予算賛成の条件がボツになった

自民、公明、国民民主の3党はガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」について凍結解除を先送りすることで合意した。国民が野党にもかかわらず今年度予算に賛成したのはこのトリガー発動が条件だとされていたので「あれっ?」と思った人は多いはずだ。

19日、自民・公明・国民幹事長会談で「トリガー条項」の凍結解除を当面、見送ることで合意
19日、自民・公明・国民幹事長会談で「トリガー条項」の凍結解除を当面、見送ることで合意
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トリガー発動はガソリンスタンドなどの現場が混乱するので補助金の方が使い勝手がいいということらしいのだが、野党の予算賛成の条件がボツというのは体裁が悪い。だからなのか、子供が家族の世話や介護を担う「ヤングケアラー」の支援について今後3党で議論することになった。

国民の与党への「すり寄り」には立憲民主が強く反発し、選挙区調整が難航するなど「仲の悪さ」が目立っていたが、昨日さらなる亀裂が生じた。立憲が7月に行われる参院選での比例代表の略称を国民と同じ「民主党」とすることに決めたのだ。

どちらも民主党と名乗るな

立憲は3年前の参院選では略称を「りっけん」としたが、去年の衆院選では「民主党」としたため、国民の略称と同じになり363万票という大量の案分票が発生。立憲に296万票、国民に67万票が割り振られた。2つの政党が同じ略称というのは有権者にとってはわかりにくいし、はっきり言って迷惑だ!こうなったらどちらの党も民主党という略称はやめるべきだと思う。

立憲民主党・泉代表
立憲民主党・泉代表

維新の会も国民の与党寄りを批判していたが、参院選では京都と静岡で国民と相互推薦することになりそうだ。京都は維新に近いとされる国民の前原誠司選対委員長の地元で、維新と組んで立憲の現職である福山哲郎前幹事長と対決することになり、もはや立憲と国民の関係修復は不可能だろう。

国民は小池百合子都知事が実質オーナーのファーストの会とも、東京選挙区と比例代表で相互推薦することで合意している。

国民民主党とファーストの会は5日、夏の参院選に向けた合同選対本部を立ち上げた
国民民主党とファーストの会は5日、夏の参院選に向けた合同選対本部を立ち上げた

玉木雄一郎代表は「政策実現のためには党派を超える」と述べており、是々非々、柔軟な構えだが党内には異論もある。前原氏は予算の採決を欠席し玉木氏を「与党へのすり寄り」と批判した。予算の採決で投票行動が割れるのは政党の体をなしていない。

玉木さんは官房副長官に

ある旧民主党議員は「国民は分裂して玉木氏ら数人は自民入り、前原氏は維新入りするのではないか」と語っていたが、その方がすっきりはするだろう。政策に詳しい玉木さんは小さな党の運営に苦労するより、自民党で官房副長官とか政調会長代理とか、若手のエリートコースに乗る方が実力を発揮できるかもしれない。

国民民主党・玉木代表
国民民主党・玉木代表

なにより、日本は1996年の衆院選から小選挙区比例代表並立制が導入され、他の先進国同様、緩やかな2大政党制の下で定期的な政権交代が可能となった。だが民主党の分裂で2大政党制は崩壊、野党はバラバラになり自民党の漁夫の利が続く。小さい党がチョコチョコあっても我々の民意は反映されにくい。

だから国民民主党よ!そして他の野党の皆さんよ!自民に行くもよし、野党でまとまるもよし。頼むから野党同士で「僕が正しい」「あんたが間違ってる」とケンカばかりするのはやめてくれないか。

先進国で政権交代という選択肢を持てない不幸な国民は我々日本人だけだ。はっきり言って投票に行く気も失せる。一刻も早く何とかしてほしい。

【執筆:フジテレビ 上席解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。