2万6191円。2026年1月20日に発表された金1グラムあたりの価格だ。2025年初めには1万5000円ほどだった金価格は、わずか1年で1万円以上も上昇している。世界情勢の不安定さから通貨の信用が低下し、安定資産として金を求める人が増えていることが要因だという。その“金”の全国有数の産地が鹿児島にある。
鹿児島は全国有数の金産地
県内には金鉱山が8つあり、現在も菱刈鉱山、春日鉱山、岩戸金山鉱山、赤石鉱山の4つが稼働している。国内の金の累計産出量トップ10のうち、4つが鹿児島の鉱山が占めていて、鹿児島県は全国有数の金産出地域である。
鹿児島で金が豊富に採れる理由について、資源経済学、鉱山学が専門の鹿児島大学・志賀美英名誉教授は「マグマ活動が活発な地域には金鉱床が生成しやすい特徴がある」と説明する。
金が地下にたまるメカニズムはこうだ。地下にしみこむ雨水がマグマに近づくにつれて岩石に含まれる金も溶け込み、その金を含んだ水がマグマの熱によって岩石の割れ目を通って上昇する。地表に近づく際に溶けていた金がたまり、鉱脈という金がちりばめられた帯状の塊ができる。活火山の多い鹿児島は、まさに大地の恵みとして金を育んできたのだ。

菱刈鉱山は質の高い鉱石が特徴
金の産出量日本一を誇る伊佐市の菱刈鉱山では、年間約15万トンの鉱石が出荷され、そこから精製される金は約3.5トン。少なく感じるかもしれないが、菱刈鉱山の前田敏明鉱山長は「非常にいい鉱床で濃度が高い」と話す。

前田鉱山長によると、1トンあたりに含有される金の量は、海外の鉱山は平均すると2g。1gを切るところもあるが、菱刈鉱山は実に20gくらいだという。鉱石の質の高さがわかる。
坑道内部に温泉が湧く特殊な環境
特別な許可を得て菱刈鉱山の内部を取材すると興味深い光景が広がっていた。鉱山の最も深い部分は坑道入口から345m下った場所にあり、そこへ向かう途中、路面が濡れている箇所が現れた。
坑道の入り口から約15分進むと、最も深い場所で温泉が湧き出ているのを確認。この場所は「抜湯室」と呼ばれ、毎分9トンもの温泉水を抜く作業が行われている。菱刈鉱山ではマグマで温められた雨水が温泉として沸き続けているのだ。

金鉱石の採掘方法
採掘の最前線「切羽」と呼ばれる岩盤では、金鉱石の採掘が行われている。まず重機で岩盤に穴を開け、そこに火薬を詰め込んで爆破し、岩を砕く。砕いた石は地上に運ばれて人の手で選別された後、愛媛県の工場で金に精製される。

進むDX化と未来への展望
1985年から稼働している菱刈鉱山では今、作業のDX化が進められている。穴を開ける機械には作業場所を示すナビゲーションシステムが導入され、以前は作業員の経験則で行っていた作業の精度が向上した。
さらに2025年9月にはドローンも導入された。人間が立ち入れない危険な場所で金鉱脈の分析を行っている。ちなみにこのドローン、メディア初公開だ。

採鉱課の山下勝大さんは「想像でやっていた部分が実際に映像として見られるところが違う」と新技術のメリットを語る。
まだ約150トンの金が眠っているとされる菱刈鉱山。採鉱課の橋川広都さんは「DX化の推進で、実際に坑内で現場の方が働いているが、どんどん坑外から操作ができるようになるのでは」と未来を見据える。
前田鉱山長は「親子2代で働いている方が何家族かいる。これが続いて3代、4代と続いてもらいたい。2025の7月に40周年を迎えた。まずはトータル100年操業できれば」と長期的な展望を示した。
金価格の高騰に伴い、鹿児島の地下資源としての金の価値と重要性は今後さらに高まりそうだ。
