北海道の後志地方、小樽市に近い余市町で「余市町育ち」のブランドカキが誕生した。取り組みを始めて6年。漁業者の努力が詰まったカキは、ワインに並ぶマチの特産品となるのだろうか。
余市町生まれのブランドカキ、その名も「余市牡蠣(よいちかき)」。
身は小ぶりながらうまみはたっぷり。取り組み開始から6年、5月25日、初出荷を祝うセレモニーが行われた。

独特の"臭み"がない…うまさの秘密は「ゆりかご養殖」
余市カキのおいしさの秘密は、日本では珍しい養殖方法にあった。
牡蠣養殖を始動・坪井亜樹さん:
余市牡蠣は、生まれたときから一粒カキで、ゆりかごのようなバスケットに入れて揺らして育てる。丸くなるとカップが深くなる。運動するので、貝柱が太くなってうまみが増す

余市牡蠣は、従来のようなロープにつるす方法ではなく、かごの中で養殖される。
かごの中で殻がぶつかり合うことで、海草などの不純物が取れ、臭みがなくうま味の強いものになるという。

後継者不足に不漁…"持続可能な漁業"に転換
海の幸に恵まれた余市町は、この時期、ウニやヒラメなどがとれる。
なぜカキ養殖に挑戦したのだろうか。
漁師:
若手がいなくて。いま魚、カレイ自体が値段が低くなって、水揚げもできない。そのために、しっかりとした養殖があるといいのかな

豊かな漁場を抱える余市町だが、後継者不足や不漁の年の収入確保など、持続可能な漁が課題となっていた。
北海道"三大カキ"に挑む! 特産ワインと併せて…
そこで、安定的にとることができるカキの養殖に目をつけたのだ。
北海道では道東の厚岸町、オホーツク地方の佐呂間町、道南の知内町が三大カキ産地として知られる。

余市牡蠣は、日本海側の新たなブランドとして加わろうとしている。
もう一つのねらいが…上質なブドウが栽培される余市町内には、現在15か所のワイナリーがあり、その品質は世界的にも注目されている。

余市牡蠣は、このワインと相性が良いだけでなく、互いの価値を高める可能性があるのだ。

試食したワイナリーの関係者も太鼓判をす。
ワイナリー夢の森・木下聡さん:
独特の甘みを感じる。すごくおいしかったです
ソウマファーム・相馬慎悟さん:
きれいなカキなんだなというのが、香りのクセのなさから感じる。僕の中では、過去一番愛せるカキですね

余市町・齊藤啓輔町長:
ワインの日本有数の産地として、世界の中で銘醸地として、飛躍を遂げている余市町。この銘醸地・余市町に、新たな強味としてカキが加わること心強い。余市町が通過型でなく、余市を目指してほしい

余市牡蠣は6月10日ごろから出荷され、まずは町内の飲食店でメニュー化を進める。

今後、相性のいいワインとの提案もしていきたいとしている。
(北海道文化放送)