普段は尖閣を含む南西諸島防衛用」、「射程2,500km、移動式が望ましい」とのことだ

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
佐藤氏のこの案についてどう考えるか

渡辺周氏(立憲民主党衆院議員・元防衛副大臣):
中距離ミサイルの北海道への配備について、国会や政府でいまそのような議論があるわけではない。ウクライナ侵略を断行したロシアの日本に対する脅威は高まっているとの認識は一緒だ。私たちが策定中の安全保障戦略では、潜水艦能力を向上させることを検討している。先日、ロシアは日本海でSLBMを発射した。北朝鮮も昨日潜水艦からミサイルを発射したという。日本の今の潜水艦21隻態勢をもう少し増強しなければいけない。それにより地理的なハンディを詰めることができる。探知や追尾をし、相手が攻撃してくれば当然魚雷で相手を攻撃する。日本海やオホーツク海、東シナ海、太平洋に囲まれたわが国を潜水艦部隊の増強で守る。宗谷海峡も津軽海峡もロシア原潜の通り道だ。北方領土は軍事要塞化しており、潜水艦能力を向上させて我が国を守ることが大事だ

橋下徹氏(コメンテーター、弁護士、元大阪府知事、元大阪市長):
潜水艦能力の向上は戦術面だ。自民党が提言する戦略面として反撃能力を高めていくことにも賛成か

渡辺氏:
第一弾撃たれた時は日本有事だ。その有事の時に「ここまではいい、ここまではいけない」などという議論が果たして現実的だろうか。野党というとすぐに「それはダメだ」と言いそうなイメージもたれているが、ウクライナ侵略を受け、プーチン率いるロシアを脅威だと認識している。当然わが国はこの脅威から身を守るための現実的な術を用意しなければいけない。ただ、敵基地攻撃能力といっても、基地かどうかはわからない。潜水艦発射型であれば、今は対応できない。相手が攻撃に着手し、あるいは、世界や防衛省・自衛隊でも研究されているが、着手する寸前に相手をまひさせるような能力を持つ。「攻撃されてからでは遅い。しかし、着手する前に攻撃することはできない。そのグレーゾーンにどう対応するか」は、技術の向上で埋めるしかない

松山キャスター:
自民党の提言では「指揮統制機能」という表現で現地司令部的なものも含めて反撃対象にするという。佐藤氏の案は射程2,500kmの中距離ミサイルを北海道に配備するというものだが、2,500kmでは、モスクワの指揮統制機能までは届かない

佐藤正久氏(自民党外交部会長・参院議員):
法理論上は自衛権の範囲は地理的制限ではないが、現実的に大陸間弾道弾のような戦略レベルのものを持てるのかというと、技術的な問題、現実問題として議論が必要だ。反撃能力はあくまでも日米(同盟)の枠内での保有で、「拒否的抑止」の範疇だ。一撃打たれるまで何にもやらないというわけではない。今まで同様、「座して死を待つ」というわけではない。相手国がミサイル発射をするというのが何らか分かれば、当然、一撃される前に反撃すると(アメリカで)説明した。「歓迎する」「協力する」というのがアメリカ側のスタンスだ。CSISでは、スタンドオフミサイルについて説明して、地上発射型だけでなく、空中発射型、水上発射型、あるいは潜水艦(水中)発射型も必要だと(述べた)。中国は地上発射型短・中距離弾道ミサイルだけで約1900発持っている。日米はゼロだ。巡航ミサイルまで入れると約2500発対ゼロという状況だ。撃ち落とすことが難しいミサイルが出てきた以上、ある一定程度の反撃力をわれわれも持たないといけない。今500kmから900kmのスタンドオフミサイルを国産、あるいは輸入で対応しようとしているが、とても900kmでは足りない。将来的にもう少し長いものを日米で共同開発する、あるいは自国で開発する場合、日本は非常に広く3000kmあるから、北海道に置けば尖閣諸島を守ることもスタンドオフとしてできる。西日本に移動することができれば、相手領域のさらに奥まで届く。ロシアも中国も、北京も一定程度カバーできる。「複合事態」を考えれば、北海道は一つの有力な選択肢だ。極超音速(兵器)のような相手が打ち落としにくいもの、あるいは、終末段階(降下突入時)で回転するようなものであれば、少ない数でいい。単純軌道のものだと相当打ち落とされるから、ある程度数を持たないといけない。「反撃能力」は言葉遊びではなく、実際具体的にどういうものを持つのかという議論を現場レベルの意見を聞きながら、政治が組み上げていくことが大事になる

松山キャスター:
「反撃能力」ではどこまでの能力を持つべきなのか

橋下氏:
憲法九条論がずっとベースになってきた。敗戦直後の日本のあの状況からすれば、憲法九条により装備面で制約をかけて、侵略戦争にならないようにという、その歴史的経緯については、僕は肯定している。しかし、今の国際状況を見る時、装備面で、能力面で制約をするのではなく、(装備を)使う時に憲法九条の精神を政治家にあてはめていく。何が言いたいかというと、反撃するための能力に制約をかけてしまったら国民を守れない。反撃するための能力はどういうものなのかということは、法律家の視点から抜けて、政治家の視点でしっかり議論してもらいたい。ただ、究極の権利行使であることを少し懸念している。持つ時にではなく、使う時に憲法九条の制約がかかるという新しい憲法論、安全保障論、こういう融合論で国会議員には反撃能力をぜひ検討してもらいたい

佐藤氏:
非常に大事なポイントだ。いままで自衛権というのは、必要最小限の範囲で、ほかに手段がない時にやむを得ず使うという縛りをかけてきた。そこには誤解がある。国民の命や領土を守るために「必要最小限の武力」ということは逆に言うと「不十分ではダメなのだ」ということ。国民の命を守るために不十分な防衛力ではだめなわけで、それは必要最小限という「必要な防衛力」だ。「反撃」は当然必要な防衛力の一つだ。歯止め、使い方、国会の関与、着手の条件、サイバー、インテリジェンス、さまざまなものを組み合わせながら議論し、仕掛けを作っていくことが極めて大事だ。

橋下氏:
「必要最小限」について、これまでの与野党の議論では、政府与党が何かを言えば、野党は「反対だ」という議論になっていたが、「最小限」というのは日本の解釈であって国際法の自衛権は「必要性」と「均衡性」だ。「反撃能力」、「安全保障にとっての必要な力」について与野党で積極的に建設的な議論をやってもらいたい。

渡辺氏:
政府の国会答弁でも明らかなように「必要最小限度」は定量的に出せるものではない。その時々の国際情勢、科学技術の進歩により変わるものだ、ということは私たちもわかっている。昭和の時代と異なり、まさか最新鋭の兵器がこれだけ出てきて、北朝鮮が核を持ちミサイルを飛ばす時代になってしまった中で、当然現実的な反撃力を持たなければ国家がなくなってしまう。そこはわかっている。国会で専門家が冷静に理知的に話し合う必要がある。「行け! 行け! ぶっ放せ!」みたいな、今ちょっと感情論で「わーっ」となっているから、そうではない、と。ある程度経験した人たちできちんとした議論をし、考え方を共有できるような一つのルールを作るべきだ。歯止めがなくなるのが一番怖い。

橋下氏:
政府対国会議員という関係ではなく、国会議員同士の議論で専門家も入れてまとめてもらいたい。

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