リモートワークの普及やフリーランス人口の増加と共に、事務所や打ち合わせスペースなどを共有する「シェアオフィス」が増加している。異業種の人たちが集う名古屋のシェアオフィスを取材すると、自分らしい働き方を模索しながら、それぞれの夢に向かう人たちの姿があった。

映像クリエイターなど1日に約30人が利用

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名古屋駅から徒歩10分の場所にあるコワーキングスペース「プロコワ」。オシャレなフロアには、共用スペースに打ち合わせスペース、1人用の専用デスクなど全65席がある。ネット環境やドリンクコーナーも完備され、誰でも利用することができる(一般660円~/1時間、会員5500円~/月)。

経営者(31):
経営者で、ここを拠点にしています

イラストレーター(26):
企業さんのイメージキャラクターを作ったり、イラストを制作したり

会社員(27):
1人より、こういった空間でやる方がはかどる

映像クリエイターやWEBデザイナーなどを中心に、1日約30人が訪れる。午前8時、リモート会議をする男性の姿があった。

メディア関係の男性(24):
シンガポールに住む日本人の方が日本語情報求めているので、情報発信をしている会社

IT企業の会社員の女性も。

ITベンチャーの女性(27):
大阪が本社なんですけど、いま支店の立ち上げで短期間で来ている。会社はまだ30人くらいですけど、ここの立ち上げが終わったら次は東京を予定しているので、東京に行くと思います

名古屋支店の新規開拓など、事務所代わりに利用する人が多いという。

「ここは出会いの場」不動産会社と映像クリエイターがコラボ

半個室のスペースで作業をする映像クリエイターの内海大輔さん(37)は、2019年にCM制作会社を退職。ここを拠点に、企業のプロモーション動画を制作している。

内海大輔さん:
編集なんて家でできるけど、あえてここに。目的持っている人たちとつながれるから

シェアオフィスは作業場だけでなく“出会いの場”。内海さんは、ここで知り合った不動産会社の社長と、ある事業に乗り出した。

内海大輔さん:
5月から、西区の方でクリエイターの子たちが住めるシェアハウスを作ろうと思って

新規事業はシェアハウスの経営。名古屋市西区にある築25年、3階建ての空き家をリフォームし、6~7人が同居できるシェアハウスを5月から始める予定だ。この日は、不動産会社の社長と内装について話し合った。

内海大輔さん:
空き家で新しいことをしたい。ただ貸すだけじゃなく、尖った使い方したいって話をしていて

不動産会社の社長:
空き家の運用は売却するか賃貸するかしかなかったけど、まさかこういったシェアハウスに変わっていくなんて

映像クリエイターと不動産会社の社長がタッグを組み、“新形態のシェアハウス”を目指している。

内海大輔さん:
住むだけじゃなく、愛知県、東海エリアのクリエイターだったり、企業の人も。ここに人が集まって何か新しいプロジェクトが、全然違う発想で生まれたりするといいな

「この場所をアイデアが集まる場所にしたい」と内海さんは未来を描く。

宣伝ノウハウがなく…酒かすチョコレートの売り方を相談

シェアオフィスに戻ると、打ち合わせスペースでは試食会が開かれていた。

試食していたのは、酒かすのチョコレート「あてのしょこら」(1836円)。

考案したのは、飲食店などから瓶の回収をしている小島英一郎さん(52)。回収業者がなぜ酒かすのチョコレートなのか?

小島英一郎さん:
(コロナで)飲食店が止まっていて、売るものがないので。お客さんの酒蔵さんが「酒かすって絞った後出るけどもったいない」と…。酒かすを使って何かしていければって

コロナで打撃を受けた酒蔵と、酒かすを再利用したチョコレートを開発。しかし、小島さんにはブランド戦略や宣伝方法のノウハウがない。そこで、WEBデザイナーや広報のプロが集うシェアオフィスを訪ねた。

小島英一郎さん:
全く畑違いの事をしようとしているので、お力を頂きながら。1人では100%終わっていたので、本当にありがたい

SNS配信やホームページのデザイン構成を練り、より多くの人へ届ける。

フリーランス人口は大幅増 シェアオフィスの会員は100人に

久米由浩さん(47)さんは20年勤めたCM制作会社を辞め、2018年からこのシェアオフィスを運営している。

久米由浩さん:
業界の中だけでは活躍できていない人を結構見て、楽しそうに仕事をしている人がまわりにあまりいなかった。もっと色んな人が才能豊かに働いて、自由な仕事をできる環境を作りたいと

映像クリエイターやWEBデザイナーなどを中心に、シェアオフィスの会員は約100人になった。

テレワークや副業などが普及するコロナ時代。2020年に約1000万人だったフリーランスの人口は、2021年に1500万人以上と大幅に増えている。

「名古屋のお座敷文化を残したい」相談に訪れる舞妓さんも

夕方、シェアオフィスには似つかわしくない姿があった。名古屋の芸者でつくる名妓連(めいぎれん)組合の舞妓・早紀さん(24)は、2018年のデビュー以降、名古屋の老舗料亭などでおもてなしを続けてきた。

しかし、コロナの影響でお座敷の数は激減。この日は新しい企画の相談に訪れていた。

早紀さん:
名古屋に芸舞妓さんがいることが、名古屋に住んでいる方でも知られていなかったりするので。新しい扉を広げようよって

ここに通う知人の映像クリエイターと連携し、日本の伝統芸能、舞や唄のイベントを計画している。

「このご時世で芸舞妓をやめてしまう人も多く、名古屋のお座敷文化を残していくためにも、普段来ない方に足を運んでもらいたい」と早紀さんは話す。

自分らしい働き方を模索 シェアオフィスから夢に向かう人たち

銀行員をしていた女性は、子供が1歳になったタイミングでコピーライターとして独立した。

自営業の女性(30):
コロナになったときが起業で…。収入的にはシビアに向き合っていかないといけないけど、自分がやりたいと心から言えることを、戦略を練ってやっていることがすごく面白い

バリスタから英会話講師へ転身した男性は…。

英会話講師の男性(27):
オーストラリアに住んでいた経験があったので。業種が全然違ったりするので、共用(スペース)で話したりすると頑張ろうって思います

異業種の人たちが集い、働き、つながる場所。名古屋のシェアオフィスを取材すると、自分らしい働き方を模索しながら、それぞれの夢に向かう人たちの姿があった。

(東海テレビ)

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