人新世(ひとしんせい)。人間によって環境破壊、気候変動が進む現代を表す言葉だ。北海道の 若者とともに気候変動を考える。気候変動の行動を求める、15歳の「たったひとりのストライキ」。
"大切な人"に気候変動の心配ない未来を…「学校ストライキ」
北海道十勝地方・幕別町に住む15歳、角谷樹環(かどや・こだま)さん。たった一人でJR帯広駅前に立つ。
この記事の画像(17枚)角谷樹環さん:
気候変動のために活動している人がいるということを伝えたい
温暖化などへの対策を求め、世界の若者がこうした活動を始めている。「学校ストライキ」と呼ばれる。大切な人の未来のために、立ち上がった少女の旅路。
幕別町に住む15歳、角谷樹環さん。環境のため、家族は電気を極力使わない暮らしをしている。
大規模な山火事や海面上昇…"破壊された環境"は「絶対に戻ってこない」
気候変動に関心を持ったのは小学生の時。カナダ人の少女の訴えを目にしたことがきっかけだ。
角谷樹環さん:
ここがすごく印象に残っていて、(環境が破壊されたら)"永遠に戻ってこない"というのが…絶対に戻らないというのは怖いなと思いました
温暖化などの気候変動で、世界では大規模な山火事や干ばつ、氷河が溶けて海面が上昇するなどの影響が出ている。
角谷さんは2021年9月、気候変動対策を求める団体に参加。10月の衆院選では候補者に温暖化対策を訴えた。
角谷樹環さん:
私たちは気候変動で死にたくはありません。しかし、そのことを政治に反映することができず、このままでは気候変動によって誰か、あるいは自分たちが死ぬことを見ることになります。みなさんには、そのようなことにならないようにする責任があるはずです
世界の若者たちも声を上げ始めている。角谷さんと同じ15歳で学校ストライキを始めたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさん。国連で対策を怠っている大人に対し、怒りをあらわにした。
グレタ・トゥーンベリさん:
私たちは人類絶滅の入り口にたっているのです。あなたたちが話すのはお金のことばかり。どうやって経済を発展させるかというおとぎ話。恥を知りなさい
経済成長が引き起こす"深刻な格差"と"気候危機"
2020年に出版され、45万部のヒットとなっている斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』。気候変動を止めるためにも、経済成長を追い求めるのをやめるべきだと訴える。
斎藤幸平さん:
私達は経済成長を続けていくことこそが、豊かさや社会の繁栄にとっての基本的な、あるいは絶対的な前提であると考えてきたし、考えるだけの理由もあった。
ところが、今そうした経済成長が深刻な格差や気候危機というものを引き起こしている。私達も日常の生活において変化を起こしたかというと、マイボトルやマイバッグをちょっと持っただけで満足してしまっている可能性がある
災害級の"大雪"に"大水害"…「残された時間は多くない」
角谷さんは2022年4月、札幌の専門家を訪れた。ここでは、道内の気候変動や環境への影響を調べている。北海道の未来図は?
角谷樹環さん:
地球温暖化対策が不十分で進んでしまった場合、北海道内ではどんな影響がありますか?
北海道立総合研究機構・鈴木啓明さん:
大雪や短時間にまとまった雪は、場所によっては増える予測が出ています
2022年、札幌市を中心に見舞われた災害級の大雪。こうした10年に1度の「ドカ雪」は、温暖化で大気中の水蒸気が増えるため、内陸部を中心に増えると予想されている。
一方、シーズンを通しての降雪量は最も温暖化が進んだ場合、沿岸部を中心に約4割減ると予測される。冬の観光への影響が懸念される。
そして、災害の規模も大きくなりそうだ。
角谷さんの住む地域を流れる十勝川流域では、大雨による浸水面積が40%増える。最悪の場合の死者は、2.3倍にも増えると予想されている。
角谷樹環さん:
気温上昇を1.5℃以内にするためには、どんな対策が必要ですか?
北海道立総合研究機構・鈴木啓明さん:
(北海道の温室ガス排出量は)家庭生活の割合がかなり高くなっています。冬の暖房消費量が多く、北海道は広いので物流の移動量も多い
多くのエネルギーを消費する暮らしを見直す必要がある。残された時間は多くない。
(Q.角谷さんへのメッセージは?)
北海道立総合研究機構・鈴木啓明さん:
こうした活動を続けていくときに、いろいろな考え方の人がいて、証拠が求められることも出てくると思うので、学校の勉強も含めてしっかりすることで、より説得力のある伝え方ができるのではないかと思っています
角谷樹環さん:
しっかり勉強して、私たちの立場から伝えないといけないと強く思いました。私はいままで感情面を強く出してしまうことが多かったので、事実をちゃんと伝えていきたいなと感じました
活動していることを伝えたい…「少しでも気候変動に関心を」
2日後、角谷さんは帯広駅前に1人で立った。勉強すること、そして行動することが必要だと感じている。
角谷樹環さん:
気候変動のために、活動している人がいるということを伝えたい。少しでも気候変動に関心を持ってくれたり、ちょっと調べてみようと思ってくれる人がいたりしたらいいなと思いました
4月、帯広市内の高校に入学した。活動はこれからも続ける。
角谷樹環さん:
テレビの中の世界だけではなく、本当にリアルで起こっていることを知ってほしい。時間がないということも…
自分たちのために、次の世代のために、子どもたちは確かに歩き始めている。
(北海道文化放送)