自民党の河野太郎広報本部長と国民民主党の玉木雄一郎代表は17日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)に出演し、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた日本の安全保障のあり方や物価高対策について議論した。

河野氏は、ロシアや中国について「一方的な力による現状変更を厭わない国が出てきている。第2次世界大戦後の国際秩序が変わりつつある中で日本の平和と安定を守っていく必要がある」と指摘。安倍政権が法整備した限定的な集団的自衛権行使容認をさらに進め、「集団安全保障の集団的自衛権を含め、どうしたら国民を守れるかという議論をやる」と表明しました。

河野氏は、「自衛のための必要最小限度」とする憲法9条に関するこれまでの内閣法制局の解釈について「やらなければいけない(乗り越えなければいけない)ことだというのは、ウクライナ情勢を見てはっきりした」と述べ、解釈の見直しの是非について議論する考えを示した。

日本を取り巻く安全保障環境について河野氏は、日米同盟だけで対応するのは困難な状況になっているとの認識を示し、「NATO(北大西洋条約機構)をインド太平洋に広げて(各国が)加盟する議論もできる」と表明。「AUKUS(米英豪の安全保障の枠組み)やファイブ・アイズ(英語圏5カ国の機密情報共有の枠組み)に日本は積極的に入っていくことを考えていかなければいけない」と強調した。

核兵器に関して、ロシアのプーチン大統領が脅しに使っているとして、「日本単独というよりは、国際社会の中でどう考えていくか議論していかなければいけない」と述べた。

一方、番組にオンラインで出演した玉木氏は、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除をめぐる自民、公明、国民3党の協議に関し、「トリガーを全くしないという話なら、協議から離脱する。我々も覚悟を決めてやっている」と述べた。

玉木氏は「税制改正などが必要だから、時間がかかるのは一定程度認める。補助とトリガーとハイブリッドでやってほしいと言っている」と話し、政府が進める、石油元売り各社に対する補助金制度の継続と合わせて、トリガー条項凍結解除を求めていく考えを強調した。

一方、玉木氏は、供給不足が物価上昇に拍車をかけているとして、「安全基準を満たした原発はちゃんと動かす。エネルギーの安定供給なくして、経済成長も賃金上昇もない」と語った。

また、「世界で建設中の原発の6割はロシア製と中国製だ。(エネルギー)の脱ロシアを目指して原発を回そうとする議論があるが、早晩、原発もロシアや中国に頼らないとつくったり動かしたりできなくなる」と指摘。「経済安保上問題だ」として、原発の活用を進め、原発技術を維持する重要性を主張した。

以下、番組での主なやりとり。

橋下徹氏(番組コメンテーター、元大阪府知事、弁護士):
報道によるとロシアの軍事予算約6兆円のうち、核兵器に対する予算は650億円ほどだという。この650億円で世界はロシアに手出しができない。日本がすぐに核兵器を持てというわけではないが、(自民党が目指す)防衛費対GDP比2%、約10兆円の予算をかけて迎撃ミサイルばかり増やしても、それは本当に効果があるのか。その議論がなされない中で、(防衛費対GDP比)2%、2%と求めるのは大いに疑問だ。その前に憲法9条問題、専守防衛問題をまず解決しないといけない。

河野太郎氏(自民党広報本部長、前防衛相、元外相):
「専守防衛」を守るのではなく、国民の命と平和な暮らしを守るためにどうしたらいいのか。かつて米国が極めて強大な軍事力を持ち、ほかの国は対抗することができない中で、日米同盟があれば国を守れた。しかし、中国が米国に匹敵するような軍事力を持つ中で、尖閣諸島に毎日のようにプレッシャーがかかっている。日米同盟だけで対抗できるのか。あるいは、今回の(ウクライナ侵攻の)ように世界のどこかで民主主義、法の支配、基本的人権という共通の価値観を持つ国が脅かされた時に日本だけ「うちは行かないが、東アジアで何かあったときはみんな来てくれ」というのが通るのか。

日本だけで、あるいは、日米同盟だけで日本だけを守るという議論をすべきなのか、共通の価値観をみんなで守っていこうという議論になるのか。共通の価値観をみんなで守っていくのだという議論に変わっていかなければいけない時代になったと思っている。

橋下氏:
その「みんな」というのは、日米以外でどの範囲を想定しているのか。

河野氏:
NATO(北大西洋条約機構)もあるだろうし、韓国もそうだ。あるいはオーストラリアをはじめ、民主主義、法の支配、基本的人権を守るグループをしっかりと作り、そのメンバーみんなでお互いに守っていく。そういう議論をしっかりやっていかなければいけない。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
河野氏は自著で「日米同盟だけに寄りかかっていて大丈夫なのか」「中国の軍事活動に対抗するための枠組みをアジアで作り上げるということを検討する必要がある」と言及。例えば、NATOのような同盟結成をアジアでも模索すべきだという考えなのか。

河野氏:
NATOのようなものになるかはわからないが、何らかのまとまりを作る必要はある。極端なことを言えば、NATOをインド太平洋に広げて、そこに各国が加盟するという議論もできると思う。

