自民党安全保障調査会の小野寺五典会長(元防衛相)は24日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、国家安保戦略(NSS)など戦略3文書の改訂に向けた政府への提言案をまとめた背景について説明した。

小野寺氏は日本を取り巻く安全保障環境について「中国、ロシア、北朝鮮は連携している。(3カ国が同時に軍事的行動を起こしたり、同時に大災害発生が重なったりする)複合事態があるかもしれないという危機感を日本はもっとも持たなければいけない」と強調した。

自民党安全保障調査会は提言案で「反撃能力(「敵基地攻撃能力」から改称)の保有」を明記し、攻撃対象を「指揮統制機能等を含む」とした。防衛費については、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%以上の水準を念頭に「5年以内」の達成を目指す方針を盛り込んだ。

小野寺氏は防衛費引き上げについて「NATOを含む仲間の国はそれぞれ努力している。自分たちの防衛力を高めないと仲間として一緒に守れないのではないか。それに向けて努力していくことは日本の国際的立場として大事だ」と主張した。

これに対し、立憲民主党の小川淳也政調会長は番組で「前のめりで議論が荒っぽい」と指摘。反撃能力について「先制的な攻撃になる可能性がある。その尻を拭く形でアメリカが出動するのか」と述べ、「盾と矛」の役割分担をしてきた日米同盟への影響を懸念した。

小川氏は「実力装備優先の議論がかえって緊張を高めることや、日本が長年大事にしてきた平和国家としてのブランドを毀損する可能性もある」と話した。その上で「私たちは国内の慎重な意見を代弁する責任がある」として、慎重で抑制的な議論を求めた。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
自民党(安全保障調査会)の提言案では「敵基地攻撃能力」の名称を「反撃能力」に変えた。

小野寺五典氏(自民党安全保障調査会長、元防衛相):
戦車対戦車が距離3kmで向かい合い、相手の戦車が自衛隊の戦車に撃ってきた。反撃のために打ち返すのは当たり前だ。距離30km離れた相手の軍艦が日本の海上自衛隊の艦船に撃ってきた。海上自衛隊の船が自分を守るために撃ち返すのは当たり前だ。1,000km離れたところから弾道ミサイルが日本に飛んできた。日本が壊滅的にやられてしまうかもしれない。反撃するために1,000km離れた相手のところに撃ち返す。問題は相手の領土内ということ。同じ反撃だ。ただ、相手の領土にあるところだけは今まで政治的に判断してこなかった。なぜかといえば、以前はそのような装備がなかったから。しかし、そうした装備が主流になれば、やむを得ない形で食い止めないと日本を守れない。憲法で許されている反撃能力の範囲で、撃ってくる相手の領土にあっても、やむを得ない形で相手の装備や指揮統制機能を止めないと日本は守れない。そういう意味で反撃能力が必要だと私どもは提言している。

小川淳也氏(立憲民主党政調会長):
私どもも法理念的には全面否定しない。専守防衛の範囲内でやられるまでずっと待つということであってはならないとの考え方だ。ただ、今回の自民党の考えの取りまとめは、ずいぶん前のめりだし、議論が荒っぽいという感じはしている。小野寺さんの話だと、つまり日本は弾道ミサイルを持つということか。

小野寺氏:
いや、違う。弾道ミサイルではない。現在日本が持っているのは長射程のミサイルで、弾道ミサイルではない。どういう(反撃)能力を持つかは、今後自衛隊がしっかり対応する。現時点の想定は通常の長距離ミサイルだ。

小川氏:
射程約900kmのスタンド・オフ・ミサイルということか。

小野寺氏:
長距離まで届くものを持たなければならない。自衛隊員が安全に任務を遂行するためには、対空脅威の外から攻撃する必要がある。そうでないとやられてしまう。隊員が安全に任務を遂行し、相手の能力を食い止められるものだ。相手の領土から直接攻撃してくる場合、そこを止めないとやられ続ける。それを何とかさせてほしいということだ。基本は変わらない。

