私がお伝えしたいのは「韓国のタクシー難民問題」です。

約2年ぶりに飲食店の営業時間など、新型コロナに関する規制がほぼ撤廃された韓国。街には多くの人が繰り出し、賑わいを見せています。

一方、長引いたコロナ禍でタクシー運転手が激減した結果、タクシーが足りず深夜の帰宅難民が続出しているんです。

ポイントはこちら。「1時間待ちも当たり前?真夜中のタクシー争奪戦」注目です。

【注目ポイント・記者解説】

韓国全国タクシー運送事業組合によると、2022年2月時点の法人タクシーのドライバー数は7万4754人で、コロナ禍前の2019年12月と比べると2万7000人以上減少しています。

約2年にわたって続いた、飲食店の営業時間や人数制限によってタクシーの利用客が減り、収入や待遇が良く需要が増えたデリバリー・宅配業界に人材が流れたとされています。このタクシー不足は首都ソウルで特に深刻で、1時間待ってもタクシーが捕まらず、数時間かけて徒歩で帰宅する人も少なくありません。

ソウル市は、タクシー運転手の営業時間制限を緩和するなどの対策に乗り出した他、深夜バスを増便するなどしていますが、交通手段の供給不足は依然として解消されていません。

韓国のタクシーは初乗り3800ウォン(約380円)と日本に比べ非常に安く、その分運転手の待遇もいいとは言えません。今回の問題を巡っても、運転手の待遇改善がなければ供給不足は解消できないとする声も挙がっています。人出の増加とともに、いずれタクシー業界にも人が戻ってくる可能性はありますが、相当の時間を要すことになると見られます。

コロナ禍前の生活を完全に取り戻すためには、規制緩和を一方的に進めるだけではなく、取り巻く環境整備も並行しておこなっていく必要があります。

(FNNソウル支局 熱海吉和)

熱海吉和
熱海吉和

FNNソウル支局特派員。1983年宮城県生まれ。2007年に仙台放送に入社後、行政担当などを経て2020年3月~現職。辛いものが大の苦手で韓国での生活に苦戦中。