橋下氏:
米英豪のAUKUSに日本が積極的に入っていくことも一つの手ではないか。

河野氏:
AUKUSもそうだが、ファイブ・アイズのようなまとまりもある。そういうところに日本は積極的に入って行くことを考えていかなければいけない。クアッドは今緩やかなまとまりだが、クアッドが果たして何を目指すのかという議論をインドとの間で積極的にやっていく必要がある。

橋下氏:
そうなると集団的自衛権の問題に行きつく。NATOは集団的自衛権よりもう一段レベルの高い集団防衛の枠組みだ。共通の価値観を持つ枠組みを作る意味では、安倍政権で一歩前進させた(限定的な)集団的自衛権の行使容認をもう一歩あげていくことが必要ではないか。

河野氏:
そうなってきた。中国の軍事力は米国の前に対抗できない時代があったが、今やそういう時代では完全になくなってきている。そして、ロシアはウクライナを侵略している。一方的な力による現状変更をいとわない国が出てきており、みなで平和と安定を守っていくという中に日本も入って行く。それは非常に重要だ。第二次世界大戦後の国際秩序が変わりつつある中で、日本もしっかりと平和と安定を守ることを考えていく必要がある。

橋下氏:
ロシア・ウクライナ戦争を見て、専守防衛、防衛だけのところは、ああなってしまう。いざという時には反撃ができて、敵国に対してダメージを与えられる力を持っておかないと、今の近代戦争、近代兵器の下で、専守防衛というのは空想論としか思えない。

戦後ずっと憲法9条は内閣法制局の解釈論を前提にしていた。最高裁の砂川判決では(自衛権について)国際情勢の実情に即して適当な手段を講じることができる、とされた。判断するのは内閣法制局ではなく政治家だ。憲法9条の今までの解釈論を自民党は乗り越えていくか。

河野氏:
それはやらなければいけないことだというのは、このウクライナ情勢を見てもはっきりした。

松山キャスター:
「専守防衛」の概念は残して、相手領域内への抑止力としての攻撃能力を模索していくことになるのか。

河野氏:
日本は外交的な目標を達成するために軍事力を自ら行使することはない。そこは大前提だが、国民の命と平和な暮らしを守るためにどうするかという議論はしっかりやらなければいけない。集団安全保障の集団的自衛権を含め、どうしたら国民を守れるのかという議論をやる。守るべきはそこであって、言葉ではない。

橋下氏:
では、河野さんは今の憲法9条の内閣法制局の解釈論は違うという認識か。

河野氏:
そこを乗り越えていかなければいけないというのはおっしゃるとおりだ。単独で日本の平和だけを守れる時代ではなくなってきた。では、どうしたらいいのかについて国民の理解を得ながら政治がリーダーシップをとり議論していく必要がある。

松山キャスター:            
ウクライナ情勢を受けて「核」に対する脅威も上がった。

河野氏:
残念ながらプーチン大統領が核を脅しに使っている事実は否めない。それについてどうしたらいいのかは、日本単独というよりは、国際社会の中でどう考えていくか、議論をしていかなければいけない。

梅津弥英子キャスター(フジテレビアナウンサー):
エネルギー価格の上昇が電気代、物価高騰の大きな要因になっている。

玉木雄一郎氏(国民民主党代表):
あまり知られていないが、(ガソリン価格高騰への)今やっている補助措置は、月2,300億円ほどの金がかかっている。一方、トリガー条項凍結解除による減収は月1,3000億円だ。今の補助制度を一年続けたら3兆円かかる。一方、トリガー条項凍結解除で減収になるといっても1.5兆から1.6兆円だ。効率性の観点からも減税はきちんと検討してやるべきだ。

橋下氏:
政府与党が補助金でしか対応しないと言ってきたら、押し切られてしまうのか。

玉木氏:
トリガーをまったくしないという話なら、我々は協議から離脱する。税制改正が必要で時間がかかるから、当面補助でやるのは否定しない。補助とトリガーとハイブリッドでやってほしいと言っている。トリガーは全くしない、終わりだとなれば、協議を真摯にやる意味はない。我々も覚悟を決めてやっている。もしできないのなら、参院選の争点にして大々的に訴えるしかない。

今回の物価上昇は供給不足、供給制約により生じている部分が大きいので供給力を確保する政策をきちんとやっていく。例えば、安全基準を満たした原発はちゃんと動かそう。エネルギーの安定供給なくして、経済成長も賃金上昇もない。ここは政治家がきちんと説明をして訴えていくことが必要だ。

1つ言いたい。日本は何とか(原発)国産率90%で技術も部品も国内でやれる。ところが、米国と英国はすでに国内のサプライチェーンを喪失しており、自国の企業だけでは原発を作れない。今、世界で建設中の原発の6割は実はロシア製と中国製だ。脱ロシアを目指して原発を回そうという議論があるが、原発もロシアや中国に頼らないと作ったり動かしたりすることが早晩できなくなる。経済安全保障上問題だ。

日曜報道THE PRIME
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