小川氏:
今のウクライナ情勢に照らせば、つまりウクライナ軍はモスクワを攻撃すべきだという議論だ。いかほどの覚悟と、いかほどの犠牲を伴ってその議論をしているのか。防衛費「対GDP比2%以上」の財源はどうするのか。子ども予算を減らすのか、教育予算を減らすのか、増税するのか。5年間で10兆円だ。理念的には全面否定しないが、どこまでリアリティーをもっているのか。この議論の出元は安倍晋三元首相だ。煽る安倍氏と煽られる自民党という構図に対して、私どもには抑制的な議論をする責任がある。

小野寺氏:
あまりにも議論が乱暴すぎる。属人的な話ではない。

小川氏:
私の質問に答えてほしい。弾道ミサイルを持つということなのか。5兆円の防衛費増はどうやって実現するのか。

小野寺氏:
基本的には長射程のものを持つということ。さまざまな装備がある。今まずこの問題で議論しなければいけないのは、なぜウクライナがロシアから攻められたのかということ。2つ理由がある。1つは、プーチン大統領は「ウクライナは弱い」と考えた。戦力の差があると。(ロシアが)攻撃をしても(ウクライナは)対応できないと思われている。もう1つは、やはりアメリカにも責任がある。早い時期にバイデン大統領が(ウクライナと)一緒には戦わないと言った。プーチン大統領から見れば、ウクライナは軍事的には弱く、仲間の国もいない、だから、攻撃をしても大きな抵抗もなく、自分たちの意思を遂行できる、と考え、手を出した。私たちはこれからもずっとこの国を平和な国にしたい。どの国とも戦争したくない。しかし、実際、力の差があり、仲間がいなかったらウクライナのようにやられるのが現状だ。だとすると、日本がなすべきは、まず自分の(防衛)力をしっかりとすること、そして仲間の国と一緒になって国を守ること。NATOを含めて仲間の国は今それぞれ努力をしている。自分たちの防衛力を高めないと、仲間として一緒に守れないのではないか。それでNATO基準GDP比2%以上という数字を出している。それに向けて努力していくことは日本の国際的立場として大事なことだ。

橋下徹氏(番組コメンテーター、元大阪府知事、元大阪市長):
日本の安全保障議論で大混乱しているのは、戦争前の話と戦争(開始)後の話がごっちゃになっているから。弾道ミサイルを日本が持ったからといって、モスクワを攻撃するかどうかというのは戦争(開始)後の話だ。その時には抽象的な理念よりも、目の前の国民のことを考えて、国民が犠牲にならないような軍事力の行使をしなければいけない。(弾道ミサイルを)持ったからといって必ずそれで攻撃するかどうかは別の話だ。それはきちんと政治が国家の破滅に至らないような武器の行使の仕方をしなければいけない。ただ、戦争前の話で、小川さんに考えていただきたいのは、憲法9条問題、自衛のための措置に関する砂川判決の「国際情勢の実情に即して適当と認められるものを選ぶことができる」ということ。政治家がきちんと適当なものを選ぶはずがいつの間にか内閣法制局の解釈で「必要最小限」の枠を勝手にはめてしまった。自衛権はもともとは必要性と均衡性、即時性だ。均衡性は相手に合わせてこちらも力を持つと。戦争が始まらないように、相手の力に合わせてこちらもそれなりを持つということが、いつの間にか内閣法制局の「必要最小限」になってしまった。相手が弾道ミサイルを持つのであれば、こちらも持つべきだ。相手が長射程(ミサイル)を持つのなら、こちらも持つ。そのことによって戦争を防ぐ。ただ、いざ戦争が始まり、それを使うかどうかは国民が犠牲になるか、ならないかをもとに判断する。この整理は必要だ。

小野寺氏:
「必要最小限」という言葉があるが、自衛隊が災害救助に行って国民を守っている時に「必要最小限にしてほしい」とは誰も言わない。災害救助でも国民を守る。日本が攻撃された時、日本の国民があのように(ウクライナ国民のように)やられている時には、自衛隊は全力で国民を守る。必要最小限というのは「必要な時には合理的な範囲の中で対応する」ということ。

小川氏:
白地から議論するのならそのとおりだ。戦後77年、日本は日米安全保障条約体制下で特殊な歴史を歩んできた。仲間がいないと攻撃されるという議論に関しては、日米安全保障条約という確固たる条約がある。打撃力をアメリカに頼った状態で、日本としては専守防衛、盾の役割をやっていくという関係性の下で77年歩んできた。それで言うと、相手領域内への打撃力を日本が持つと、それが先制的な攻撃になる可能性がある。その尻を拭く形でアメリカが出動するのか。
            
小野寺氏:
それは違う。専守防衛、盾と矛の関係が今までなぜ成り立ってきたか。弾道ミサイルなどの装備が出てくる前は、爆撃機が来る、戦闘機が来る、戦艦が来る、というのは時間があった。「あ、来ているぞ」、「危ないぞ」という時に、まずは自衛隊が守っている中で、アメリカが大きな打撃力を行使してくれる。だからこのときは盾と矛の軍事合理性はあった。今は防衛装備が全く変わり、十数分で(弾道ミサイルが)飛んでくるようになった。こうなると、日本が攻撃された、アメリカ大統領に電話して「助けてほしい」。アメリカ大統領は閣議を招集して議会関係者に説明して、「わかった、行く」と言ったら数日かかる。日本は焦土となってしまう。この問題の根幹は、日本が変わったのではなく、国際社会と攻撃のされ方が変わったということ。攻撃のされ方が変わったことに対応するために、やむを得ない形で、まずはここを食い止めなければ、アメリカの最終的な来往が待てない。こういう緊迫感があるので、反撃能力は必要だ。

小川氏:
一方、実力装備優先の議論がかえって緊張を高めることや、長年日本が大事にしてきた平和国家としてのブランドを毀損する可能性もある。そういう慎重な意見も国内にはある。私たちはそれを代弁する責任がある。あえて慎重に抑制的な立場から議論をさせてもらっている。もう1つ、これだけ是非議論させてほしいのだが、まさになぜ戦争に至ったのかという外交プロセス。プーチン大統領を許すつもりはないし、言語道断だと思っている。しかし、アメリカのミサイル防衛制限条約を一方的に撤廃したブッシュ政権の歴史。そして、中距離核戦力を全廃したトランプ政権の歴史、そして、NATOの国境線がどんどん旧ソ連の国にまで及んできた歴史。ジョージアとウクライナに「NATOに入れ」と言ったのは、当時、ブッシュ政権下で国防産業との関わりが深かったチェイニーだ。メルケル氏(ドイツ前大統領)が、それはロシアを刺激しすぎるからダメだと言っていた。こういう国際的な全体バランスを考える外交努力や国際対応を積み重ねてきたのか。また、ゼレンスキー政権も相当ロシアに対しては強行的な姿勢をとってきた。

松山キャスター:
小川さんから「自民党の中での議論は前のめりすぎだ」との意見があったが。

小野寺氏:
まず訂正しておきたい。アメリカがミサイルの協定から出たというのは、中距離のミサイルで、各国とも中距離のミサイルを持たないようにしようと約束したのだが、中国は入ってないためどんどん持つようになっている。ロシアは実は、別な形で作っている。今、東アジアでの中距離弾道ミサイルは、ロシアと中国で1,900発だ。それには日本を狙っているものも含まれている。アメリカと日本は1発もない。ゼロだ。勝手に抜け穴でやってる人たちに対抗するために、アメリカが(条約から)抜けて同じようなものを持たなければ、抑止力にならない現実がある。あくまでも平和を守るために自分たちが力を高めなければ、だめだというのが、今回のウクライナ情勢が示す現実だ。こちらから攻撃することはない。やられた時にやるということだ。日本の周りには中国、ロシア、北朝鮮がある。今回、自民党は脅威見積もりを変えた。この3カ国は連携している。世界でこういう複合事態がもしかしたらあるかもしれないという国は日本だ。日本が一番いま、危機感を持たなければいけない。

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